低質なマスメディア:インフルエンザ
まず、特にテレビなどのマスメディアは、何故に季節性インフルエンザでの毎年の死亡者数を無視して、今回のH1N1型の新インフルエンザを脅威のように報道するのだろうか。タミフル備蓄の無駄に対する批判を防ぎたいのだろうか。
2009/05/03の永井孝尚のMM21のネット記事によれば、通常の季節性インフルエンザで1年間に死亡する人数は、米国で36,000人、日本で約1,000人、全世界では推定死者数25-50万人とされている。今回の新インフルエンザは2009年5月9日現在、通常の季節性インフルエンザほどの猛威を振るっているわけではない。
また米国の教授などを使って、「現在の弱毒性のインフルエンザが、秋になって強毒化して戻ってくる可能性がある」と編集した内容を報道しているが、そもそも季節性インフルエンザは強毒化しないで、今回の新インフルエンザだけ強毒化する科学的な根拠でもあるのだろうか。あると言うなら報道しなさい。誰でも思いつく疑問である。
ちなみに上記記事には別の日本における年間死亡者数も提示されており、社会問題として取り上げるのであれば、年間死亡者数の高い問題の報道に取り組むのが正当である。「ガンによる死亡が年間31万人。心疾患は16万人。脳血管疾患は12万人。肺炎が95,000人。年間自殺者数は32,000人。」とはるかに報道機関として優先順位が高い内容が数多く存在する。
上記記事には医療関連の年間死亡者数に焦点を絞っているが、その他にも、日本では、通常のインフルエンザ死亡者数より、自動車事故で1年間に死亡する人数の方が5,155人(2008年)と多い。自動車事故は減少傾向にあるからお咎めなしなのか。これらを減らすための取材は手間隙がかかるためか、報道時間が著しく低くなるらしい。こうしたマスメディアの偏向報道は報道機関として恥ずべき態度ではないだろうか。
先日テレビタックルという低質の番組で、自転車道路拡充の議論で、台湾の女性評論家が「自転車利用者のマナーが悪いから道路を作るべきではない」という支離滅裂な論理に誰も意義を唱えていないのが不思議だった。「喫煙者のマナーが悪いから喫煙スペースや灰皿設置箇所を作るべきではない」と言えるだろうか?
マナーという基準で、利用空間を作るか否かを論ずるのは無意味である。他にも同じ構造の理屈が通るか少し考えればすぐに分かる事だ。同様に「自動車運転手のマナーが悪いから、道路を作るべきではない」も支離滅裂である。お笑い芸人の能力不足はともかくとして、政治家までこうした無茶苦茶な論理に一言も苦言を呈さなかったのは編集の故だろうか。もしそうであるならばまだ救いがあるが、本当に誰も指摘できなかったのなら、あの番組に出席していた日本の国会議員は全員かなりの無能ということになってしまうだろう。
<2009.5.9記>