書評


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[良書]Noam Chomsky[著]鈴木主税[訳](2004)「覇権か、生存か」集英社新書

 良書であり、教養書でもある。訳文があまりよくないが、相変わらず、アメリカの政治情勢について参考になる文章が多い。若い人や大学生には常識として知っていて欲しいことが書かれている。

 残念な点は、Adam Smithの引用で、「国富論」で一度だけ「見えざる手」を使ったとある。202頁に出所の明示なしなので、孫引き引用による誤解かと思う。

<2012.6.29>

 いい加減に、引用部分を読み過ぎた。通常の「見えざる手」の意味での引用ではないため、Noam Chomskyの引用の仕方なら、間違いではない。わざわざ引用しなくてもいいような所に入れてあるから、またかぁと思い込んでしまった。Adam Smithは、市場の「見えざる手(invisible hand)」(価格メカニズム)によって市場均衡に達するという意味で、「見えざる手」を使用したことは、「国富論」であれ、「道徳感情論」であれ、一度もない。しかし、「国富論」では、外国資本と国内資本の会社から国内消費者が購買する事例で、一度だけ「見えざる手」という単語を使っている。Noam Chomskyは、その事への言及であり、間違いではなかった。ちなみにAdam Smithの著作物はさすがにすでに著作権が切れているので、The Wealth of Nationは原文でなら、webで簡単に入手できる。例えば、こちらのPDFで検索すれば、364頁に原文が載っている。同じ個所は英語のwikipediaにも転載されている。

 早とちりで失礼しました。

<2012.9.21>

Kazari