計画が必要なマスメディア
日本のだらしないマスメディア
まず停電に関して、計画停電は需給を見ながら最小限行うという点については普通だと思う。むしろ問題なのは、関東大震災の再発などの防災計画を自民党時代に進めていたはずにも関わらず、病院、鉄道などの優先的に復旧すべき公的機関への電力供給ができない点にある。システム的にできないなら、産業界をあげて対応すべきじゃないだろうか。震災対策の本質に関わるような点に質問しない所が、いかにも低質な日本のマスメディアらしい。
今回の福島原発事故に関して、M8.6を目安に安全設計されたのに、M9.0で倒壊しなかった点を評価した評論家(大宅映子)がいたが、直下型と海洋型とでは話が異なるし、M8.6の時に想定していた津波の情報も一向に開示されない。東電の社長?(課長かも?)が想定の範囲を超えた津波であった点を釈明にあげていたが、その記者会見ですら、「想定の範囲の津波とは何か」という情報開示が行われなかった。なぜ記者は質問しなかったんだろう。放送しなかっただけだろうか?
それから、2011年3月11日の東日本大震災前に、2011/02/28「東電、原発点検漏れ400超える 国に最終報告」(共同通信)、2011年3月1日「福島第一原発の33機器で点検漏れ 最長は11年間」(朝日新聞)といった報道がある。安全装置が十全に働かなかったのは津波の可能性もあるが、人災の可能性も否定できない。
一部マスメディアに「今回の震災によって原発神話が崩れた」という馬鹿げた主張をしているのが見られるが、そんなものは、1995年12月8日 動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故、1999年9月30日東海村JCO臨界事故、もしくは2007年7月16日新潟県中越沖地震に伴う東京電力柏崎刈羽原子力発電所での一連の事故の時点でとっくの昔に完全に崩れ去っている。これまで、関西電力、東京電力の事故隠蔽など悪質な事象も多い。今回の震災による被害は、震災後直後の航空写真からは、女川原発の方が福島第一原発より被害甚大に見える。にも関わらず、女川原発は、ぼや一回で事態をほぼ収束させているのに対して、福島第一原発が度重なる事故を重ねているのはなぜか。またなぜ比較報道がないのか、釈然としない。東北電力の方が技術力が勝っているということではないのか。
自民党時代に起きた中越地震の際には、東電は一貫して柏崎刈羽原発の放射能漏れを意図的に隠蔽した。自民党は「知っていたのに隠した」という疑惑を否定したが、日本は資源を持たないから、原子力発電を何が何でも推進する立場の政党である自民党が本当に知らなかったのか、疑問も残る。その際には、放射能漏れはないとして作業にあたったため、事故処理を行った職員は重度の被曝を負った。
民主党政権で、情報はかなり出るようになったと思う。この点は自民党時代と大違いで評価していい。気になるのは、マスメディアが専門家自身にずぶの素人に詳しく説明できるべきだということを求めている点である。超低質な日本のマスメディアが利点をもつとすれば、国民に分かりやすく説明するくらいのことしか思いつかない。
計画停電批判をするなら、計画報道でもすれば?
多くの人が避難所にいる被災者を映して欲しいという要望があるにも関わらず、相変わらず、各社報道競争をしていて協力体制にない。計画停電を批判するなら、マスメディア各社は、その手本として、得意分野に特化した報道を行ってみてはどうだろうか。例えば、TBSは、記者会見を編集なしリアルタイムで報道し、空き時間は内容解説。テレ朝は、避難所の被災者をできる限り報道する。日テレは自衛隊に張り付いて、原発報道などである。
それからマスメディアは、公的機関として、放送局として、特別にできることがあるだろう。真っ先に思いつくのは、避難所に向けて、ラジオ電波に緊急地震速報を流すことである。今回の震災では、個人宅でこうしたサービスを受けていても、家を流されてしまいサービスを受けられない人も多いし、避難所で停電した地域もある。もし避難所に電池、ラジオ、メガホン一つ程度あれば、余震対策が容易になる。
また予備の簡易通信設備があれば、それを避難所に無償リースするのもよいだろう。できることがあるのに取材ばかりしていて、アホじゃなかろうかと思う。
震災前2週間くらいの間、マスメディアは、コーヒーや諸物の物価高騰を煽った報道を繰り返し行ってきた。震災後、原発の危機を煽った報道を続けたのもマスメディア、その結果危機感を募らせて、東京で物を買ったとして、それが即、東京都民の責任と言えるか、はなはだ疑問である。それと暗黙裡に仮定している「東京の店頭の商品がなくならなければ被災地に物が届く」という主張にも信憑性がない。現に原発付近に近寄るのが嫌だからと運搬がなされない事例が挙がっているが、東京の買い占めと関係がない。
むしろ被災地に向けて、零細事業者が独自判断で、灯油などの無償提供に踏み切っている方に頭が下がる。ローソンがおむすびを送る手段として、自衛隊利用を言っていたが、自社商品の宣伝に公的機関を無料利用しようなど悪質極まりない。単純にローソンという企業が利益の一部を、米に替えて、自衛隊駐屯地に持っていけば、自衛隊はそれを救援物資としてきちんと東北に運ぶだろう。この被災状況に及んで、提灯報道を行うマスメディアは、なくていいんじゃないだろうか。
この震災時に貴重な電力を、これほど重複報道に使っていいのだろうか。こんな下らない報道を見るくらいなら、テレビ会社に放送割り当てして、病院などに電力供給した方が国民のためになりそうだ。
<2011.3.16記>
この後、TBSが悪質にも、「東京の店頭の商品がなくならなければ被災地に物が届く」という幻想を抱かせる報道を繰り返していた。根拠のないデマを公共の電波で流すのは即刻やめるべきだ。以前もここでの書き込みにTBSが反応していたが、反応の仕方が間違っている。
私は経済が専門なので、「個々の個人として合理的でも」云々の話も重々承知している。今回の件は合成の誤謬とは関係がない。東京人の合理的購買行動の結果、物資不足になるような場合は、合成の誤謬とは言わない。合成の誤謬は、個人が合理的に貯蓄した結果、マクロでは逆に貯蓄率が下がってしまい、最終的に個人の貯蓄率も下がるような現象を指して言う。物資不足は買いだめと直結した結果で何の逆転現象も生じないから、合成の誤謬の例として正しくない。少なくとも、これが合成の誤謬と言えるには、東京の買い占めという事象の一因ひとつによって、マクロの物不足が長期間続き、個人の備蓄も尽きる結果に終わる場合にしか使えないから、1-2か月しなければ結果は分からない。しかし、現在、生産現場の事情で生産が滞っている場合、生産は行われているが流通手段がない場合は、買占めに関係なく、店の棚から商品がなくなる。また、買占めによってなくなったものは断言してもいいが、あと1-2週で充足する。知ったかぶりの馬鹿キャスターが赤恥を書くのは構わないが、門外漢が聞くと誤った意味に語句を覚えてしまうので、たいへん迷惑だ。今回の被災地への救援物質が届かないのは、TBSの一部訂正報道に見られるように、第一が物流(道路などの寸断)にある。第二はガソリンやその運搬手段の不足である。ほぼこの二つでほとんど説明がつく現象だ。東京での物不足は、関東近県から被災民が疎開していること(一時的人口増加)が原因かもしれないし、一概に決めつけられない。
それからローソン擁護報道と取れる悪質な情報操作も見られたので、注意しておきたい。被災地域の人に、即食べられる食事の不足を言わせるのは本質的に間違っている。私は援助も専門的に学んだこともあるし、この辺の事情は明るいが、全部正確に書くと長くなるので、端折って書いている事柄も多い。被災地域で復興を目指す過程で、電気、ガス、水道のライフラインが止まることは通常想定される範囲の事柄で、そうした場合にも復興する上で、炊き出し等を現地で行える体制を整えることは大事であり、米と水があれば、火力は工夫次第でどうにかしなければならない問題のはずだ。ガスが通れば炊飯できるのなら、鍋などあるのだから、純粋に火をおこせれば問題はない。屋外で雪雨を防ぐテントなどがあれば、倒壊した家屋の木材でもなんでも火は起こせる。もちろん、例外的に職員が足りず、老人福祉施設の被災者が多すぎて対応が難しい場合もあるだろう。その場合の解決としても、本質的な解決は人手であって、すぐ食べられる食物は二次的手段にすぎない。
それとニュースキャスターが不勉強だから、原子力専門家の用語についていけないのはキャスターが反省すべき事柄でもある。今回の報道に使われている専門語くらいなら、原子力など門外漢の私でも少し勉強すれば理解可能な範囲だ。日頃いかにキャスターが不勉強か底が知れるというものである。
原子力関連の報道でもうひとつ批判しておくと、原子力の放射線量である「マイクロ・シーベルト」などを用いる際に、毎時かどうかなど正確に報道すべきというものがある。専門家は省略しても間違えないから省略している。国民が間違えないように説明すべきだと唱えるマスメディアが補足すればいいだけの話である。その批判主マスメディアが、この批判をした直後に、節電をフリップで説明する際に、mA(ミリアンぺア)の高い順に家電品を並べていたのには腰をぬかした。批判した直後の報道で抜けぬけと、何と低質な。毎時が抜けてます。それからヘアドライヤーは定格消費電力が確かに高いけれど、人により2分と使わないので、家庭で一日に使う消費電力量が大きい家電(例.冷蔵庫,エアコンなど)の節電を考えるのが一番重要である。よく言われているように、冬場は冷蔵庫の冷たさを「標準から弱い」に変えるなどの節電が効果を発揮する。エアコンの設定温度の変更、稼働時間の短縮も効果が高い部類である。多くの家電の待機電力は微々たるものなので節電効果は薄い。復旧時の火災対策なら意味は分かるが、きちんと分けて報道すべきである。節電としては、点灯している照明が電球ならば、電球型蛍光灯やLEDに替える方が効果が高い。こういう基本的な節電についても間違った報道をする日本のテレビ報道は本当に水準が低い。過去の節電の番組で正しく報道できていた内容を、今回の震災の際に正しくニュース報道できないのはなぜか反省すべきだ。
マスメディアは間違った報道をしてしまった際は、厳格に過ちを認め、報道を正すべきだ。
産業界や家庭に節電を呼びかけるマスメディアが、薄着で暖かい環境で、のうのうと報道する姿勢を見ていると、民間放送局の電力をまず真っ先に落とした方がいいだろう。
<2011.3.17追記>
なんとACジャパンでは、いまだに「東京の店頭の商品がなくならなければ被災地に物が届く」という幻想を抱かせるデマ広告を流し始めた。呆れるぜ、まったく。どういう経路でそうなる可能性があるのか説明、証明して欲しい。東京の店舗の商品在庫が東京の家庭の備蓄として移動したところで、被災地と関係がない。被災地に届かないのは、単に被災地における物流(道路、港湾などの破損と燃料の不足)の問題である。日本海ルートでガソリンも届いたようなので、順次解決に向かっていくだろう。今後も生活道路を回復させない限り、これだけの広範囲に点在する避難所には、避難拠点から物資が届けられない。まったく、東京とは無関係の事柄である。
買占めで問題が起こる唯一の可能性は、生産が行われていない生活必需品を、卸売業者が価格上昇を狙って投機目的に物資に大量に(市場流通量の9割とか)買いあさり、自分の会社の倉庫にため込む場合であり、消費主体の各家庭の一週分の備蓄程度とは規模の異なる話である。それから政府は、生活協同組合などに直接働きかけを行い、被災地へ物資優先を要請したようだ。実際に、毎週配送注文して届けられる生協の物資のほとんどが、東京の組合員には届けられなかった。生産メーカに直接働きかけて、被災地へ物資優先を要請し、それを承諾している動きも多々観察されている。政府は道路復旧の遅れを、一部の国民に対して、責任転嫁するような姑息な手段を試みるべきではない。
産業界の圧力があったのかしらんが、柏崎刈羽原子力発電所の第一号、第五号が稼働している。将来を禍根を残さないように、きちんと政府は説明責任をはたし、マスメディアも事情をきちんと国民に説明すべきだ。いくら報道機関そのものと広告主にとって朗報だからと言って、事故が起これば、更に事態が悪化するのだから、慎重に対応すべき事柄だろう。急に節電がトーンダウンしていくわけだ。
<2011.3.20追記>
以下の記事を見落としていました。やっぱり東京電力というのは、札付きの悪徳企業ですね。
東電、手間がかかるからと「鉄道だけ電力供給は不可能」とウソの報告
<2011.4.3追記>