書評


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[超低質]畑村洋太郎(2007)「数に強くなる」岩波新書

 本書は屁理屈の羅列、ほとんどこじ付けです。批評する気にもなれん。若いころに恩師:原安三郎に出会い、その恩師に2階であった時に、「いま階段何段上ってきた?」と質問され、推理過程とともに段数を答えたところ、「合格」と言われ、恩師から数を脳内で作る作業をすることが大事と教えられたことに感動した事が発端にあるらしい。そこから論理飛躍して、偉い人は皆同じように数を作る作業をしていると仮定して、さらに論理飛躍して、数が苦手な人も、数を作る苦行に慣れれば、みな数を作れるようになり偉い人になれると仮定して、屁理屈のオンパレードという結果になったようだ。

 そのあとはベストセラーになった本からのつまみ食いと思えるような、ザックリのすすめ、ドンブリのすすめなどが挟まれている。数を作るという観点からはかなりの逸脱がある。本書の頭では、数値化が大事で、あらゆることを数値化しないと意思疎通できないみたいに言っておいて、途中で、性質も大事で、量と質がセットで意味を成すと変質するのも分かりにくい構成である。

 恩師の話は頭ですべきだし、数値化だけが重要でないなら、最初の出だしの半分くらいは不必要になる。

 恩師からの刷り込み職業病で、すべて数をつくる作業を経てから、人間が動作しているとこの著者は勘違いしている。たぶん料理も実際にしたことがないんだろう。同時並行に仕上がるように料理をするのに、事前に計算など必要ない。単純に厨房に立って訓練すれば、だれでもできるようになる類のものだ。それをこの著者が観察すると、数を作る作業をしていると解釈しないと理解できないというだけのことに過ぎない。

 著者は相当な不勉強家らしく、1970年代には網野らの歴史学者によって、従来の百姓像も完全に変化したのに、2007年の書物で水のみ百姓を「田畑を持たずに貧しい」人たちだそうだなどと寝ぼけたことを122頁に書いている。

 著者は気が狂っているようで、198頁に自分の唱えた仮説を「自己評価は2割増しの法則」という大業な命名を行っている。198頁の図では年齢とともに、60才では自己評価が10割増しになっているが、こういうところはドンブリで見逃してほしいから、下らん節を挟んだらしい。確かに著者の自己評価は10割以上の水増しがなされている。

 あとは概算の仕方などの小ネタ集で、70の法則とかが書かれている。いずれにしてもとても低質で下らない書物である。

 全体読むと、以前にそこそこ売れた本を書き、いい気になって書いた書物であることが分かる。このパターンでまともな書物に出会ったことはない。はじめに書いてあれば買わなかったのにいい加減にチェックしすぎて散財してしまった。これまでの読書の歴史を振り返ると次の事が言える。

 売れない作家が突如そこそこ売れた本を出した場合、その本以外は読むだけ時間の無駄なことがほとんどである。また、工学系の自信家が書いた本に良書はない。

<2013.1.20>

 最近になって失敗学を提唱した馬鹿と知る。こんな奴に税金を使って調査をさせるのは愚策の最たるものだ。

<2013.3.22>

Kazari