風評被害?
まず言葉をきちんと定義しよう。
やたらこの言葉で被害の一部を、東京電力の責任から除外しようとする勢力が存在してウンザリする。利害関係者を洗い出してみると、広告主であるからマスメディア、株価に跳ね返るから株主、できるだけ企業責任を逃れたい経団連といった連中である。これらの結束力の強い大連合に比べれば、消費者や農家の立場など非常に弱いものである。
話を戻して、言葉の定義を見ていこう。広辞苑などの辞書に厳格な定義が載っているものと期待して調べてみたが、さにあらず。まともな定義が「風評」ですら掲載されていない。しかも学研国語辞典、学研漢和辞典、漢字源などに広げてもだめで、「うわさ」くらいの説明しか載っていない。そうであるなら、厳密に定義してしまうより他、しょうがない。風評被害という場合、風評にあたる部分は科学的根拠があってはならない。デマの類に限定しないといけないだろう。科学的根拠がある噂によってもたらされた被害なら、それは損害保障すべき事柄と考えれるためである。
そこで今回の原子力発電所事故による風評被害とは何かを考えてみよう。ほとんどないことに気付きませんか?
ところが、事故を起こした当事者たる東京電力の最初の被害見積りは、1.2兆円と5月21日に報じられ、その後、積算でも20兆円くらいの数字が出ているだけです。明らかに過小評価です。まず東京電力の姿勢を見てみると、原子力事故による農作物の保障範囲は出荷停止した産品以外は風評被害で、風評被害による損害は補償しないと傲慢にも東京電力は主張しています。
さてここで問題。ここに人間の生活には全く役に立たない汚染物質が入っている事故を起こした原子力発電所の周辺県で採れた人参499(Bq/Kg)とまったく被害にあっていない鹿児島県産の人参が同じ価格で売っています。仮に、鹿児島県産だけ売れて、安全基準内の499(Bq/Kg)の人参が売れ残ったとしてもこれを風評被害といえるでしょうか?
経済学の答えは簡単です。全部売れ残った時は消費者の市場評価額がゼロ円であり、その原因を作った東京電力が、鹿児島県産と同じ価格もしくは、昨年の市場価格にインフレ率を掛け合わせた価格で買い取り責任があるということです。一部売れ残りでも保障すべきというのは同じです。価格低下部分も保障すべきなのは同じです。すべて東京電力が補償するべき範囲内の事象です。今後100年、東京電力が補償救済だけの企業になり下がってもこの事実は曲げられません。消費者の市場評価額を風評だという事自体が傲慢なのです。市場評価が間違っていると言うのなら、全品、東京電力が基準値以内の汚染作物を昨年度の市場卸値で引き取って、東京電力が安全を宣伝しながら販売したらよろしい。東京電力に一方的に汚染された作物を、農家などが自主努力で去年と同じ市場価格で販売しなければならない義務などないのです。いずれのやり方を取るにせよ、農家や漁業関係者や畜産家に農作物の正当な代金を払うのは、東京電力の損害賠償責任の範囲内になります。しかし安全基準を策定した後は、責任は政府にあると東京電力が主張した場合、その方便は成り立つかもしれません。
しかし改めて真面目に考えると、放射能汚染に関しては、長期保存に役立つ添加物と同等に扱うこと自体が無意味ということが分からないのは政府あるいは政府に雇われの専門家が愚鈍か国民の命を軽視しているからなのでしょう。
民主党議員の中には、テレビで専門家の間でも意見が違っていると発言している阿呆がいましたが、安全基準とは専門家の間で意見の相違がある中、策定する性質の規準なのだから、意見が違うことを責任回避の理由にしてはいけません。割れているのだから、一番低い水準に定めるとすれば、安全と言えてしまうことを忘れているようです。少しでも含有されていないことが必要という主張者がいたとしても、測定限界値を安全基準とするタイ国のような安全基準も、政府がその気になれば策定できます。だから、国会議員が立法権を行使できるにもかかわらず、学者に責任転嫁しても意味がないわけだし、政治主導の党是がある民主党であるなら猶更、自分の決めた政府の安全規準に責任を持たなければいけないわけです。なぜチェルノブイリ事故では370(Bq/Kg)が最大の許容量なのに、日本では500(Bq/Kg)なのか、その科学的根拠は何かという説明責任は政府にあります。
それから、農作物以外の汚染土壌の回収や除染の責任も第一義的に東京電力にあります。政府は安全基準などの策定を通じて、一時的に倒産させずに長期保障会社とするために、一部一時期肩代わりすることは許されると思いますが、政府にもたらせれた損害額は税金ではなく、きっちり東京電力に払ってもらう必要があります。そのための仕組みは、被害の範囲が数千兆円に及ぶであろうため、それはチッソなどの比ではないので、法的にも対策が必要になりますが、まともな対策が復興の基本法にもられていません。まぁ自民党や役人が反対するのだろうけれども、本質的には通さないといけない。菅直人が無能だと思うのは、こうした激しい抵抗を伴うが社会的な最善の方策を無視する一方で、次世代のエネルギー何とかみたいなくだらん法案に執着する点にも表れています。菅直人は成し遂げたい政策もないのにただ首相になりたくて立候補し、長く椅子に座りたかっただけの歴史上もっとも愚劣な首相として今後数百年語り継がれかねない現状です。明日にでも辞任して欲しい。
さらに、菅直人内閣は愚かにも、土砂災害の度に放射能汚染物質が垂れ流されても構わないという処理方式を決定してしまいました。下水道から出た放射性汚染物質に関して産廃処理すれば、将来世代に負担を残す結果にしかならないけれども、現状ではベストの方法なのだそうです。東京電力の敷地内に保管して、保管期間内に除染技術を極めて対処し、将来の他国の事故の際に、その技術を売れば採算が見込めそうな気がしますが、自前の技術で対処する気が東京電力という会社にはないんでしょう。そんな技術すら持ってない会社に原子力発電を行う権利って、あってはならないと思うんだが。産廃処理は今後の天災の際に、日本国中に被害を拡散される行為であり、地下水の汚染にもつながるだけに、この方針が菅直人内閣によって決められたことは日本の歴史上の大きな汚点となるでしょう。
こうした下水処理施設から出た汚染物質も回収、除染の作業は東京電力の責任であります。法律がないというなら、現在の製造物責任法を緩用すればいいだけの話ですが、今の政府にはその程度の知能すら持った政治家がいないということなのでしょう。
民主党の大勝に危惧したマスメディアが、ねじれ国会を望んで、さんざん民主党をこき下ろした情報操作の結果、見事にねじれ国会が実現し、法案が通らなくなり、自殺者3万人台から減らず、景気も回復せず、党首選以前から小沢よりも明らかに無能だった菅直人と仙谷の肩を持ち、よりよい候補者と盛んに情報操作した挙句、期待通り菅直人政権が誕生した。そのテレビでアナウンサー風情が、今度は菅直人の退陣時期しか報道できないと嘆いている。「テレビ報道とは何と身勝手で、傲慢であることか」と嘆きたいのは国民であって、メガネかけた老年のアナウンサー風情に言う資格はないぜよ。
東京電力の損害賠償範囲は、この他にも、被災地とは関係ない東京などの外国人観光客激減に対する補償も含みます。避難地域の保障も。被曝健康被害に対する補償、その過程で生じた国民保険で賄われた代金なども含まれます。
観光業に関しては原子力事故以前の実績の1割にも渡航者数が満たないわけで、外国人相手の観光業の売上も1割程度に落ち込んだものと思われます。現時点でもまったく回復していません。他にも見落としている項目があるかもしれませんが、東京電力の見積もりが著しく過小評価で、それは1,2桁のオーダーに及ぶであろうことは疑いの余地はありません。
さてこうした補償問題をややこしくする要因をいくつか書いておきます。安全基準値内でない製品を垂れ流した農家がいると、その農家による風評被害だと東京電力に主張される可能性が高まります。市場に出さず、東京電力に買い取らせましょう。しかし、基準値を超える茶葉をフランスに輸出した静岡県にしても、よりによってフランスに輸出しなくてもと思うんだがなぁ。
最後にマスメディアが検証せずに報道するのでもうひとつだけ苦言をしておこう。下水処理施設の高濃度汚染ぶりは、本当に地上への降下物がアスファルトから下水に流れ込んだだけといえる科学的根拠はあるのか?あるというなら推計例を報道しなさい。
空気中には漏れていないと検証なく報じた機関も多いが、どっかのテレビ局で、大田区の下水処理の際に出たスラグ処理施設で、ある議員は放射線量を計測していたのを映像で流していた。その映像では煙突付近でかなり値が高かったぞ。そして、その報道では、排気中に含まれる放射性物質の測定は検討中だそうで、計測していないのに漏れていないと主張していたことが報じられていた。だから政府を含め、情報の出し方が悪すぎるんだよ。ちゃんと科学的根拠を示しながら、データ開示するよう、ちゃんと報道して欲しいもんだ。
ちなみに放射線というのは空気中1.5mも進めば500倍程度は弱まるなんて書いてあるものもある。そうであるならば、煙突近辺で値が下がらないのは測定器の問題の可能性もゼロではないだろうが、変なのである。
<2011.6.24記>
最近になっても、NHKと民放が無責任な政府系の御用専門家を使って、市場に基準値以上の作物は出ていないと盛んに情報操作しているが、そもそも適当にサンプル調査しかしていないのになぜそんな事が補償できるのだろう。食品というのは別にすべて農協通して流通しているわけではない。やろうと思えば出来る簡易な方式(ガイガーカウンタなど)による全数調査も実施していないことが既に分かっている。契約農家制度にしても直接販売店に行くので、流通過程を経ていない。それらもすべて調査対象として調べていると報道した機関は今の所ひとつも知らない。NHKでも、政府系専門家ですら農家の自家消費だけ例外にしていたが、そんなもんなら、なぜ茶葉の暫定基準が決定された後に輸出されたりしているのだ?政府系の専門家には説明責任があるはずだ。
長崎病院の臨床医はかなり偏った考えをもった人だが、あんな人物が原爆医療に携わっていると思うと本当に嫌になる。いったい政府からいったいどれくらい機密費をもらうとああいう変な思想に染まるのかなぁ。放射線量は正確に測れると主張していたけど、それは一時点の話でしょう。仮に患者が全面的に協力するにせよ、一時点の線量計測からそこから過去に被爆した線量の合計がすべて計測できるわけではないのだから、合計の被爆した放射線量は、理論によって推計しているだけでしょう。それで正確といえる意味が分からない。
統計を用いて臨床的に病因とはっきりしたことが言えるためには、たいてい逆に病因となる因果関係(ストロンチウム90によって骨髄腫や白血病になる)を事前に知っている必要がある。そうでないと統計分析の計量対象にすらなっていないからほぼ分からない。統計分析の専門的な知識を使えば、ひとつの病気に多数の病因がある場合に、そのひとつだけが病因とするためには、かなり高い数値にしないと言えない事は分かりきったことだ。複数要因をすべて操作変数などで制御しない限り、それらの要因によって曖昧になるからだ。
そういった事を悪用して、臨床的には100mSv以下は誤差の範囲みたいないい加減な誇大宣伝する専門家は万死に値するのではないだろうか。すべての病気のメカニズムが分かっている上で、他の病因をすべて操作変数などで制御したら、放射性物質による内部被爆は、もっと低い数値で統計的に癌リスク増大要因になる事が証明できるだろう。実際にはガンのメカニズムも十全に分かっているわけではない。その程度の事でこれほど間違ったバイアスをかける医療専門家はあの長崎原爆病院の医者以外にあまり知らない。
ちなみにこのテレビを見てひとつ補償範囲で抜け落とした物が判明したので追記しておきます。東京電力の補償範囲に農家の自家消費も含まれます。農家の皆さん、きっちり請求しましょう。
報道によれば、政府が下水処理後の焼却灰からの肥料を既に販売しているという。どこまで汚染を拡大させれば気が済むのだろう。政府も東京電力も回収することを真面目に考えなさい。
<2011.7.2記>
3.11以後の東電OBの発言をいくつか聞いた後だと、これまで私自身が想定したよりも東電の賠償範囲を拡大すべきと思う。まず司法の力を借りて、過去の東電、行政、自民党議員の不正を暴き、各々の担当者や国会議員の年金から賠償金を捻出するべきだろう。その後、いくつも報道になっているが、放射性物質の除染は東電の責任で行うべきものだ。議員立法で今更法案にするっていうのが情けないなぁ。客観的に見ても、福島第一原子力発電所の第一号は地震の段階で破壊されていたと言われているのだから、この部分は東電のメンテ不足であろう。
その後、稲藁、落ち葉を使った腐葉土は、報道になったが、食用に限らない竹、竹炭については議論されている様子もない。脱臭剤や活性炭がセシウム入りで、こんなもんが上水道施設に回ったら大変なことになる。ちゃんと禁止もしくは政府管理の下に、伐採管理しなければならない。
今回の震災を通じて、本当に日本の中央官僚の質が低下しているのだと知ることになった。残念である。TPPと反する食品の暫定水準を決定した後で、首相の了承済みだったと官僚が情報操作したり、そもそも震災とTPPは連動する要素などほとんどないのに、ドタバタしている。週刊文春は、官僚のリークを検証なく報じる官僚の天下り雑誌だと今回分かったが、一番笑ったのは、官僚がアメリカ軍部のデータを菅直人が無視したのは血も涙もないという内容のものだ。そもそも気象庁が放射性物質の伝播を解析したデータをもとに、防衛省が独自に対策をとるべきなのだ。なぜアメリカが先に解析しているのだ。恥を知れ官僚よ。地下鉄サリン事件を契機に防衛省には科学特殊部隊もいるし、テロ対策特別措置法の時に、当然、原子力発電所のテロ対策を講じていなければならない。そうした措置を取っていれば、今回、アメリカ駐留軍に情報分析で遅れを取るなどあってはならないことだ。そうした基本的な視点を無視して、アメリカがデータくれたのに、菅直人が無視したって。リークした内容の信憑性もないが、もし内閣府か財務省のバカ官僚のリークが実際にあったのなら、そういう公務員には退職してもらった方がいいのではないだろうか。
原子力保安院が放射性物質に汚染された水を海に放水するのに、海外に報じるのを忘れたらしい。今回の原子力発電所事故において、日本の締結している条約を無視した官僚の行動は実に多い。普段の勉強不足の賜物なのだが、もっとマスメディアもきちんと報道しなさい。自民党の政治家にも条約を無視した発言が多いのは、国会中継を見ていて気付かないといけないことだ。
<2011.8.18追記>