[良書] 小林純(1971)「水の健康診断」岩波新書
久々に読んだ公害関係の本である。題は水の健康診断となっており、確かに巻末に日本全国の水質(鉱物含有量)についてまとめられているし、その研究が行われた経緯が本文で説明されているのだが、主たる内容はイタイ・イタイ病に関する事柄である。鉱毒のカドミウムがイタイイタイ病の原因と究明した小林純による研究成果がまとめられているのだが、その過程で、他の鉱毒事件と同様に、国民を人と思わない体質の強い厚生省に対する批判が書かれている。
七三一部隊の残党が登用された歴史をもつ厚生労働省は、他の公害事件でも、国民の健康維持なんかよりも、自省の権益のために、企業優位に被害者を黙殺してきた歴史がある。イタイイタイ病に関する一般向けの書物としては、この本が基本書のひとつと考えてよいだろう。
しかしこうして見ると、B型肝炎にしても、石綿(アスベスト)にしても、政府や官僚に基本的な進歩が認められないのは何故だろう。もう少し、進歩しても良さそうなものだが、・・・。
<2010.11.7記>