[普通]粂和彦(2003)「時間の分子生物学」講談社現代新書
評価は普通です。素人にも分かりやすく、私には面白い内容でした。
以下は興味深かった内容の覚書きです。
- ピリオドと呼ばれる脳内の時間遺伝子は、ショウジョウバエと哺乳類の間で交換可能(1997-1999年の研究で解明)。
- 生物はたんぱく質の量で時間を知る。哺乳類と昆虫はピリオド、アカパンカビはフリック、シアノバクテリアはカイ(日本人研究グループの発見なので回転に由来)
- 動植物には、紫外線によるDNAの損傷を光の力で修復する酵素がある。ショウジョウバエでは遺伝子(Dm64)で、構造は、植物の青色色素を受け持つ遺伝子(クリプトクローム)に似ている。ショウジョウバエのクリプトクロームには、DNA修復機能はなく、生物時計の入力系に働く。
- 外部の光 → クリプトクローム・タンパク質が光を受け取る → ピリオド、タイムレスに伝達。
- 哺乳類におけるもう一つの機能。クリプトクロームが、クロックBMALタンパク質によるピリオド遺伝子の転写活性化を強力に抑制する。p89-90
- 哺乳類のクリプトクロームはショウジョウバエのタイムレスと同じ機能を持つ。
- この時計の発振部分の仕組みは、全身にある。
- 睡眠の定義が狭い意味であるのは、哺乳類と鳥類のみ。特定の脳波と節電図・眼球運動で定義。
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ナルコレプシー:オレキシンの欠乏が原因 人間の脳内のオレキシンの量の増加 → 食欲の増進、覚醒度を上げる。 満腹すると、オレキシンの量の減少 → 血糖値の増加、覚醒度の減少。 オレキシンの量の異常な減少 → カタプレキシー(情動脱力発作)
著者によれば次の本も良い本とのことである。
本田裕(2002)「ナルコレプシーの研究」悠飛社<2012.12.22>