高額所得者優遇、大企業優遇になる政策リスト
何だかマスメディアや経団連や官庁による情報操作が多く、正確に伝わっていないと感じる駄目な経済政策をリストアップしていこうかと思います。まずは、上記の視点から景気対策にならない駄目な政策を。
エコ・ポイント制度
耐久消費財を購入できるゆとりのある所得・資産をもつ層とその耐久消費財を生産する企業にのみ恩恵をもたらす制度。どちらにどれだけの便益がもたらしたか、分からなくする不透明な補助金の出し方。ポイントを金券の形で出すので、金券の発行会社に対する補助金にもなっている。
エコカー補助金、エコカー減税
エコ・ポイントよりさらに高額な耐久消費財である自動車を購入できるゆとりのある所得・資産をもつ層と自動車産業にのみ恩恵をもたらす制度。内部留保を溜め込める企業体力があるのなら、どのような景気であれ補助金の類は必要ない。どちらにどれだけの便益がもたらしたか、分からなくする不透明な補助金の出し方。
住宅減税
エコカーよりさらに富裕層に恩恵をもたらす減税制度。不動産、建築業界に対する間接的な補助金。こんなことをする位なら、直接的に建築技術の特許を国が買って無料で放出するなりした方がよい。特に石綿代替技術。
これまで累進率を下げ続けた相続税
私邸で重要文化財となるような家屋などは別の何らかの団体が保存管理すればよく、遺族が資産相続して維持しなければならない理由は存在しない。あまり資産格差が付くと機会の均等すら図れない。完全市場がよいとするなら、資産課税が強化されて良いという立場を取らないと、経済理論的に整合性がない。資産格差がありすぎる社会で、教育や労働市場の機会の均等が保てる見込みはない。
現行の高速道路無料化
乗用車で高速道路を利用できる人にのみ恩恵をもたらす制度。それより料金の一般財源化の方がよい。この方法だと高速道路によって不利益を得ている人への補償が不十分になる恐れがある。環境に配慮するなら業務用のバスとトラックのみ無料化すればいい。
金融資産の源泉分離課税
源泉分離は不可能な制度に改めるべきだ。そのために、国民背番号制が必要なら導入すべき。ただし偽造不能な水準のカードを作る必要性があるだろう。
一般に、国民背番号制は、増税とセットで行う制度改革であり、今回の阿呆な総理が減税とセットで議論するなら、論外といった所である。だいたい日本はいまだに高福祉も高納税負担も未経験の癖に、その過程を経ずに、なぜいきなり所得・資産格差をつける制度にしようとするのか意味がわからない。
株への源泉分離課税の減免措置
ただちに廃止すべき制度。現段階では株式市場を育てるという意味がもうない。
投資促進優遇制度
必要な分野プロジェクト毎に精査して支出すればいい。一括して税優遇すると、雇用を減少させるような投資財の投資に対しても税を優遇する結果になる。経済理論として整合性のある景気対策とならない。よく市場原理主義者は使い道も大事だと主張するが、使い道関係なく、一括に投資を優遇する制度を廃止すべきだという主張は見聞きしたことがない。経団連の御用経済学者たるゆえんか。また、この経済政策を是としておきながら、ベーシック・インカム的な政策(子ども手当てなど)を批判することも矛盾している。
雇用調整助成金
斜陽産業(鉄鋼業など)の大企業に対する補助金にしかなっていない。別の包括的な就業援助などに予算を割くべきである。
法人税の減税
内部留保をためたり、すでに合法的減税の範囲を拡大解釈して納税額を減らしている大企業にとっては意義に乏しく、景気への効果が薄い。現在の経済構造のもとで、人に金を出さずに、企業に金を出しても、企業の経営者の取り分、内部留保、株主利益でほぼ消え、従業員に還元されることはない。企業の経営者の能力が落ち、税収が減り、単に国力を弱める結果に陥りやすい。仮に減税せずに、本社が外国に移転しても、かまう必要はない。例えば、ヤオハンという会社が本社を海外移転したが、経営のタガが緩み倒産した。日本にいたら、数年、税収があったかもしれないが倒産はより早くなるだけだろう。市場原理主義者であるならば、競争力のない企業は早めに退出した方が良いとの立場のはずだが、逆に法人税の減税を主張することの方が多いのも御用経済学者であるがためだろう。ヤオハンの事例は、より競争条件の安易なところで経営できても、企業の国際競争力にはつながらないという重要な教訓である。中野剛志という京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)助教授(元通産官僚)も、法人税減税の効果を疑問視した記事を毎日新聞の「経済への視点」で「法人税パラドクス」と題して述べている。
<2010.9.17記,9.20追記>
追補.景気には直接に関係しないが、他の頁などで指摘した不備のある制度
現行の高額療養費制度および国民健康保険
改善すべき点が多い。世帯所得を保険料の基礎とすることは、単独老齢世帯化を促進する結果になる。この事は、高額所得、資産家の保険料回避になり、国民保険の保険料収入を減らす結果になっている。さらに、単独老齢世帯化が進むと、痴呆などが悪化するし、老齢者が国の療養施設に入ることになり、国民医療費の高騰に拍車をかける結果になっている。このことは既に別の所で指摘したので、これ以上は繰り返さない。
世帯所得の問題を除いても、他の税金と違って所得の累進性が低すぎるのも問題である。また、高額医療費の減免制度に関しては資産についても考慮すべきだろう。老人だけ特別扱いする意味もない。所得・資産を考慮しても不足分が生じたなら、生活保護+αの制度で、生活破綻する分だけの医療保障を行えば十分ではないか。
現在、国民の最大の死亡要因であるガンに関しては、通常の健康保険の適用範囲を増やすことで対応する方が健全である。こうした対応を取らない背景に、生命保険業界の市場開放をする際に、アメリカに屈してアメリカ企業だけがガン保険を扱えるようにした歴史的経緯が災いしている。政府が根性無しなので、日本国民の社会保障よりも、一部のアメリカ企業の利益の方が大事で、制度の改善ができないというのが、現在の実態といった所だ。
ガンの基本治療を国民保険の対象にする場合、ガン治療に関わる過度の医療費上昇を抑える仕組みが必要となってくる。現在は、医者への対価は抑圧する一方で薬の費用上昇を放置して、高額療養費で対応しようとしている。その両方とも、国民皆保険という制度を破壊する方向の試みになっている。朝日などの左派の新聞が現行の高額医療費負担が良いという主張をするのは、健康保険制度の仕組みを理解していないからであろう。より資産家である高齢者を、資産の乏しい勤労世代が負担する現在の仕組み全般がよいのかを、もう一度よく考え直す必要がある。国民健康保険は、自治体ごとの差異が設けられるような制度になっていて、その差異が大きすぎる。実はこうした自治体ごとの基本料金、所得割部分の違いというのは、基本的人権が本来、国内で同一であるべきという憲法に違反しているのではないかという疑いがある。その意味でも、より単一の制度に改めるか、自治体ごとの調整の範囲を狭めるのが適当である。一票の格差は時々裁判にかけられるが、国民健康保険の自治体ごとの差異は、学者もマスメディアも怠慢で調べないので、一向に裁判で問題提議される見込みが乏しい。また、火事などで財を失っても保険に入っていないのが悪い、自己責任と言われる中、なぜ医療費だけが生命保険に入っていないのが悪いという自己責任論がなく特別扱いする必要があるのか、マスメディアや厚生労働省には説明責任がある。つまり生きる権利に関しては、所得資産に関係なくというのなら、本質的には、イギリスなどの医療費無料の国立病院などを検討する方が正道である。
<2010.9.21記、10.15追記>
この記事を書いた後で、一部テレビなどでお茶を濁す目的と思われるが、最悪の自治体の国民健康保険の保険料が問題として報道された。最善の自治体との比較を行わないと意味がないのだが、・・・。こうした報道姿勢を見ても、現在のテレビのジャーナリズムなど、もはや要らない水準であることは疑いの余地がなくなりつつある。
<2010.12.6追記>