低質なマスメディア:インフルエンザ part.2
ようやく報道の方はやや沈静化してきた。今回の騒動を見てSARSの時の不可解な情報操作を思い出したので、記しておこう。今回の狂想曲は、WHOの心配性に端を発しているように見えるが、官僚の自己責任回避に基づく心配性は、多くが世の中の無駄の源泉にしかならない。
SARSの際は、現在では中国が最初とされているが、当初はベトナムが最初の地と報道されていた。2003年2月下旬に、中国からの旅行者を治療したベトナムの医療従事者の間で急速に肺炎が悪化し死者が出た。WHO(世界保健機構)に雇われ、ベトナムのハノイで主に寄生虫感染症の対策に取り組んでいたカルロ・ウルバニ(Carlo Urbani)の警告を、当初、WHO(世界保健機構)は専門外の医師の意見ということで軽視、まともに対応しなかった。
死者が続いて、ようやく、その危険性が認知され、WHO(世界保健機構)の態度も変わった。その後のWHOの情報操作は凄まじかった。まず、そもそもWHOは、門外漢の医師による被害妄想のように扱い、新型インフルエンザの可能性も無視したし、大した感染症とも見なさなかったのだが、1年後ぐらいにSARS特集の番組がWHO主導で行われた際には、ベトナム政府の対応のまずさが原因にすり替わっていた。
国際機関がその後の援助などで脅迫したのか詳しい事情は分からないが、気色の悪い出来事であった。おそらく、WHOは、今回、迅速な対応をして真の意味で名誉挽回、あるいは対応のよさを誉められたいのだろう。
WHOのweb頁の英語記事によれば、強毒化する可能性は触れているが、何故季節性インフルエンザは強毒化しないのか触れてないし、今回の危険性の指摘も慢性疾患を抱える患者が低所得-中所得層に多く、その結果として、途上国で被害者が出やすいことを繰り返し憂慮している。しかし、日本のマスメディアのフィルターがかかると、「慢性疾患(chronic diseases)を抱える患者が低所得-中所得層に多く」(2009.5.11の記事)の部分がきれいに各社揃って抜け落ちるという奇妙な現象に遭遇する。
また、いくつかのweb頁を見る限り、強毒化のメカニズムは、医学上、ほとんど解明されていないらしい。「高病原性トリインフルエンザ(HPAI)の持つ毒性が、従来のものに比べて桁外れに強かったため、「強毒型=HA易開裂性の株」という、暗黙の了解が出来上がってきてる」という事で、この辺の専門用語「弱毒化」「強毒化」もマスメディアで、かなり出鱈目に使われていると指摘が見られる。
今回の新インフルエンザの最初の症例、2009年3月下旬から既に約1ヶ月が経過している。前回の数字から推測されるとおり、季節性インフルエンザより軽微と推測可能だが、案の定というか、厚生労働省も2009.5.13に、尾身茂自治医科大学教授が委員長を務める新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会報告として、潜伏期間が1-7日と短く、季節性インフルエンザと似た性質をもつと発表した。
<2009.5.13記>
日本政府もさんざん空騒ぎした挙句、麻生総理のテレビCMまで放送されるようになった。そもそも政府や厚生労働省やマスメディアが正確な情報提供を行い、馬鹿騒ぎしなければ、マスクが売り切れることもなかっただろう。失策を取り戻すために、CMを打つなどは更なる貴重な税金の無駄遣いで、選挙対策としか思えないものだ。
マスメディアは、厚生労働省の「学級閉鎖などの効果が出て、感染のピークは17日だった」などという発表内容を検証もなく報じたが、この閉校の期間に患者が出て隔離に成功した事例があるのか質問したのだろうか?もし事例がないなら、閉校は無駄だったという結論にしかならないのだが、・・・。
それにしても日本は何と低質なマスメディアしかないのだろうか。嘆かわしい。そもそも1957年生まれ以前の人がかからないのは何故かよく考えるべきである。2009年現在約62歳以上がかからないという事は、旧タイプのインフルエンザの可能性もあるが、インフルエンザの予防接種を受けている層だからかも知れず、既存ワクチンで対応可能だったのかも知れない。11月頃接種していれば、6ヶ月有効なのだから、5月いっぱいまで有効期間内ではないか。WHOが5月1日、既存の季節性インフルエンザ用ワクチンが、新型インフルエンザに対してほとんど効果のないことを試験で確認したとロイターが報じているが、日本政府は詳細な実験結果を取り寄せて追試確認したのか。それから、日本の政府やマスメディアは、世界の新型インフルエンザ感染者の中にインフルエンザワクチンの予防接種を受けた人がいると確認したのだろうか。一般に型が違うと有効でないというが、現在のワクチンは遺伝子配列全部を包むようなものではなく、攻撃性のある部分だけを無効化するタイプのワクチンなのだから、ワクチン株が90%以上変化しなければ有効なんて書いてある情報もあるではないか。
マスメディアがさんざん煽っておいて、視聴者に「冷静に対応を」と求める矛盾した報道にもっと苦情を言わないと駄目である。よくマスメディアは報道で、失業者の自助努力なんか求めているけれども、マスメディアの方がよっぽど自助努力が必要です。
<2009.5.27追記>