[低質]入不二基義(2002)「時間は実在するか」講談社現代新書1638
この本も、入不二基義の入試関連の本なみに出来が悪い。マクタガートの失敗は、A系列の定義にある。認識論的なA系列の定義には、分類学的な過去、現在、未来が時間の本質という見当違いの見解が示されている。
そして、過去、現在、未来は、質的な変化があり、質的Jumpが仮定されている。これが間違い。数学的に言えば、過去と現在の間に非連続性を入れているのである。
分類学上の区切りを本質とする学問があったとしても、動物分類学が、動物の本質を示しているなどと普通は考えない。ここに論理の飛躍があることは明らかであり、こうした定義に含まれる種々の誤りがマクタガートの時間論を不毛にしている。本書では、その一部が指摘されているに過ぎない。
一方、B系列は客観的な時間だから、数学的には連続概念であることは明らかである。こういう体系外の定義や仮定に矛盾があれば、矛盾を示すのも簡単だし、矛盾があること自体には問題があると言えないのも自明である。体系外の評価に相当する仮定から来る矛盾なのだから。
このように考察すれば、すぐに、マクタガートの時間論の哲学の問題は、古来から知られる単純な「問題設定のまずさ」に還元されるだろう。哲学者が言葉遊びで論文を書くためには良いのか知らないが、このような時間論を真面目に検討するのは、本当に時間の無駄である。
<2019.4.20>