[普通]栗野仁雄(2006)「アスベスト禍」集英社新書
そういえば、震災の際には、アスベストに関する注意喚起は全く行われませんでした。建材として2008年まで使用していたのなら、当然、津波のがれきにも、アスベストは含有した建材が多々あったことでしょう。
マスメディアはこういう時に、被災者に正確に情報を出さないと、よくないですね。
本書は良くかけている部分(国際的な規制な流れと日本の規制の際立った遅さ)と良くかけていない部分(政治的な建材メーカーの動きとそれに加担した官庁や政治家の責任)があり、評価は普通にしました。
以下は備忘録です。
毒性の強さ:青石綿(クロシドライト)>茶石綿>>白石綿
アスベストに関する官庁の情報web頁 厚生労働省 経済産業省・国土交通省
死亡者数の推移 石綿肺がん 労災認定 中皮腫 労災認定 1995 1000 10 500 13 1996 1152 15 576 12 1997 1194 12 597 10 1998 1140 23 570 19 1999 1294 17 647 25 2000 1420 18 710 37 2001 1544 21 722 34 2002 1620 22 810 56 2003 1756 38 878 83 2004 1906 58 953 128 2005 原資料)厚生労働省など 出所)本書p121
原子力大国のフランスすら1996年にアスベストの全面禁止 輸出国カナダの反対 → WTOがフランス支持 日本は71年から規制がはじまるが、2005年石綿障害予防規制 76年に通達で家族暴露の危険性を指摘するも罰則なし →クボタなど使用を継続 世界と日本 1972年 WHO専門家会議 発がん性の危険指摘 1973年 アメリカ 吹付の原則禁止 1977年 オランダ 青石綿の使用禁止、吹付禁止 1983年 アイルランド アスベストの全面使用禁止 1980年代半ば 日本の保険業界 企業向け保険にアスベスト免責条項を盛る 1986年 スウェーデン アスベストの全面使用禁止 1986年 ILO アスベスト条約採択 → 2005年に日本が批准 1987年 学校のアスベスト問題に 1990年 オーストリア アスベストの全面使用禁止 1991年 オランダ アスベストの全面使用禁止 1992年 フィンランドとイタリア アスベストの全面使用禁止 1993年 ドイツ アスベストの全面使用禁止 1995年 日本 青石綿、茶石綿の使用禁止 1996年 フランス アスベストの全面使用禁止 1999年 イギリス アスベストの全面使用禁止 1999年 EU 加盟国全部にアスベストの全面使用禁止を求める決議を採択 2004年10月 日本 アスベストの使用原則禁止 2008年 日本 アスベストの全面使用禁止
議員立法を、官僚、業界団体、労働組合(連合)までもが妨害している。 うーん、今回の原子力のときと酷似している。
日本のアスベスト建材は2008年以降でないとなくなっていないから、それ以前の建物の倒壊に際しては、アスベスト粉じんが出る恐れがある。東北大震災においては、アスベストに対する特別の措置は一切施されていないので、放射線の影響の少なかった地域の解体作業やがれき処理に関わった人々は、今後20年程度経過した後で、中皮腫や石綿肺がんを発症する恐れがある。アスベストに暴露してから10年内に発症した事例はアメリカではない。20年から60年の潜伏期間があるのが普通。
原子力発電所の配管に使われるアスベストには代替材が少なかった。アスベスト対策の遅れの一因(p184)。
<2012.12.28>