被災地テレビ報道の出鱈目さと水道水
際立つ専門家の出鱈目さ
被災地支援に関して
原子力推進派の専門家の出鱈目さは別所に一部書いたし、書き始めると枚挙に暇がなくなるし、ほかの多くのweb頁でも指摘されているので、ここでは割愛する。今回の被災地報道で特に目立つ支援関係の出鱈目さについて忘れないように少し書いておこうと思う。
歴史的に未曾有の事態に対応する場合、過去の経験の延長で対応できる場合と対応できない場合がある。今回の東日本大震災とその影響で発生した東京電力の人災である原子力発電所の事故のほとんどは、後者に該当する。その際に、過去の原則論を強要することは被害を拡大させることにしかならない。これは今後も同様である。
被災地支援に対する典型的な馬鹿げた主張のひとつは、阪神・淡路のような震災地域が比較的狭かった地域でしか活動していない専門家ふぜいが、数百kmの海岸部を壊滅させるような大規模震災の時に、原則論を唱えることである。こうした阿呆のせいで、実際に人手不足に陥っている。比較的被災地域が狭い場合は、原則論「ボランティアは被災地に迷惑をかけないように、すべての衣食住を確保して被災地支援を行うべし」でよいが、今回はそのようにならない。なぜかは自明である。被災地支援は近隣から行うのが最も容易であるが、その近隣が(被災地域でない青森、秋田、山形ですら)、物資不足(燃料など)に陥っていたからである。
東北はおろか、関東でも必要な食、燃料を確保して現地に向かうことは難しかった。現在でも簡単ではない。このような場合は、ボランティアに対して、被災民より低い水準の基本支援をすることも視野に入れるべきなのは、少し想像力のある人には震災2-3日後には分かり切っていたことである。どう行うかは難しい課題もあるが、大量動員が必要な震災に対して、大量動員を妨げる主張を行う専門家ふぜいがいるのは許しがたいものがある。
東京の買い占め報道に関して
東京は原子力事故の被災地域であり、当初の買い溜めの原因も、ほぼ放射能漏れに基づいている。私は当初、1-2週で収まると書いたが、これは事故の度合いが悪化せず改善に向かうという前提に基づいていた。しかし、最近は高濃度の放射能汚染水の存在とその汚染水の海への垂れ流し、関東の浄水場の放射線量の数値が下がらないことなどが重なっているため、飲料水については、当分の間、不足に陥る状況と変化してしまった。それ以外の米、インスタント食品、ティッシュ関連は入荷があるものの、品薄状態が続いている。
しかし、それでも東京近県の買い溜め行動は、買占めと言えるか疑問である。ひとつは原因がはっきりしている点:原子力事故による人災に基づいている点と、被災地が物資が届かない要因と関係がない点、被災民を公的ベースで1万人受け入れている点である。別の地縁による被災民受け入れ、震災被災民とは別に疎開している人数は、考慮されていないことも含めると、買い溜め行為と被災地への物資不足はまったく関係がないといっても過言ではない。
ひとつだけ東京でも例外がある。今回の震災を機に、企業の防災担当者が自社の防災品を補充する目的で、防災関連品を買い占める場合である。実際に私がPC部品を購入する目的で秋葉原に行った際に、背広姿のサラリーマンが防災品を探す姿が数多く見られ辟易した。非常に見苦しかった。
一方、大阪を中心とする買い溜めは、買占めと呼んで差支えないのではないか?飲料水の問題がまったく出ていないため、関東の人が逃げ出して一時的人口が急増しているのならともかく、そうでないなら単に価格増加を見越しての投機行動と解釈できるからである。実際にいくつかの商品が値上がりしてきており、この辺は注意を要する。
ニュース報道で言うべきことは被災していない中部より西部の住民の買い溜めを戒めることであって、関東の住民にそのようなメッセージを行うことは不遜である。千葉県では石油コンビナートの火災や、液状化といった被災にあった地域がある。いまだにACジャパンが悪意ある情報操作の広告を垂れ流しているが、一番大事なのは、現地に金と人を送ることである。現地の人が資金に基づいて必要な物資調達をすればいい。
支援物資報道に関して
マスメディアは、企業や善意の一般人の物資提供を受け入れるように強要することがあるが、まったくもってけしからんことである。被災直後は支援の妨害にしかならない。支援物資は被災地に要望に基づければ最善であるから、一方的に送りつける行為は有難迷惑になりやすい。先日の「タイガーマスク」運動にしても同じである。通常は資金援助が最も良い。顔を見せずに物を一方的に送りつけるという行為は独善的だ。ニュースになり自己満足したい輩が行いやすい側面もあるし、継続して行う必要性がないというのもあるだろう。「タイガーマスク」運動は本質的に関わりあいの乏しい独善的救済行為であり、巨人軍の内海投手のように施設と直接関わりあう継続的支援とは正反対の行為に当たる。つまり、マスメディアが内海投手のような行為を促すなら社会的に意味がある。
全部テレビをチェックしているわけではないが、私が見ていた範囲では、資金援助が一番大事というニュアンスの報道をしたのは一度しかない。NHKアナウンサーが、輸送問題を回避できる支援法として言及したくらいである。これまで被災地支援の一番の方法は、義援金であった。これまでの震災後の報道では、国民に対して郵貯や銀行の支援金の口座を紹介する回数がはるかに多かった。今回の被災は阪神淡路の最低でも10倍強は必要なはずだが、変な情報操作をした上で、歌を流すなどマスメディアが行いたい支援を横行させている。
マスメディアは下らない主張をする暇があったら、各被災地に通信手段をマスメディア自身が支援するべきだろう。その上で、マスメディア連合で、臨時で1ch全国放送を確保して、それこそ相互通信でもすればよかっただろう。今からでもどうだろうか。復興には半年以上かかるから、総務省も特別にテレビ放送枠ひとつくらい、震災関連に限るという条件付きにして、NHK民放連合に1年度くらいくれてやってもいいだろう。国民にチームになろうというCMを垂れ流しながら、ほんの数社のテレビ放送局ですら協力ができないのは器量が狭すぎるというものである。地デジなどのB-CASカードで国民から金を毟り取る連合を組めたNHK民放連合が協力できない道理はない。
<2011.4.3記>
※水道水4/3、pH6.8
※水道法第4条では「異常な酸性とアルカリ性」にならないように規定している。具体的な基準は「水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第101号)」で定めていて、平成16年(2004年)4月1日に改正、平成20年(2008年)4月1日、平成21年(2009年)4月1日、平成22年(2010年)4月1日に一部改正され、現在は50項目となっている。pHの許容範囲が5.8-8.6と異常に広いが、この範囲が適用された理由は日本国内の自然水のほとんどが入るためらしい。このpHの範囲では年間利用する上で安全な飲料水とは言えないため、各都道府県の水道局が管理目標を設けている。水質管理目標は福島県でpH7.5、東京で7.5程度となっている。東京水道局は過去の運用実態の数字を公開しており、「東京の水道水のpHは、平成16年度、平均7.6(6.7〜8.4)でおおむね中性です」と書いている。
※3月17日から4月3日まで、pH6.4〜6.8で推移しており、最近のpH数値は法には触れないが、管理目標から逸脱した異常な状態が続いている。
※WHO飲料水水質ガイドライン第3版によれば、(水道の鉄管を維持するため)「鉄の腐食制御は、pHを6.8〜7.3の範囲に調整」(181頁)する必要があると記している。同書を読むと、もし、水道管の一部に鉄や銅や鉛、ニッケルや亜鉛に接する部分があり、pH6.4なら、それらの金属が溶け出してしまう。