時事批評

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空気清浄機関係の覚書

科学的論点に終始し、社会的視点が欠落しがちな議論

 オゾンの正否自体についても賛否結構割れているが、極端な主張が多いように感じる。マイナスイオンに関しては似非科学というのは理解できるが、オゾンは微量でも人体に害を与えるから、悪いという主張などはちょっと理解できない。

 人間が存在しなかったとしても自然界に存在する空気中のオゾンは、微量でも人体に害があるから悪というのは行き過ぎじゃないだろうか。そんな主張をしだしたら、無菌室で生活でもしなくてはならんだろう。水道水は発癌性物質を含むから飲めなくなるし、ほぼ全ての魚に発癌性物質が含まれているので、魚は食することが不可能だし、肉も同じだろうし、残留農薬もゼロにできないだろうから、人体に具体的な被害が出ない範囲に洗浄した野菜すら食べれなくなってしまう。人間と共存可能な範囲の物質なら何であれ、共存繁栄する道を目指すのが正しい。

 しかし、現行の安全基準が十分か?という議論なら話は分かる。日本では1日8時間労働の環境においてオゾンが0.1ppmなら安全というものであり、アメリカでは0.05ppmとなっている。現在の常時使用する恐れがある家庭用機器に同じ安全基準を考えるのはおかしいかもしれないという主張なら理解できるし、現行より厳しい規制基準の方がいいだろう。

 私なら、大ざっぱな安全水準が0.1ppmにあるなら、規制基準は1/10程度が適当なのではなかろうかと思っている。現在の科学力で人間への安全を保障することは、過去の経験から不可能であることを示せるので、リスク軽減措置が必要と考えるためである。どの程度割り引くかについては、特に科学的根拠はない。過去の経験より保険的な発想でリスク回避の確率を定めるよりほかなかろうと思う。

 過去の経験というのは、例えば、PCBという農薬は最初は害虫のみに作用する画期的な大発見であり、ノーベル賞まで受賞したが、今は規制物質になっているなどの事例を指している。例えば、過去50年間に発見した新物質で、10年経過しても評価が変化なし、20年経過しても評価が変化なしなどのデータを取って、そこから確率計算するくらいしか方法を思いつかない。もしこれに勝る方法があるなら、それを議論すればいいと思うが、現行ではそうした議論すらなされている気配がない。たぶん官僚や学者がアホだからだと思う。

 最近は資本主義の強力な作用によって、産業界に不利化するかもしれない基礎研究は、理系文系ともに行われないようになっている。人類にとって資本主義は必要悪と言えなくなるかもしれない。

 これとは別の論点として、商品説明として不正確な内容でイメージ販売することを是とするのか?という論点がある。これは経済学・社会的視点からの問題提議になるわけだが、この点を明確に指摘している例は実に少ない。理系の方からは、同等の内容ながら、商品説明の科学的説明は正確であるべきであるという主張がみられる。これも理解可能な主張で、私が昨日、検索して読み調べた範囲では、下記のweb頁が一番優れていた。もうひとつ、価格.comでの議論は参考になった。なくなるかもしれないので、リンクはやめておくが、オゾン発生器に関して、強力な殺菌作用と一定時間換気してしまえば残留しない特性は魅力的で、人のいない環境で使うにはいい機械と書かれていた。特にホテルなどで客室の清掃での使用は有効ではないかといった主旨の内容が書かれていた。

プラズマクラスター・ナノイー・ストリーマ・ウイルスウォッシャー

 不正確な内容に基づく商品販売は現行法でも違法行為に当たるが、国民生活センターがマイナーな企業ばかりを狙い撃ちにしてオゾン発生器を批判するのはいかがなものかと思う。解説がおかしい商品は、実験を行う必要なく取り締まれる商品である。「オゾンを鼻から吸い込みましょう」など論外なので、そうした企業には業務改善命令より厳しい措置を下せばよい。

 国民生活センターのこうした公表姿勢を見ると、同センターが実験を行う際は、苦情のきていない商品を含めて、説明パンフレットと同等か検証する実験を義務付ける必要がありそうだ。大企業だから天下り先だから調べないというのはおかしいし、問題ない企業の商品データを公開すると、特定企業の宣伝行為につながるからできないと官僚が詭弁を使うなら、誤差の範囲内の企業の商品は、大手A社のA商品などとして情報開示すればいいだけの話である。またそのようにすれば実験データの信憑性も高まる。特定の企業の商品説明結果と同じ結果が得られたなら、実験方法にさほど問題がないと考えられるからである。

 またオゾン発生器の実験には、実験を再現可能にする必要最小限の情報は、技術資料として巻末に添付すべきだと思うし、こちらも法制化して義務付ける必要がある。そうしないと、怠惰な官僚が実行することは期待できない。特定企業が反論の実験を行い、web上にデータを公開していたが、どちらも換気回数、風速など気密性に関わる実験環境が明示されておらず、意味の乏しいものであったので読んで損をした気分だった。

<2011.3.1記>

 少し言葉が足りなかったので、補足しておきます。この議論の前提として、オゾンは安定的物質ではないというのを用いています。オゾンの場合、気相では数十秒から数十分の半減期なので、少しでも悪と考えるのは行き過ぎだと考えます。しかし、放射性物質のうち、半減期の長いものは同じ論理展開はできません。食物連鎖を通じた内部被曝の問題など軽視できないからです。

 その後、オゾンの半減期を真面目に調べていくと、影響を与える条件は多くあることを知りました。上記の換気環境以外にも、光の有無、酸化作用をうける有機物・無機物の有無、湿度にも影響を受けるようです。

※半減期は、有害物質などの半数が消滅するのに要する期間で、だいたい半減期の10倍の期間で、99.9%消滅します。%の計算式は100-(1/2)^10*100=99.90234375000000000000で、(1/2)^10は0.5のべき乗で10乗にあたります。

<2011.3.22補記>

Kazari