国民を愚弄にする情報操作
外部被曝100mSv/yという値の独り歩き
なぜ、たった一人の放射線専門医だけの意見を垂れ流すのか(NHK)。科学の分野では、必ず意見を異にするものが多数いる。これまで、どんなに下らない少数派の意見でも、政府や経団連に都合のよいものは、テレビで繰り返し放送されてきた。一方、都合の悪いものは相当に時間が経過した後に、極めて稀に、テレビニュースとしてではなく、特集報道でしか取り上げられない。民主主義とは程遠いこの厳然たる差別はなんだろう。また年々、低質化する新聞、醜聞ばかりとなり誤報が増える週刊誌と比べても、テレビ放送が格段に見劣りするのはなぜだろう。
そういえばNHKに出ていたこの間抜けな専門医は、ロバート・キャンベル東大教授(日本文学)の「現状、野菜などの検査の体制がどのようになっていて、どのような調査がなされているのか」という質問に対して、「政府は適切に対応している。信用しろ」という類の呪文しか返答しなかった。こういう視聴者を馬鹿にした対応を聞いても、NHKアナウンサーがだんまりを決めるのはなぜだろう。適切な回答を促せよと言いたい。もちろんRキャンベル東大教授が知りたかったのは、全数調査しているのか、市場に出る以前に誰がどこで検査しているのかという事だろう。また、市場を通さない出荷品はないとどのように確認されているのかも知りたかったであろう。出荷規制を受けた地域の農家が独自の放射線量調査とやらで(自己申告によれば)基準値以内の野菜を、大手スーパーに直接、野菜を卸していた事実が発覚した後の番組であったのに。他の人の検査を経ないで、農家自身が基準値以内といっても、過去の事例からにわかには信じられない。
NHKは視聴料を徴収しているのに、無駄に具体性のまったくない馬鹿らしい時間つぶしの報道をしてもいいのだろうか。出鱈目な発言の多い石原都知事ではあるが、「テレビ番組のほとんどがゴミだ」という知事の見解だけは違和感があまりない。それだけテレビ局の失態が数多くあるということだ。そういえば2chでは、マスゴミと書かれていましたっけ。
そもそも広島・長崎の被曝症に限ってみても、日本政府は救済対象を、被曝地から同心円状に何km地点で被爆したかなどの馬鹿げた基準を用いてきた。この広島・長崎で用いられた同心円基準というのは、第一に救済対象を減らす目的、第二に公務員の事務処理を簡略化する目的で、作られている。それからチェルノブイリ事故以降の処理と、それを日本で適用可能かというのも議論を要する。旧ソビエトと日本の社会状況の差を慎重に考慮しておかなければならない。
チェルノブイリの原発事故は、旧ソ連時代の1986年4月26日に発生している。無論、旧ソビエトは社会主義国であるから、医療は無料である。ベルリンの壁崩壊は1989年11月9日であるし、その後すぐに旧ソビエトの医療体制が変わったわけではない。医療面から経済的な不安に陥ることは、ほとんどなかったと思われる。一方、日本は国民皆保険といっても、被曝に伴う病気のすべてが保険適用ですらないし、窓口負担もある。同列に論じること自体が無意味とすら思えるくらいの差が両社会の根底に横たわっている。それから、放射性物質の内部被曝量を調査するといっても、特定の死者の遺族の同意を得られた場合だけだろう。旧ソ連時代は高福祉であるから、医療の問題で経済的貧困に陥ることもなければ、土地や職を奪われてもすべて国家が失業手当などで通常の日常生活が行える社会であった。だから国家賠償的な事態は、代替地の確保程度のことであったろうし、日本ほど先祖的な発想が社会主義国家にあるはずもない。逆に、日本では、被曝症状が出れば簡単に経済的貧困に陥るだろうし、低福祉なので通常の日常生活が行える見通しは立たない自助努力の国である。
それから以前も医療科学の統計分析のいかがわしさについて書いたが、当時の医療科学であれ、現在の医療科学であれ、まだ未知な事柄が多い。農薬に汚染された発癌物質を含む食料を摂取しているから、低量被曝しても構わないというのは論理的にも正しくない。無駄な被曝を避ける正当性と、危急の時の低量被曝容認を垂れ流しておけば、無罪放免と考えるNHK民放のテレビ報道姿勢をみると、夏にはテレビ局を廃止するか、輪番制にでもすればいいのではなかろうかと思ってしまう。これは罰則という意味合いで言っているだけで、経済的に効率的な政策ではない。
節電に関する正しい経済学的処方箋は、企業への電気料金の値上げと家庭への電気料金の累進化(第四段階以降の設定)である。なぜかは明白である。一律に負担するよりも、大規模な所を効率化させる方が簡単だからである。大規模な所は電気料金が上がると、市場の価格メカニズムという強力な効率化作用によって、自主電源化を進めるだろう。大規模な企業や家庭なら、資金調達なども目途が立ちやすいし、投資余力もあると考えられる。同じ2割減らしても、貧乏一家族より、大企業の方が、総量の効果が大きいのは自明な事柄だ。それに政府とともに計画をして罰則規定を設けるよりも、市場メカニズムを使った方が効率的である。問題企業が、料金を値上げすることは、関東の市民の心理的な抵抗が大きいからと官僚が面倒くさがっているのだろうが、発電の原材料に国産の石炭を使うような七面倒くさい手間を経済産業省はかけてきたのである。官僚が広報もまともにしていないから、知らない国民も多いかもしれないが。ただし、電気料金の値上げだけであると、東京電力の経営の自助努力は促せない。そのため、電気料金の値上げは経済産業省の認可が必要なため、認可の条件として、給与の一部カット(例えば一般従業員2割、中級以上3割、役員クラス8割)、ボーナスの停止、役員報酬の停止、過去の役員、重役クラスの年金の自主返納、役員の退職金停止などを行えばよい。東電社員の給与水準は一般産業よりかなり高いので、全部実施しても問題は少ない。
話を旧ソビエト時代の医療に戻そう。まず、広島・長崎の被曝症の研究は国主導のものは非常に杜撰だったことが多くの報告書で指摘されている。原爆の直後の風評により、広島・長崎の被爆者は数十年差別を受けることになった。差別がなくなっても、原爆手帳をもたざる被爆者の悲惨さがある一方で、まったく被曝症状がでていないが、原爆手帳を持つだけで医療が無料(窓口負担がゼロ)になるなど特典の多い既得権益者も数多く生んだ。原因は同心円基準にある。
テレビでは如何にも科学的調査に基づいているかのような誤解を垂れ流しているが、患者毎の細かい被曝量の調査などは稀にごく狭い範囲でしか行われていないのである。逆に言えば、被曝直後に患者および周辺住民の全数に被曝線量の計測調査を実施していれば、今より厳しい基準を採用するに至ったであろうことは容易に想像がつく。広島・長崎に関して言えば、患者のそもそもの被曝量の推計が間違っているから、なかなか統計的な有意性が出なかったのだろう。チェルノブイリ事故でも内部被曝に関しては同様かもしれない。また、高福祉国家の旧ソビエトでは、そもそも健康不安とかあまり起きにくい社会である。自助努力でしか生き残れない競争強要社会の日本と比較にならない。多くの病気などで人種による耐性の差もありうる。年齢・体躯による差もあるだろう。それらを一律の規制値を用いるのだから、乳幼児だけ別にしていても、大人でもそれらの差で最も影響を受ける人を基準に規制値を作る必要性がある。危急とか言って、健康状態の悪い人や入院患者が死んでも構わないような基準であってはならない。
東京電力に関しては、水俣病のチッソより厳しい措置が必要である。しかし、それは国有化ではあり得ない。経済学の教えるところでは、こういう事態に際して企業を国有化することは間違いである。問題企業の労働者を公務員にして雇用保障すること自体が無用のものであるし、国有化で企業努力を期待できる道理がない。
同心円にこだわる官僚の怠惰
風向きなどによって被害の度合いが異なることはチェルノブイリ事故で明らかになっているにも関わらず、つい最近まで福島第一原子力発電所から同心円状に何kmかで地域区分しようとするのは、官僚が前例主義にとらわれた阿呆だからだろう。
石原都知事は「官僚をうまく使えば」というのは今回のような前例がない場合にはあまり役立たない。前例の同心円基準を用いて、批判を受けたことからも容易に推察できる。今回のような過去に例のない震災の場合、役人を利用する上で障害となるのは、前例主義と法である。政治家が違法となる場合でも、法の不備を国民に説明して、世論を味方にして、運用面での解決を官僚に強要すれば動くかもしれない。現に石原都知事は、法的根拠が曖昧なままに、東京都知事選挙運動の一環として、東京都から千葉県浦安市に対して上下水道支援を行っているし、浄水場などの放射性物質の検出値の情報操作を行っている。官僚も人間だから、ええかっこしいの所は動くし、怠惰だから怠慢の指示や自分たちの責任回避につながる情報隠蔽に関しては、違法でも容易に追認するだろう。こうした違法な情報隠蔽は自民党独裁時代からの前例があるため、まかり通っている。さまざまな事例から、官僚にとって法律よりも前例の方が重いことは確実である。石原都知事の行ったことは「官僚をうまく使う」というよりは、都民や国民をはぐらかすことだったのではなかろうか。
マスメディアの怠惰
最近、千葉県浦安市の被災が取り上げられているが、その中で若い世代による住宅購入の二重ローンが取り上げられることが増えた。一般住宅の液状化に関して言えば、震災によるものでは1995年阪神・淡路以降と言えなくもないかも知れないが、それ以前にも毛細管現象などを通じた液状化については指摘されていた。阪神・淡路以前から埋め立て開発には様々な問題があることが指摘されてきた。仮に百歩譲って1995年説を是としても、浦安市内で1995年以降に住宅購入した者は(液状化などの問題があるがゆえに)低価格で購入したのだろうから、二重ローンの問題があるにしても、自助努力で解決すべき問題である。一方、東北の場合は事態が異なる。国などが震災対策の規準とする情報をもとに十全に対応していても、津波被害にあった地域がある。予算が限られているなら、浦安市よりも東北に使うべきだろう。
浦安市長は自分の選挙区の利得を守ろうと災害対策法の不備を言うのは正しい。しかし、本来、安易に国が補償すべき事柄ではない。マスメディアが政府に間違った圧力をかけて無駄に予算を使わせるのは、マスメディアの情報買い占めによる投機行動と言え、社会的な悪である。報道という既得権益を悪用してのことだけに性質が悪い。もし厳罰化が必要というのなら、こういう事柄に対してではなかろうか。
その他の官僚に関連する怠惰
東京電力の原子力事故の対応が出鱈目なのは、安全対策が疎かになっていたためである。多くの民間企業も例外ではない。安全対策を怠ったがゆえの事故は実際に増えている。政府としては、その原因の一因である不況を取り除くことであるが、それには財務省による日銀券の増刷がかかせない。不況の元凶のひとつがデフレにあるためである。バブル崩壊以後、金融緩和より増刷はずっと言われてきたことである。財務省が日銀の政策に批判的な浜田氏を内閣府に招聘したり、財政均衡主義者の財政学者を審議会委員長にたてるなどして執拗に日銀を攻撃し、財務省の責任を転嫁し続けた結果、現在まで根本的解決に至らないという先送り状態が続いている。日銀の金融緩和政策などより、財務省による日銀券の増刷の方が強力なデフレ対策になる。
また財政均衡主義一辺倒が、景気をすべて日銀に負わせる風土をうみ、財務省の調製能力の欠如から予算の弾力的な再編成もできないようになっているため、景気は外需、日銀任せで、ちょっとしたことで景気低迷に拍車がかかるような社会になっている。また、デフレの要因のひとつに、海外からの日本の円に対する過度の期待がある以上、何らかの対策が必要であり、少なくともアメリカが超同盟国と言えるなら、アメリカと同規模の増刷を行うことは問題がないはずである。震災復興基金の原資として刷ったらいいだろう(刷れないのは財務省の怠惰)。
国際条約が批准されてから国内法が整備されるのに7年かかるのは、他のOECD諸国に比べると見劣りがする(外務省および条約関連省庁の怠惰)。自民党政権時に24時間以内の緊急援助をうたっていたのに、ニュージーランドの地震の際には、24時間以内の緊急援助が行えなかった(自民党、外務省の怠惰)。ニュージーランド政府に責任転嫁していたが、マスメディアの確認報道がなされた気配はない(マスコミの怠惰)。普段から冤罪かもしれない日本人被疑者への接見をサボタージュする割に、議員接待と官官接待に余念がないのもいかがなものかと思う。パスポートには邦人保護がうたわれている。民主主義国家では被疑者とて例外ではない。パスポートの発行手数料も徴収しておきながら、邦人保護という外務省員の義務すら渋るのは問題が多い(外務省の怠惰)。
飲料水や食物に対する放射性物質の国際的な規制基準が複数ある中、委員会の審議が後手に回った厚生労働省も怠惰だったと言える。
4年以上前から国会審議を通じて原子力発電所などの津波対策が問題にされた時も、東京電力、原子力安全保安院(経済産業省)、自民党政権は放置してきた。
<2011.4.17記>
※2011.4.7時点で「浄水場でも東京だけは20Bq/L未満なら不検出と表示するって、・・・都知事の策略か。一番影響の出ない空気中の放射線量だけ渋谷で公開って選挙対策かよ。まったく。」と書いたが、その後、多くの不満が都に寄せられていたためか、選挙後に(日によって試験の限界値が異なる奇妙な)浄水場の改訂検査結果が公表された。言い訳は「速報性を重視した」ためだそうである。速報性を重視したかったなら、速報値と確定値という形式で2回公表すればいいだけの話になる。つまり、この言い草自体が東京都民に情報を隠蔽し、侮辱する意思があったことを意味している。更にこの改訂値が不可解なのは、ある日のヨウ素131を除くと、不検出の変更がゼロであったことと、日によって検出限界値が異なる点である。新たに加わった浄水場の分析では、2Bq/Lの限界値(固定)となっている。これらを総合して勘案すると、今回の浄水場の検出結果の表から"不検出"のほとんどが、検出限界値より1だけ小さい値(Bq/L)の検出であったと捉えた方が良さそうだ。石原都理事は愚民思想が強く、元自民党だけあって必要最小限の情報を小出しにすればいいという戦略を取り続けてきた政治家であるから、「またしても」という印象しか起こらない。団塊世代以降の支持を集めて当選したということは、どうも日本を悪くしているのは団塊世代以降の人材らしい。
※自宅pH試薬液の水道水検査結果
2011年3月17日pH6.7、19日pH6.6、20日pH6.6、21日pH6.7、22日pH6.6、24日pH6.4、25日pH6.7、28日pH6.8、30日pH6.7、31日pH6.5、4月1日pH6.6、4月3日pH6.8、4月5日pH6.8、4月7日pH6.7、4月9日pH6.7、4月11日pH6.8、4月12日pH6.8、4月14日pH6.8、4月16日pH6.8、4月18日pH6.8。