[教養書] Diogenis Laertii[著]加来彰俊[訳](1984)「ギリシア哲学者列伝(下)」岩波文庫
Diogenis Laertii[著]加来彰俊[訳](1984)「ギリシア哲学者列伝(中)」岩波文庫
Diogenis Laertii[著]加来彰俊[訳](1984)「ギリシア哲学者列伝(上)」岩波文庫
評価は普通です。特に取り立てて読むべき要素はないのですが、いわゆる哲学の教科書に書いてあるギリシア哲学が非常に皮相だという事がわかる本です。さすがに古い時代のことですから当たり前と言ってしまえばそうなんですが、三世紀の時点でも、以前の哲学者(前4-5世紀)の誰が何を言ったかすら諸説あり定かでないということが分かります。
いろいろな哲学者が書いた本のタイトルや章が書かれていて、その範囲が広いことや分化する前の学問がどんなものだったのかが少し垣間見えます。現在のように確立する前の弁論術の三段論法があまりに稚拙なことに驚きますが、当時の学問観や科学観を十分にする手だてもないので、当時の推論の感覚を想像することも私にはできません。古代ギリシア時代なので、神話や輪廻転生を信仰することも科学と同じように考えているみたいです。
この本は、3世紀前半に成立したと考えられている書物ですが、各哲学者の遺書について比較的詳しく書かれている箇所があります。当時より以前のギリシアには、戦争による債務奴隷などがいるため、その遺書には、自分の子の養育が終わると判断される婚姻時などに奴隷身分を改め自由民にすることなどの記載があります。古代ギリシア社会では、遺書にこのような内容を書く文化があったことや、遺書にしたがって財産などを処分する文化があったことだけは確実にわかります。
<2011.9.17記>