[良書]新版沖縄の戦跡と軍事基地編集委員会(2008)「新版 沖縄の戦跡と軍事基地」かりゆし出版企画
良い教科書です。この本で、沖縄の資料館の稲嶺知事による資料改ざん問題があったことを知りました。広島の原爆資料館が一時、美術館のようになったのと同じことだと感じました。広島の原爆資料館では、一時期わざわざ原発開発者のアインシュタインをその後の平和活動だけを理由にいい人みたいに展示していた時期すらありました。こうした揺れは何度も繰り返されるのでしょう。情けない。
この本に書かれていますが、在日米軍に駐留兵士1人当たり1293万円、韓国の266万円より6倍近くも支払っていることには呆れるほかありません。
[良書]宮里千里(2003)「沖縄 時間がゆったり流れる島」光文社新書 097
全般的にはいい本なのですが、一か所、愚かな研究を取り上げたのが余計でした。沖縄の新聞における死亡広告をもとに平均寿命に関して研究したものらしいです(原典を読んでません)が、この本のまとめた通りの結果なら、間違った分析にしかなりません。この本によれば、沖縄の男性はすぐにタクシーなどを使い歩かない。沖縄の男性は運動不足だから平均寿命が短いと結論しています。国際比較すれば、容易に分かりますが、タイなど高温多湿地域では、平均的に男女とも何らかの交通機関利用率が高く、歩くのを厭います。私は生活の知恵、熱中症対策だと受け止めていますが、根強い怠惰論が科学的分析を妨げています。
沖縄の時系列データで見れば明らかですが、これまで沖縄県の男性も平均寿命が全国1位だったのが26位に転落し、大きく報道される事態になったのです。歩く機会が少ないことは気候が要因としているので、これは今にはじまったことではありません。運動不足だけが原因のように書かれると勘違いだろうと思います。自動車の進展とともに平均寿命が下がってきたわけでもないので、原因の主要因は、極端な肉食文化が進行した割に、フィットネスなどの運動が不足したという事だろうと想像します。
沖縄県ではここ20年くらい、男性を中心に飲酒後に深夜にステーキを食べる風習ができたようなので、こうした高カロリー食を食べている割に、運動が相対的に不足するようになったのでしょう。そうでないならば、おばぁにしてもタクシーを利用するのに、平均寿命が下がらない理由を説明できないと思います。
この本の内容は、沖縄の新聞の死亡広告から、沖縄に根付いている宗教観などを、いくつかの事例をふまえて、紹介したものです。平易に書かれていますが、若干、取り上げられた事例は極端かなという気もします。私から見れば、沖縄で先祖供養に晴れの儀式をするのは、現在、やまとんちゅの親族同士の醜いつまらない争いを避ける目的で整えられてきた先人たちの知恵の気がします。この本では控えめになりすぎて、ちょっと矮小化して捉えている気がしました。
<2011.10.01>