時事批評

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曲がり角の原子力報道

小物政治家が官僚へ指示できない

 国会対策委員長になる以前はテレビで勇ましいことを言っていたが、掌を返したように行動しはじめた安住が財務大臣に就任した。増税一直線しかも、「復興財源は、現役世代が負担すべき」と言い、「所得税・法人税」の定率増税を目指すという。なぜ、現役だけの責任なのだ。原子力事故を除いた震災だけ見ても、65歳以上の被災者を現役世代が負担すべきと言われると疑問である。更に、被災地域の現役世代が負担すべきというのも論理的とも倫理的とも言えない。消費税よりましかもというのなら分かるが、それ以上の論理性も倫理性もまったくない。所得税にするなら、罹災者を除く必要がある。行政コストがまた高くつきそうだ。

 世代間不公平ということでは、経済学者や他の学者でもかなり合意があり、現在、65歳以上の世代は年金などで得をしている世代である。被災したからと言って、更に現役が負担するべきという理屈はよく分からない。将来負担に回すべきではないという議論と現役世代でという話は同一ではない。安住はかなりアホなのでは。

 それに、今回の原子力事故と事故にまったく関係しない震災復興費用を厳密に区別していくことは本当にできるのか。できないなら、原子力事故の責任は全額まで及ばないにせよ、過去の行政や政治に負わせないと、これまで以上に無責任な行政と政治が繰り返されるという事にお墨付きを与えることになりかねない。安住淳は物事をきちんと理解して発言してるのかなぁ。最近、財務省の用意した原稿をただ読むだけの民主党の議員が増殖していて気持ちが悪い。野田自身がそうだからかなぁ。

 復興財源だけで言えば、将来世代に負担を残さないために、相続税の定率増税でも問題はまったくない。

 経済問題にも法律にも明るいとは思えない安住が財務大臣になった事は、日本の景気の先行きを危うくしただけでなく、責任の所在すら不明にする危険が高いと判明した事例になるのではないだろうか。

 岡田も外務大臣の時は、情報公開こそが民主主義を促進するという政治信条を貫けたといえるだろうか。勝手に処分された機密文書に、玉虫色の報告書、その報告書を大臣が是認したのでは政治信条を貫けなかったといえるのではなかろうか。この間、官僚の不法行為を取り締まる法律の欠如、官僚の国民に対する背任行為に大臣として何ができたのだろうか。問題の本質は官僚の落ち度にある。その事をマスコミはきちんと新聞報道しただろうか。

 民主党政権になって、もうひとつはっきりしたことは、政治が機能しないほど国家公務員の権力が肥大していて、それがはっきりと官民癒着状態になって昇華しているため、すでにマスコミの大半が官民癒着の批判能力を失っていることである。特に、今回の原子力事故報道を通じて、その事がかなり明白になった。

日本のマスコミは「二の丸」から「本丸」へ批判できる能力があるのか

 今さらに、マスコミは前首相の言い分を新聞に掲載しているが、そもそも震災対応が後手後手だったのは、菅直人の能力の低さもさることながら、野党自民党が被災民を無視して党利党略に走ったのも、大きな原因である。菅直人はもし実現したい政策があったなら、より早い時期に首相会見を行い、首相の命令にすら従わない行政という構図があったのなら正確に国民に情報提供して、国民に直接訴えるという手法で、マスコミにも協力を要請すべきだったろう。民主党政権の間に、これまで貰えた機密費をもらえなくなった民間のマスコミが批判に終始したというのなら、国営放送のNHKを使ってキャンペーンすれば良かっただろう。

 自民党でもあったかもしれないが、民主党政権で際立っているのは、首相の足を官房長官が引っ張る事が続いたことである。鳩山の時の平野、菅の時の仙谷、ともにとてもひどかった。

 しかしそうは言ってもはじめて政権を取った民主党に対して、公正を期すなら、野党とともに両方とも批判するべきだ。マスゴミは、これまで自民党の小渕政権が野党の案を丸呑みした時などには、野党の党利党略を非難してきた。今度は野党自民党の党利党略を無視して、与党の首相のみを非難するキャンペーンに終始したのは問題が多い。この二例に違いがあるなら、マスゴミに何が違うのか説明してもらいたいものだ。こうしたマスゴミのご都合主義は、官庁からもたらされるリーク情報を垂れ流す記者クラブ制度自体も一因かもしれないが、そうであるなら、マスゴミ自体が記者クラブ制度の廃止に踏み切り、国民にとって真に良質の情報を提供できる体制を築くべきだろう。そんな能力があればだが。

 原子力事故対応に関しては、指導力の欠如というよりは、野党と結託した経済産業省や行政の必要な抵抗がすさまじかっただけではないのかと改めて思う。ようやく今更のごとく、東京新聞が9.7に「二の丸」くらいまでの批判を書くようになった。ここでお茶を濁すようなら、本気で民間企業、公益法人、官僚、政治との間の腐敗を暴く意思はないものと見ていいだろう。今後、「本丸」まで批判が及ぶかが見ものである。

※ところどころ、マスゴミになってますが、わざとです。

<2011.9.7>

Kazari