[高質]小林秀雄講演【第一巻】文学の雑感〜【第七巻】CD-1ゴッホについて
数年前に聴いたが、この中では一番上等である。面白いし、内容も高等である。この4人の中では、ずば抜けて講演が上手である。
[普通]鈴木大拙「禅と科学 新潮CD講演」
内容は凡庸。あまりにステレオタイプの東洋・西洋比較に終始しており、別段ユーモアもなく淡々とお話しされている。この程度でも、生の講演を含めて、仏教関係者の中ではまぁ良い方かもしれない。しかし、もう少し学問の範囲を広げると、かなり見劣りがする。生の講演でこれまで一番講演がうまいなぁと感じた学者は、石井米雄(タイの研究者)である。
[普通]中村元「ブッダの生涯」、「ブッダの言葉」
仏教界の人はどうも歴史観がやや偏っている。仏教が戦争に関わり合いがないと思い込みたいようだ。私は西洋の歴史家が宗教家であったのに対し、日本の歴史家が宗教家でないことの影響が大きいと思っている。平安時代から僧兵が存在するし、鎌倉時代、仏教寺は武家の隠れ蓑であったし、戦国時代は山寺は簡易な山城として機能しているし、山梨県では有名な「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉を残して、攻め滅ぼされた寺がある。東本願寺など鉄砲隊を率いる部隊が重要な役割を担っているし、石川県には、鉄砲の弾になる鉛を屋根瓦に使ったという逸話が残る寺がある。江戸に至っても、新選組が根城にした寺があったりと、仏教寺が戦乱と如何に関与してきたかという史実には枚挙に暇がない。
[低質]梅原猛の授業 仏教 第一巻〜第十巻
今まで聞いたCDの中では最低の品質である。まず仏教学校への授業なのであるが、かなり単純化した世界観を洗脳しようとしている。学生への授業の割に言葉が中途半端に難しい。学年を意識して簡易に言い直した所は少なく、にもかかわらず、高校の教科書の域を超えた高等な内容が皆無に近い。あまり関係ない文学論が、面白さのかけらもないお喋りとして、だらだらと長く続く時もあった。よくCDにする気になったなぁと呆れてしまった。
<2011.11.9>