[良書]奥村宏(2009)「日本の三大銀行」七つ森書館
久々の良書である。前回の書評で取り上げた本が高い評価を与えていた池尾和人が、ありもしないシティバンクの東京三菱銀行へのTOBを宣伝して、東京三菱とUFJの合併を称賛したことなどを指摘している(36-39頁)。竹中平蔵が小泉政権の金融担当大臣だった際に、「日本のメガバンクは二つないし、三つが適正ではないか」と発言し(40頁)、独占禁止法をないがしろにした事実も指摘されている。規制緩和論者が、口先介入により銀行業の護送船団方式を推し進めたことにもなり、竹中大臣の支離滅裂度もよく伝わる書き方になっている。
日本の金融合併のほとんどが、戦略なき規模拡大に終始した結果、損失の計上などの結果を招いたことが丹念に指摘されている。はからずも、Stiglitzらと同じ結論、「大きい銀行」から「良い銀行」に変わるべきことが指摘されている。
将来への戦略がなく、話し合いによる統合をした結果は、この本の指摘する通り、散々であった。この歴史事実は、野田総理への批判にもなっている。日本として戦略を打ち出さずに、TPPという経済統合を果たしても、日本の損失の計上にしかつながらないという事を、これまでの歴史が示しているのである。この教訓から学ぶだけの能力すら松下政経塾出身者の政治家たちにはないのである。不勉強で、経済のことがよく分かっていないからである。
<2011.11.20>