時事批評

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悪質な情報操作をする新聞の事例

貞観地震(869年)の詳細な津波が分かったのは1年前だから対策が不十分になったという嘘を5月19日に報道した新聞記事

 さて原子力発電所の事故以降、一週後程度に原子力発電所の津波被害の状態になぜこれほどの格差があったのかを比較報道できないのは、マスメディアの質の低さを表していると批判した。それが5月19日という一か月も超過した後に、東京電力側の提灯記事に相当する内容が新聞一面を使った報道記事に当てたアホな新聞会社が存在する。これには驚きを禁じ得ない。毎日新聞という会社らしい。

 過去のテレビ、新聞報道から、津波被害に関しては学者の見解とは異なり、東北では老人の目撃証言を頼りに10M以上高く見積もって防潮堤が築かれた事例が報道されている。その地域では今回の震災による津波被害は小さく済んでいる所がほとんどである。

 貞観地震の津波が過去最大だったとしても、それに基づかなくても震災対策を取るべきことには変わりない。例えば、最近、日本全体でこれまで観測されていないような竜巻が観測されている。路外のバックアップ電源では、竜巻によりバックアップ電源が破壊され、その後の関東震災クラスの地震でも耐えられないことになる。これまで、東京電力をはじめ電力会社は、原子力発電所の安全性を訴える際に、「関東大震災クラスの地震が来てもメルトダウンすることはありません」という宣伝文句を、事あるごとにマスメディアで垂れ流してきた。それが嘘出鱈目であったことが今回証明されてしまったことになる。確かに今回の震災規模は大きいが、陸地で見れば関東大震災クラスの地震にすぎない。

 地震直後に、数か月前に原子力発電所のバックアップ電源が焼失した事故とかは一切報道されないのも恣意的なものを感じてしまう。

 さらに言えば、万が一、東京電力との癒着やそれ以前の安全対策の怠りから国民の目をそらす自己保全のため、官僚が「管直人が海水の注水中止を指示した」とリークし、それにより実際に55分注水されなかったと仮定してみても、それ以前に、安全マニュアルにしたがって行われなければならなかったベントが4時間以上遅れたことより、55分の注水中止が重大事象とは思われない。この注水関係の質問に使われた国会の審議時間は結構長かった。東京電力が当初の説明を逆転させ、現場では注水停止したとの事実はなかったと報道した後、野党自民党はこの件について、きちんとした対応は取らなくなった。こうした下らない国会の空転に、自民党と民主党がともに役立たなかったことを見るにつけても、今回の震災の多くは、震災以前の東京電力、官僚、自民党政治の人災のたまものと思う。

 直接的に震災と関係ない予算削減を担当している蓮舫に、農業関連の予算で難癖をつける自民党議員の質問も無駄な審議に思える。本当に必要なのは、震災に関わる特別立法であろう。常時無駄な予算を付けておけば、震災に対応できたから、自民党時代の無駄な予算は意味があったのだと主張しているようなもんである。こんな政党が日本の政治に返り咲いてもいいことはなさそうだ。みんなの党でも大して変わらないはずだ。あの政党が変なのは、人気取りにつながる議員がいる一方で、その議員が主張する政策(Hiv患者救済など)が党の要綱?なんだっけ特別な言い方をしてたけれどもいずれにせよ、それ(小さい政府)に反している議員がほとんどであるためだ。顔ぶれを見れば、自民党、民主党以上にばらばらな集団である。

 また与野党合意でできた震災復興基本法がまた低質である。復興庁なるものを創設するらしい。民主党の党要綱に反する内容だし、復興庁の事務予算で復興の予算の3割程度が無駄に国レベルの役人で消失する恐れがある。こういう場合は方法がいくつかあるので書いておこう。まず基金を国家予算で設立する。いわゆる復興庁のような役所は作らない。地方自治体ごと壊滅した地域には地域リーダーに相当する人が生き残っていたら、その地区の行政の要職に国家が臨時に直接雇用し、基金から復興に振り当てられた予算の執行は現地政府に任せる一方で、その会計監査をその地域の市民グループに委託するという方法を取る。これでも無駄が出るなら、それはその地域の行政力と諦める。この地域の行政力のなさは地域の復興の遅れとなることから、監視が甘くなる恐れはあまりない。

 また、NHKで中国では役人の性質を利用して州政府に復興支援の競争をさせたと報じた。霞が関の高慢な役人が、日本より一人当りGDPで劣る国の政策を受け入れる度量があるとも思えないが、良いとされるものは何でも試すべきだろう。そういう意味では消費者庁など作ったのは完全な失敗で、自殺者や貧困の削減のために国民生活庁を作るべきだったと思う。いまだに規制緩和の貧困救済の分野で、専門家が制度を検討するって、政府も自民党も自殺者の削減と貧困対策はやる気がまったく見られないねぇ。国力を落とす結果になるって言うのに。自分の身の安全に汲々とする小役人や小金持ち、血の涙もない大金持ちが大半になってしまったんですかね、この国は。唯一の救いは、復興支援に携わっている自営業者などの心意気(漁船130隻プレゼントなど)です。それらに比べ、何と大企業の支援(何としても企業名の入ったおにぎりを届けたいなど)の浅ましいことか。

 ついでに書いておくと、原子力行政では、原子力安全・保安院の他、原子力安全委員会があり、日本の場合は、安全委員会がより原子力利用に慎重であるべき立場になければならない。しかし、その安全委員会の委員長が斑目春樹であり、被爆者に無礼な発言をしたりと、原子力反対派からはリコールを求められるような人物である。3月25日毎日新聞夕刊では「(農作物などの)風評被害を防ぐためにも、専門知識のある安全委員が前面に出てちゃんと説明すべきだ」という松田美夜子(「原子力を考える市民活動」の主催者)の発言を載せ、安全委員会に関して、とんちんかんな記事を書いている。wikipediaによれば、松田美夜子は家電リサイクル法に関わった原子力には専門的知識を持たない主婦でありながら、政府の原子力委員をしている変わり者らしく、こうした人物を使って、所在すら不明の「原子力を考える市民活動」の主催者として記事を書き、原子力行政の安全委員会の役割も出鱈目にしてしまうのは、悪質な情報操作に相当する。

 ちなみに2010年12月26日毎日新聞朝刊、つまり原子力事故以前には、「黒い雨」影響深刻という題で、放射線の健康被害の記事があり、病気との関連 証明難しく、患者側は原爆症認定基準の緩和を求めているというまともな記事を書いていたこともある。事故後に同程度の内容を書けないあたりが毎日新聞の三流ぶりを遺憾なく発揮していると言える。

<2011.6.24記>

 2011.3.12のベントが失敗した可能性が高いと2011.6.24になって報道してどうすんのかね。メモ代わりに書いておこう。2008.12の安全弁検査ミスの毎日の記事も今更だし、事故と関係ないじゃん。わざわざ載せたのは、2011.6.24の記事への布石ならけしからんですな。それよりも電源関係の記事を載せるべきなのに。

<2011.7.12追記>

Kazari