原子力発電所と水道水 part2
東京電力はこれ以上、何を隠蔽したいのか
協力会社の作業員3名の被曝させた後の報道によると、東京電力は被災前に福島第一原発で、アラーム付の放射線量計を5000個くらい所有していた。震災後は約320程度に減少したが、すべての作業員に携帯させずに作業させたことが判明した。また同じ日の会見で、東京電力は福島第二原発や柏崎刈谷原発から補充出来ると発言した。対策が取れるにもかかわらず、協力企業を被曝させた後の4月1日時点でも対策を取っていなかったことになる。末期的ですな。海水に漏れた放射線量も何回か発言を変えている。高濃度の汚染水の回収は目途がたたないし、東京電力に技術がないため、当初、援助の申し出を断ったフランス政府にも協力を仰ぐ結果となった。今回の一連の東京電力のスタンドプレーは、外交上も日本の国益を大きく損ねるものである。
それから、福島県土を汚染した東京電力には、40km内の土壌を含めた放射性物質の回収を責任もって行わせるべきではないだろうか。
いくつかのwebなどで主要な核分裂生成物を見ると、その中には、今回報道されているヨウ素131、セシウム137があり、核分裂収率(%)は各々3.1、6.2である。しかし、その他の核分裂収率(%)の数値が高い放射性物質の話が出てこない。稼働していた時にたまったとされる原子炉内の放射性物質をベントして外部に放出したのに不思議な感じがする。ストロンチウム90は、物理学的半減期も28年と長く、実効半減期で見ても18年と長いため、長期的には、人間に対する影響はヨウ素131、セシウム134、セシウム137などより深刻である。このストロンチウム90の核分裂収率(%)は5.8、なぜセシウム137がこれだけ検出されているのに、ストロンチウム90の検出例が報道されないのだろうか?(つくばセンター災害対策中央本部の大気調査ではキセノン133、テルル132も3月15日に検出されている。各々の元素記号はXe、Te)。ストロンチウム90は、特殊なγ線を出さないから、通常のγ線検査では検出できないらしいが、別の機器を用いれば、数十分〜1週間で分析可能となっている。どの程度分析に時間がかかるか定かではないが、一向に分析と情報公開が行われないのはおかしい。
政府は何を隠蔽したいのか
福島県内や近隣県の暫定基準を満たした農作物はすべて、これまでの原子力開発に携わった東大教授、東京電力の元社員、経済産業省の方々の食用にすればいい。彼らは「健康被害などでない、安全である」と主張しているのだから、問題ないはずだ。それから、今の安全基準で安全と宣言する政府にも第一義的な責任がある。原子力安全保安院を管轄する経済産業省を筆頭に、国会議員と官庁の食堂で優先的に食用すればいい。これらの政府見解を大した検討もなく、信用するべきだと主張しているマスメディアは、第二義的な責任がある。NHKと各TV放送局の社員食堂の食材は、福島県内や近隣県の暫定基準を満たした農作物を用いるべきだ。それでも福島県内や近隣県の暫定基準を満たした農作物などを消化できない場合、はじめて国民にどのように処分するのか検討すればいい。
「ただちに悪影響はでない」は「継続して飲食すればどのような健康被害がでても保障しない」と言っているのと大して変わらず、この文言で国民に冷静に対応と言われてもなぁ。具体的な放射性物質の遮断の見取り図を示してくれないとね。いまだに海水に高濃度の放射能汚染水を垂れ流しているのだから。
マスメディアは何を隠蔽したいのか
風評被害という言葉を安易に用いるべきではない
WHOの飲料水水質ガイドライン 第3版(1994年)の放射性物質の安全基準は、各放射性物質の経口摂取で預託実効線量が年間0.1mSvを超えないように設定されている。これ自体は、ICRPが勧告している水準の10%(同名の日本語PDFの198頁)と書かれている。この基準の背景には、ICRPの1991年の研究から、放射線によるものとして推計される健康影響の正規確率係数が7.3x10-2/Svを用いている。もしこの低線量被曝でもガン死亡率のリスクが高まるなら、WHO基準でも安全とは言えない。安全を訴えるのなら、米科学アカデミーの研究は何を意味するのか、ニュース解説するべきだろう。
世界の放射性被曝の平均は約2.4mSvであり、日本はその半分の1.2mSvとなっている。一部テレビ報道では、どこぞの教授が、スウェーデンなどラドンが土壌に含まれる地域では、ガスの発生により吸入摂取するため、放射性被曝が世界平均よりも高い地域となっていることを説明していた。上述書によれば、ラドンだけで10mSvに及ぶ地域がある旨が明記されているが具体的な地名は記されていない。日本にはラジウム温泉が各地にあり、これも最近のWHOなどの放射線研究を見ていると、健康被害をもたらすようなことが書いてある。こういうのをきちんと報道せずに被害が拡大する場合、無為の犯罪とならないのは何故だろう。
こういう事例を見ていると、危険と言いながら輸出し続けた血液製剤のために、Hivウィルスに感染した被害者を思い出してしまう。この当時の厚生労働省、ならびに血液製剤の安全性を検討する委員会の座長であった東大教授は、「当時の最先端の医学を持ってしても確実には分からなかった」と無罪を主張している。要するに東大教授らの科学者というのは、賛否両論あれば自分の責任は言い逃れできると基本的に考えている。マスメディアはニュースや事件を丹念に、正確に、科学的に報道する使命があるはずなのに、きちんと報道できていないし、きちんと報道する意志も感じられない。
※世界平均約2.4mSvについては、同WHO書に線源の統計が示されているが、テレビ報道で正確に取り上げられているとは言い難い。テレビ報道機関は、数値の根底にある基本書に目を通す努力も怠っているのではないかと疑われる。その線源の分布は次のようになっている。ラドン(自然内部被曝)43%、地殻のγ線(自然外部被曝)15%、宇宙線(自然外部被曝)13%、医療被曝20%、食品,水(自然内部被曝)8%、他の人工1%となっている。WHOの同書には、(事故などで飲料水が汚染されたりしなければ)飲料水の健康被害は少ないと書いてある。しかし、それは年間被曝の線源となる飲料水の構成率が8%と低いからで、事故の場合は当てはまらない。
この他の人工が著しく上昇しても大丈夫というわけではなく、その場合、各放射性物質別にガイドラインが設けられている。
統計的推論で研究した人なら分かると思うが、本来、計量分析を用いる際には、頑強性を高めるようにするべきなのだが、この部分は疎かなものが多い。用いるデータや推計方法によって結果が安定しないことも多いのが実情である。医療でもほぼ同様の統計理論と統計ソフトを使うので、その杜撰さは計量経済学を用いた実証分析の経験から類推できる。あくまで、医療分野で理論的に因果関係が確定しているものについて、統計処理によって若干の確かさが増すだけの話である。病気のメカニズムが分かる前に、統計的に相関が見つからなくても、それは操作変数が何か分からないだけかもしれず、現在の統計手法を用いる限り、例えその方法が世界最高峰の水準であったとしても、原因ではないことなどは証明できない。安全を宣言するにはほど遠いのである。
またWHOのガイドラインを読む限り、これは各放射性物質に関するもので、複数の放射性物質に汚染された場合は、積算する必要があるため、ひとつの放射性物質では、0.1mSvを超えないように設定されていたとしても、20種類がガイドラインぎりぎりなら年間2mSvで、自然被曝量に達してしまう。とはいっても飲料水に関しては、比較的しっかりした理念をもとに考えられている。野菜などの場合は、ひどく基準が緩くなる。例えば、平均的年間消費量を目安にすれば、規制値が大幅に緩くなることは目に見えている。
飲料水のガイドラインをうまく活用すれば、食品の基準も簡単に計算できる。野菜の場合は、例えその野菜すべてをジュースにして飲用して、年間730L飲用しても0.1mSvを超えないように設定すればいい。つまりこの論理に従うのが正しいとみるならば、飲料水の安全基準をそのまま食品に適用可能になる。1KGの野菜から1Lの飲料野菜ジュースを作る際に、繊維を含めて飲むと仮定すれば同じになることが分かるだろう。一般に現行の企業の商品表示義務には、原料の原産地明記は含まれていない。実際に、カゴメや農協が基準値より低くても、原料のほとんどが基準値より少し低いだけのものから野菜ジュースを作っているなら、かなり濃縮されてしまうことを考えた方がいい。現在の野菜などに関する暫定基準は、私なら今後20年くらい野菜ジュースを飲みたくない水準の安全基準である。
※WHOのガイダンスレベルは大人が730L(リットル)を一年間に飲むと勘案している。ガイドライン数値(Bq/L)=0.1(mSv/年)/[成人による摂取の線量換算係数(mSv/Bq)x飲料水の年間摂取量730(L)]
※WHOガイドラインでは、ヨウ素131:10Bq/L、セシウム134:10Bq/L、セシウム137:10Bq/L、ストロンチウム90:10Bq/Lとなっている。
※WHOガイドラインがICRPより1/10だすると、ICRPの飲料水の各放射性物質の基準値は、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90で100Bq/Lとなる。一方、暫定基準は、ヨウ素131で300Bq/Kg、野菜ジュースにして全部飲むと、ICRPの飲料水の基準すら満たせなくなる。もし300Bq/Kgの放射性物質で1Lの野菜ジュースを作ると、300Bq/Lとなり、安全基準が甘い方のICRPの飲料水の基準値の3倍、WHO基準の30倍になる。複数汚染の場合は更に悪くなる。
水道水が変 part2
※自宅pH試薬液の水道水検査結果
2011年3月17日pH6.7、19日pH6.6、20日pH6.6、21日pH6.7、22日pH6.6、24日pH6.4、25日pH6.7、28日pH6.8、30日pH6.7、31日pH6.5、4月1日pH6.6。
4月1日、手洗いで手が荒れるレベル。
嬬恋の水(2.0l):pH6.8(商品表示は硬度19mg/L))
富士山のバナジウム天然水(530ml):pH7.0(商品表示は硬度29mg/L,軟水)
宝喜の水(2.0l):pH7.1(温泉水、カタログ表示はpH8.1、硬度54.1mg/L)
硬度は、mg/Lの場合、アメリカ硬度で事実上の世界標準の模様。WHOの硬度による水の分類は以下の通り。
軟水:0 - 60未満、中程度の軟水(中硬水):60 - 120未満、硬水:120 - 180未満、非常な硬水:180以上
<2011.4.2記>