[トンデモ本] 竹内靖雄(1997)「賢者と愚者の経済学」ごま書房
トンデモ本を久々に読む。この竹内靖雄の書いてある大半が出鱈目で非常に論理飛躍のはなはだしい妄想である。アダムスミスの「道徳感情論」など読んだ事もないくせに、「道徳感情論」からの引用として、「国富論」の概説を書いている。しかも学問的正確な読み方によるのではなく、俗流の読み方であるから、この方は学者とは冗談にもいえない。彼はアダムスミスの「道徳感情論」を
万人が賢明なエゴイストであるような社会システムである。
と言い、複雑化した現代の経済社会にはそのまま当てはまらないとしつつも、次の文で、「人間は欲で動く」という基本定理は変わりがないとし、この系として、「その欲心を利用して使え」と言う。竹内の後半の主張は典型的な蜂の寓話を説いたマンデヴィルのものであり、アダムスミスが嫌った考え方である事は、経済学者の常識の部類に入る。
竹内靖雄は「人間は欲で動く」を基本定理というだけあって、彼は品行下劣な行動理念を下に行動する人物なのだろうが、他人にまで適用するのは止めてほしいものである。どうも下劣な人というものは、自分以外も下劣と決めてかかる性癖がある。
ごま書房の著者紹介によれば、
緻密な理論に裏打ちされたジャーナリスティクな発言は、今日の論壇に新風を吹き込み
とあるが、山本七平賞を受賞していることからみても、札付きの嘘つきとみて間違いなそうだ。イザヤ=ペンダサンという架空のユダヤ人を自称して、聖書の誤読に基づく妄想から「ユダヤ人と日本人」を書いた山本七平系列の人であれば、まともな論考など期待すべくも無い。ごま書房の評価自体が日本語として支離滅裂である。ジャーナリスティクの意味は、リーダーズ・プラスによれば「新聞雑誌的な, 新聞雑誌記者流の」という意味である。別の辞書を引いても「時流を追うさま」が追加される程度である。ごま書房の著者紹介担当は、綿密な理論に裏打ちされた流行のおっかけが可能らしい。そんな事例があるのならひとつでも挙げて欲しいものだ。もちろん本書に該当箇所はひとつたりとてない。
<2006.11.05記>