書評


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[教養書] 吉田徹(2009)「二大政党制批判」光文社新書
原田武夫(2005)「騙すアメリカ 騙される日本」ちくま新書

吉田徹(2009)「二大政党制批判」光文社新書

 小選挙区制が実施されるに至った大雑把な歴史過程と、その当時の反省を込めて山口二郎が現在言論活動を行っていることなどが記されている。最近の若い人はこれくらい常識にして、選挙に投票に行ってほしい。

 それから経団連やアメリカに不利な経済政策を実施すると、寄ってたかって政治家が苛められるような現状がある。反アメリカ的な議員も同じである。例えば、1億円以上の役員報酬を受け取っている役員の公開を義務付けた亀井静香とか、企業減税の廃止を公言した事のある小沢とかが該当する。こうしたマスメディアの情報操作に惑わされることなく、投票しなければならない。そのための基礎知識として、上記の本の内容くらいは知っておいてほしい。この本ですら、小沢批判があるが、どうも日本の経団連とマスメディアは奴隷根性の塊らしく、政策実現能力のある必ずしも親米でない実力のある政治家を極端に嫌う。自分の無能が晒されるためと思うが、若者には冷静に判断してほしい。都知事選で、若者が、自らと同じ世代の労働者の過労死をもたらしたワタミの元社長に投票するような愚を犯すことがないように、また、投票から逃げないようにしてほしい。

 こういう本を読むと、自民党や公明党に票を入れても、労働者の利益は実現しないことがよく分かる。また、自民党は、小泉以降、党首に逆らえば、即離党させるような独裁制を抱える政党に変化し、民主党はそこまで独裁でないことも詳しく書かれている。つまり、現在の自民党党首である谷垣が原子力推進派なので、例え、自民党の過半数議員が反原子力に転じても、自民党が反原子力の政策を実現することはないという事が選挙前から分かっている。だから、将来世代に負担を残さないエネルギー政策への転換を望むなら、経団連が後援している自民党、みんなの党、維新の会は、みな原子力推進派になるので、これらの政党に投票しても反原子力にならない。見誤らないように注意したい。

原田武夫(2005)「騙すアメリカ 騙される日本」ちくま新書

 私にとっては今更な内容しかないが、「Moss協議」から1989年「日米構造協議」、1993年「日米包括経済協議」、1997年「日米規制緩和対話」と変化し、名称は変われど、「日米規制改革および競争政策へのイニシアティブに基づく日本政府への米国政府の要望書」で、露骨に日本への一方的市場開放を迫り、米国企業の利益を追求するようにアメリカ政府の戦略が変化するなか、まったく日本はアメリカに対してまともな要望をしていないことが指摘されている。当然のことであるが、日本郵政公社の民営化も2004年米国政府の要望書に書かれている(60-1頁)。

 4、5章は論考が甘く、著者の意見は参考にならないから、飛ばしても構わない。

 小泉政権になってから言論統制がひかれて、この米国政府の要望書について新聞報道がパタリと止まった。とても奇妙な事である。本書では、橋本政権下で、現在、女性差別発言などで権威が失墜したロレンス=サマーズによる執拗な減税要請があったことや、韓国同様IMFの緊縮プログラムの実施まで示唆されたことなどが書かれている。そうであるなら、現状は、アメリカが日本に50円台くらいまで円高投機をしかけると脅していると考えるのが自然かもしれない。国家としてテロを仕掛けてくる連中は好きになれないし、そうした連中に尻尾を振るだけしか能のない連中も好きになれん。

<2012.6.30>

Kazari