TPPで出鱈目なキャンペーンを始めたマスメディア
「米韓FTPに乗り遅れないためにTPPを」という典型的なデマ
そもそも今回のTPPのように環太平洋の多国間協定が進まないから、アメリカは二国間協定を進めている。だから、「米韓FTPに乗り遅れないために、日韓FTPを」というのなら論理的にも正しいが、「米韓FTP(二国間協定)に乗り遅れないためにTPP(多国間協定)を」というのはデマに過ぎない。マニュフェスト提唱の何某とか、日本総研のXXとかがこのような愚かな主張をするのは笑止千万だ。
2011.10.16日曜のテレビ番組で上記のようなデマが盛んに繰り返された。亀井という政治家を一斉砲撃するような形式で、経団連に売り込みたい見え見えの専門家の馬鹿馬鹿しさが目立った番組である。この場で、しかし、亀井は生放送で笑いながらすごいことを言ってのけた。小泉純一郎がアメリカで口約束したら、アメリカのために郵政民営化をしたことを暴露した。アメリカ性善説にたっても、日本にいい事などないとも明言した。私も、防衛省の高級官僚や経済学者にアメリカ性善説に基づく、信奉者(論理が通用しないから宗教家にしか見えない)が多いのを目の当たりにしてきたから、亀井の気持ちはよく分かる。この日の討論相手3人も全く同様の宗教家で唖然としてしまった。こういう輩は平然とオフレコで「アメリカは外交軍事政策で間違いを犯したことがない」とかノイローゼ患者みたいな事を口にするので性質が悪い。
亀井も、あんな番組に出されては時間の無駄だとさぞかし空しい思いをしたことだろう。本当に日本には国益を守れる人間が少なくなった。
<2011.10.21記>
フジテレビが、TPPには工業製品に貿易利益があるというデマを流布中
普通の貿易を研究している経済学者のほとんどが、日本・メキシコ経済連携協定(2004年)以降は、日本の工業製品に関しては、今後のFTP参加による貿易利益はないということで意見がほぼ一致している(メキシコはNAFTA(北米自由貿易協定1994年)でアメリカ市場とつながっている)。TPPであっても貿易利益はない。すでに関税率が十分に低い事、主要な海外市場に自由貿易協定を通じてアクセスが可能になっていること、為替レートの変動の方が影響が大きいことが理由である。
TPPの国際会議で海外旅行したいだけの経済産業省のぼんくら官僚を使って、デマを流すのはやめるべきだ。それからアメリカが参加している国際会議で、日本の国益を損ねることなしに、経済産業省が日本の国益だけをたったひとつでも増やせた事例があるというのなら、公表したらいいだろう。私は一つも知らない。逆に交渉に失敗して国益を売った事例なら、政治家ならびに官僚に起因させることができるものを山ほど知っている。アメリカとの外交交渉に屈して国際条約に違反する形でアメリカだけを優遇した鶏生肉輸入の事例もある。
そもそも、今回のTPP加盟国に予定されるシンガポールとマレーシアとブルネイとベトナムとは、すでにASEAN地域の自由貿易協定(AFTA)を通じて協定を結んでおり、更にこのASEANが域外のオーストラリア・ニュージーランドとも「AANZFTA」(ASEAN−オーストラリア・ニュージーランドFTA)を2009年2月27日に署名しているから、オーストラリア・ニュージーランドに対しても、更なる貿易利益は存在しようがない。現在、日本の多国籍企業の大半が何らかの形でメキシコ現地支社を持っているから、米韓FTPが完成して関税率がゼロになった10年後であっても、アメリカ市場に対するアクセスの差は大きなものではない。
内閣府の試算ですら、10年間でGDP2.4〜3.2兆円の増加なので、日本の利益はゼロに近い。1年に換算すると0.24〜0.32 兆円で、日本のGDP規模の540兆円(2010年)の0.044〜0.059%に過ぎない。過大に見積もった内閣府の試算ですら、日本の経済成長率を押し上げる効果が、0.04〜0.06%しかないのである。これが実態である。経団連会長の阿呆が、TPP参加表明を理由なく推奨した所で意味はない。腐敗した経団連の利益としては、アメリカ企業との間で、日米民間経営者の役員の渡りが可能なのではと夢でも見てるからだろう。しかし、予測数値の上でも、理屈の上でも、自由貿易協定の現状からも不可能なことを可能かのように嘘をつくのは、やめるべきだ。
亀井の意図とは違うかもしれないが、フジの笠井信輔アナのやっていることは存在しない物を存在すると言って、お化けを作り出す行為である。
<2011.10.29追記>
伊藤元重がアメリカの国益のためにTPP推進
さすがに貿易論の学者だから、貿易利益があるとは一言も言わなかった。農業関係者は一人だけ、アメリカが買収できたのはたった一人らしい。日本の国益についても一言も発しなかった。彼は言葉巧みに(まったく)「開国しないで発展した国はない」と言った。
その言葉には続きがあり、「開国しすぎて破綻した国は山ほどある」ということを言わなければ真実にはならない。詭弁を弄したのだ。記憶に新しい所で言えば、住宅の不動産市場を規制緩和しすぎて、現在、景気低迷にあえいでいるアメリカ、金融規制を整備する前に海外からの投資市場を開放しすぎて、アジア通貨危機(1997年)がおきたことなどを思い起こせばいいだろう。伊藤元重の老い先が短く、短期的にアメリカからお金をもらえれば日本がどうなってもいいと考えているのか知らんが、出鱈目を言うのはやめて欲しいものだ。こういう輩はアメリカ国籍を取得してとっとと日本から出て行ってほしいものである。
TPPは自由貿易より重い経済統合を目指した枠組みであり、すでにアメリカ経済が低迷しており、自由貿易の推進としてTPPを利用することすら読み取れない状態になっている。現在のアメリカは、アメリカ以外の外国には政府部門の市場開放を強力に推し進めながら、自国の政府部門の購入品にバイ・アメリカン条項を盛るなど、アメリカ自身は既に閉じてしまった。したがって、伊藤元重の論理に従えば、「アメリカは閉じたから発展しない国」である。なぜ、名ばかりのTPPで、一方的開国だけを迫るであろう見え見えのアメリカに、しかも大統領選挙で負けるかも知れないアメリカ民主党政権に対して、日本の国益を提供しなければならないのか。その見返りがゼロな以上、交渉に参加すること自体が意味がないのだ。参加して破断すれば、日本が壊したと喧伝されて、余計窮地に陥るだけである。
書評に書いたが、アメリカはブッシュ政権の時に農業補助金を減らすと世界に公言しておきながら、2倍に増やしたと、アメリカのノーベル経済学者のStiglitzが書いている。隠された農業補助金として、農業用水などの問題もある。そもそもアメリカとは農業分野で公正な競争を期待できないのである。肉類も輸入に依存しているのだから、もしアメリカで今後、大規模な気象変動の結果、小麦などの大不作がおこり輸出禁止令が発動され、その範囲が肉類に及んだ場合、日本は必要なカロリー摂取を満たせずに、貧困層を中心に餓死者が出かねない。食糧安全保障とはそういうものだ。そうしたことに対する対策もなく、国を無原則に開いてもいいことはない。
もし農業の改革が必要だとしても、それに外圧がなければいけないとしても、そのための交渉国は、現状ならタイとの二国間FTPが一番良い部類である。いい加減にデマを流すのは止めた方がいい。
<2011.10.30追記>
みのもんたも無責任にTPP推進を開始
前原は頭がおかしいので、アメリカが京都議定書から抜けた事例で、参加したからと言って交渉から抜けることもあると抜かしたそうだ。アメリカが強力に推進を迫っている国際会議で、日本が国際会議を抜けた過去事例を出さないと意味がないだろう。それを報道するマスメディアもマスメディアである。みのもんたも悪しき大衆操作の権化のような輩だが、ありもしないTPPによる工業製品の利益を宣伝している。そもそも、GATTなどほとんどの国が参加している国際会議と、たったの9か国の今回のTPPを同列に論じることは非常識である。こういう非常識な発言をした民主党議員:前原誠司(松下政経塾)や福山哲郎(松下政経塾)、原子力族議員と言われる平野博文や細野豪志、円高容認発言をする野田首相(松下政経塾)など落選させた方が良い。しかし、松下政経塾出身の政治家は自民党、民主党ともに低能な輩が多い。
日本が自主的に国際会議を抜けた事例などない。第二次大戦前の更なる国難に陥れた国連脱退くらいしかないから、これを脅迫理由に国民に無理強いするつもりなのかなぁ。過去同じ手を自民党が使いました。
このままでは、アメリカに日本の医療・年金制度を破壊されてしまう上に、日本の穀物市場にも投機市場の圧力が必要以上に加わり、いつでも経済戦争を仕掛けられてしまうだろう。いい加減、アメリカの危うい経済政策を止めさせるために、EUと中国を巻き込んで交渉のテーブルにつかせた方がいい。EUと日本と中国で、協調増税を迫るべきだろう。為替レートが変動しない一斉増刷で、財政赤字を一度全世界でちゃらにすることも真面目に考えないと、世界経済は持たないかもしれない。もっとも一斉増刷のコンディショナリー条件は、各国の財政、各国企業にとって厳しいものにならざるを得ない。今よりも明瞭会計で、アルバイトに至るまできちんと生活できる労働賃金を支払う企業統治にしていく必要があるし、不景気時の減税の禁止と財政拡大、好景気時の財政縮小、好景気時に財政赤字縮小を不十分にし過ぎる減税の禁止などを盛る必要があるだろう。
<2011.11.2追記>