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子供手当てと滞納授業料

 民主党の子ども手当ての議論が行われてから、最近、リバタリアンなどから提示されているベーシック・インカムの議論が流行になりつつある。しかし、その思想内容を山森亮やP.Van Parisの書物で吟味した限りでは、非常に皮相な見方と言わざるを得ない。この点についは書評の方で取り上げたのでここでは別の観点からニュースの裏側を見てみたい。

 私には、寧ろこれらの議論は建前であり、官僚の本音は、子ども手当てによって滞納授業料の問題を包み隠すことにあるのではなかろうか、と感じる。

 財務省は支出は何でも反対、収入は自分たちの天下り先に影響しない税なら何でも歓迎(つまり消費税以外は反対)ということだろうし、財務省は子ども手当てに反対だが、滞納授業料の問題を隠蔽できる文部科学省、業務によって雇用を確保できる厚生労働省は賛成ということだろう。

 毎日新聞2010.1.31の記事によると、2008年度の都道府県立高校の滞納授業料だけで、7億9000万円(全国)に上っている。滞納人数がゼロと回答している京都府は、減免制度を設けているため、実態としては過小評価になると思われる。自治体の中には、滞納者に退学処分を下す場合もあるが、退学処分になれば滞納の支払いがなくなり、滞納者が退学処分を希望する場合もあると回答していることに呆れてしまう。正確に引用すると、「本人の意思に反する処分はない。退学処分になれば滞納額の支払いがなくなるため、生徒側が処分を望むケースもある」と答えている。新聞記者なら、退学希望は親の事情なのか、子の学業の意思のなさによるのか担当者に問い詰めるべきだろう。子の学業への意思のなさなら問題は少ないかもしれないが、親の収入の問題により、滞納額の入金を迫れて、親が子に修学を断念させても見かけ上は、生徒側の希望と言う事は可能だろう。本当に意思に反した例がないか裏付けの調査をした上で報道するべきだ。

 報道したあとで苦情を言ってもらえばいいと考えるのは三流の仕事といえるだろう。記事の通りの回答なら、この滞納の担当者は、「親を想って子の学業機会を放棄しても社会的に正しい」と考えていることは明らかであり、そうした場合に、奨学金を進めたり、減免制度があればそれを教えたりした上での処分かを問い詰めていない点でも、この記事の記者は三流だと分かる。

<2010.7.14記>

Kazari