書評


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[良書] P.Krugman[著]大野和基[訳](2009)「危機突破の経済学」PHP

普通のケイジアンが考えることは同じなんだなぁ

 P.Krugmanは、アダム・スミスとケインズを高く評価していると知った。私は、リカードとケインズを高く評価している。リカードは好みに差が出る学者だから、市場評価が低くても構わない。私の嫌いなスーパーマン待望論者であるシュンペーターは、著書でリカードをこき下ろしている。私は等価定理はリカードの主張とは考えていない。リカードの貢献は、経済学に比較生産費の説、相対基準を持ち込んだことに尽きると思う。

 それはともかく、この本には基本的なケインジアンの政策提案がいくつか記されている。薄いので興味がある人は読んでみてください。

1.「流動性の罠」に陥るような状況下では、かなり大胆な景気対策が必要。
2.減税は役立たない(増税になっても減税をやめ、減税幅以上の財政拡大を行うということ。その方が税収も伸びる)。
3.いま規制を加えるべきなのです。そして、過度な給与は制限して、一般の労働者の所得を押し上げる、そうした運動をやるべきです。(112頁からの引用)

 日本はすべて逆を行い、アメリカも同じ轍を踏み、不況長期化への道を確実にしつつあります。

<2011.10.28>

Kazari