低質なマスメディア:民主党叩き
経団連が自民支持を明確に維持している現状で、広告主を抱えるマスメディアがあからさまな民主党叩きをすると気持ちが悪い。団塊世代が長いものに巻かれろ式で悪ふざけしているように思える。
これまで自民党は民主党になれば政権運営ができないと盛んに喧伝してきた。民主党政権になってはっきりしたことがひとつある。自民党じゃなくても政権運営に何の支障も起きていないという明白な事実である。
それから民主党政権によって、改善された内容も多い。例えば、自民党政権は弱者切り捨て政策を改革と称してこれまで断行してきた。その一貫で行われた母子家族への支援の打ち切りを今回、民主党が廃止した。自民党政権時に、たいした国会審議もなく、審議満了として強行採決していったもののひとつである。現在、野党の自民党は審議不十分と叫んでいるが、たしか谷垣自民党総裁は、新生の自民党は建設的な野党を目指すといっていたのに審議拒否などして、国会は空転した。そして、自民党与党時の強行採決による可決数は民主党になってからの方が圧倒的に少ない。自民党政権時より多数派でありながら、民主党の国会運営は、自民党よりはるかに健全といえる。
また、数十年前から指摘されてきた国民健康保険の制度的欠陥が、民主党政権になってようやく改善された。これは国民健康保険が雇用開始の翌月から(前年の給与ではなく)みなし給与を元に保険料を徴収していたにも関わらず、失業したら前年の給与をベースに高額の保険料を請求し続けるもので、本来の失業保険の給付金の意義を減少させるものだった。これを失業期間が長引くなどいちゃもんに近い理由で自民党や財務省は無視し続けたのである。いくつかの自治体、例えば横浜市などは独自に減免制度を設けていたが、そもそも、制度的にみなし給与で保険料を徴収しはじめる以上、失業後もみなしで減額すべきなのである。財務省のように能力の低い役人には、みなしでの徴収は行えるが、減額を行う能力がないと自民党に説明でもしていたのであろう(皮肉)。
不思議なのは、今国会最悪の悪法が自民党も賛成して、異例に可決してしまったことである。殺人などの時効を実質上、過去に遡及して延長する法律である。時効の切れる前に時効を延長すれば遡及法でないという説明は詭弁にすぎない。新たに発生した凶悪事件に適用するなら遡及の問題はないが、今回の法措置は日本の刑法史上、最悪の出来事になるだろう。死刑反対の立場とされる法務大臣が賛成してよい法律ではありえない。こうした点に批判の一点もマスメディアから起こらないのは不思議としか言いようがない。
被害者家族の感情うんぬんをいっていたが、本来、刑法というものは、ある理想に根ざしている。仇討ちなどの復讐を認めては、憎悪の連鎖が永遠になくならない。そのため、国家が介入して、近代国家の刑法は国家が刑罰を決めることになっている。その理想の一部を捨てない限り、被害者家族の感情云々というのは出てこないし、そもそも、今回の時効延長は、過去に遡及して法改訂するのと同一で、法理論上、最悪の手段とされてきた。そのため、私の誤解でなければ、第2次大戦後はドイツのナチスの戦犯の時効を無期限とする特例以外に、民主主義国家では全世界でも事例がないのではないかと思われる。
現在の警察・検察の能力の低さを鑑みると、とても恐ろしい悪法に思えてならない(検察の能力の低さに関しては、魚住昭(2007)「官僚とメディア」角川Oneテーマ21 A-62などを参照)。このままだと、未解決事件は累積していき、その点を指摘されれば、無意味に冤罪をかけまくり、被害者家族に加えて、冤罪被害者をもたらすだけだろう。また時間を区切って捜査をしないで、成果があがるのだろうか。その点も大いに疑問である。
ついでに指摘しておきたいが、相撲界の賭博問題は確かに誉められた事柄ではないが、もし角界が国技に拘らなければ、これほどの役人の介入を受けることはなかっただろう。最初から国際化と同時にプロ化を目指せばよかったのではないか。暴力団などの資金源うんぬんを言うなら、消費税も同じである。毎年居酒屋オーナーをたらい回しにして未納入の消費税などは累積すれば、暴力団の資金源として賭博の利益より多いのではないだろうか?
民主党政権になって、検察は立て続けに政治家を立件しようとして失敗した。また、郵政省の官僚に対して冤罪をかけた。そうした連続した不祥事のあせりが相撲界叩きになって表れているように見える。最終的に、理事代行に元検察が天下ることに成功した。この所の検察のミスによって経団連から能力の低い検察官僚の天下りお断りを受けてのことに見えて、非常に気持ち悪い出来事である。
相撲界の賭博問題は、相撲界が組織的に暴力団と関与しての賭博でなければ、プロ・スポーツなら個人責任で済んだ話であろう。
<2010.7.5記>
今回のように、約1ヶ月(十分な証拠隠滅期間)を経過しての賭博疑惑の捜査は、暴力団まで到達する意思がまるでないことを反映しているように見える。
今回、NHKは名古屋場所の相撲中継を止める決定を下したが、その理由が情けない。視聴者の声を重視したそうだ。中継を望む視聴者の声は無視して、放送中止を望む視聴者の声だけを重視するのだから、NHKの判断理由として視聴者の声というのは責任逃れにしかならない。今後の放映の是非の際に、圧力団体が執拗に放映中止の電話を入れれば放映しないということなのだろうか。もっときちんとした説明が必要だろう。
元東京高等検察庁検事長である村山弘義 理事長代行は、早速、相撲の伝統を無視して、場所に不在となる異例の行動を取った。やっぱり二束の草鞋をはいたままで、理事長代行ができるという天下り官僚のやる気のなさというか、責任感のなさには呆れるものがある。こんな理事代行では、角界がよくなることを期待できない。
<2010.7.13追記>