時事批評

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耐久消費財の価格

家電品の耐用年数の低下は何を意味しているのか

 最近の耐久消費財は、多様な価格帯の製品が存在するようになっている。特に家電品は実にバラエティに富んでいるが、昔はそれほど多くの価格帯はなかったように思う。選択肢が増えること自体は良いことであるが、耐久性が落ちていることは一概に判断できない。

 その他、耐久性に関わる事柄で、近年、変化したことは多岐にわたる。メーカ保証はほぼ1年に低下している。昔は3年程度の製品が多かった。PL法はだいたい10年を想定しているが、メーカー側の補修品の維持は、販売終了から7年となっている。だいたい1年程度で総入れ替えになる製品が多いから、新製品を発売同時に買っても補修品が8年で手に入らなくなるのが妥当か微妙な気もする。

 技術進歩が著しい分野では、消費者にとっても、製品の価値自体が急速に下がるから、そのような製品群の耐用年数が、昔の冷蔵庫のように20年持たなくても、さほど問題がない。冷蔵庫と言えども、断熱材の有無や冷気循環用のファンの有無で、消費電力に大きな差があるから、電気代など維持管理費を含めて考えると、耐用年数前でも買い替えが適当な場合がある。

 冷蔵庫に関しては、100L以下のものは断熱剤も十分でなく、400Lクラスのものと消費電力が同じ製品はざらにある。もし単身者が結婚して数年同居できる見込みがあるなら、両者の100Lクラスを2台持ち寄るより、2台処分して、400Lクラスの冷蔵庫にした方が、維持管理費を考えると安上がりになることもあり得る。賢く買うにも、考慮すべき案件は比較的多い。

 故障した家電品を分解してみて思うことは、壊れやすく作られるようになったという事である。特に、低価格帯のビデオデッキなどはひどいと感じるものがある。例えば、頻繁に使うビデオ開閉部に使うプラスチック歯車である。2万円程度のDVD付ビデオ録再生機(Sony)に、原価が1円違うとは思われないプラスチック歯車を、わざわざ壊れやすい歯と軸の間に空間があるものを利用した製品を見た時にはさすがに呆れた。3年程度壊れるわけだ。これって本当に1円の利益のためにここまでする必要はないはずだ。はっきり言って、すべての消費者にとって、1円値上げしてくれた方がいい場合ではないかと感じた。PL法を盾に無料で直させてもいいのだが、面倒で捨ててしまった。Sony製品は今後買わないと思う。最近のSony製品にいいイメージはない。PCではFDDを作る技術しかなかったし、そのFDDもNECに比べ壊れやすい印象しか残っていない。家電に関してはWalkman以外、いい印象を持てた製品がない。このWalkmanにしても、低価格帯のものは、ヘッドホンのジャック部分が非常に脆弱に壊れやすくできていて、たいていその部分が壊れるのには閉口した。はんだ付けで直るような製品を出荷するのはどうかと思う。

 しかし、耐久消費財の製品判断はとても難しい。最初に買ったデジカメが100万画素レベルのもので、それが3年後に壊れても、同じ価格で300万画素レベルになっていれば、さほど痛みは感じないかもしれない。購入価格にもよるし、消費者の製品への嗜好に依存する話だから評価は難しい。自分の場合は、500万画素になって1台、それ以降は1万円以下のものしか買わないことにしたが、800万画素のものを1台、1000万画素になって1台と、デジカメに関しては、製品故障前にだいたい買い替えになっている。今後は、これ以上画素数が増えても嬉しくないから、壊れてから買い替えに移行するが、どのような判断になるか予想もできない。予想できないから低価格になるのを待ってという対応になっている。デジカメは便利だ。軽いし、プリンタで印刷できる点にしても、画像データをDVD(当初はCD-R)などに保存できる点にしても優れている。しかし、ハードだけを見ると、割高な商品であることは間違いない。父が買ったPentaxの一眼レフ(たぶん30万円くらい)は、20年目にオーバーホール(3万円くらい)して以来、私が引き継いだが今でも現役である(40年くらい経過している)。その間に望遠レンズ2つ(各5万円くらい)と様々なフィルターレンズ(計10万円)くらいを費やしているが、それでも年換算すればたかが1万3750円である。だから、3年程度の耐用年数しかない有機ELパネルのデジカメ製品は、出荷していいものかも人によって判断は違うだろう。私は発売当初「詐欺では」と感じたけれど。

 Cannonの製品で気に入ることは滅多にないが、ImageFormulaは例外的にいい製品だ。こんなに給紙がまともなCannonの製品ははじめてである。職場プリンタでずいぶん泣かされたから、プリンタに関しては良いイメージが皆無なため、プリンタのメーカー優先順位は、今のところ、Epson、Hpの順にしている。購入前にかなり調べる方だから、あまり失敗したことはない。電話に関しては、All in one方式では、ほぼブラザーが独占しているが、私が取り扱った経験上では、故障率は極めて高い。1年程度で壊れてメンテに1.5万円かかると想定して買わないといけないとなると、他社製品の方が初期投資額は大きくなるが、割安かもしれない。

 だいたい製品から得られる予想満足度(1年間の金銭評価)を基準に、費用(=価格/予想耐用年数+年間維持管理費)が満足度を上回る場合に、製品調査をして購入を決定するようにしているが、正直、予想耐用年数がはずれることもあるし、ここの信頼性が落ちているから、あらかじめ満足度自体が低めに下方修正されている。現在の消費不況は、所得面が主要因であるのは間違いないが、好況期になっても、労働者の名目賃金が上昇してもすぐに耐久消費財の消費が回復しないないなら、耐用年数の低下も、上記のような過程を経て、消費回復の阻害要因となりうる。

家電品以外の耐久消費財

 自転車は20年以上使っている。タイヤ自体も前輪で2回、後輪で4-5回交換したが、30年目にしてペダルが壊れた。クランクとペダルの接合部分の一部破損と、ペダル部分の破損でペダルのベアリングボールが数個紛失した。さすがに漕ぎ難いので買い替えを検討している。Shimano製ながら、接合部がこの大きさのものは売っている様子にない。

 自転車にまつわる維持管理費では、中国製の製品の氾濫と円高の影響もあって、価格は低下した。しかし品質も低下した。例えば、昔は、タイヤに関しては5-7年持つ製品(5千円前後?)がほとんどだったが、今は1-3年に低下している(2千円)。製品価格は安くなったが、耐用年数で評価すると、一円も得している感覚がない。チューブは更にひどい印象である。チューブのゴムの劣化がとても早く、耐用年数評価の価格は上がっていると感じるほどだ。そうはいっても、これが価格指数になるときは下がっていることになるんだろうなぁ。耐久性のある消費財は、このように価格指数が適正か非常に判断しにくい。

<2011.11.30>

 書き方が不十分だった。Shimano製はさすがである。30年間、チェーン、ギアがおかしくなることは全くなかった。ペダルもクランクからの緩みをちゃんと締め直し、ベアリングボールの調整部分のネジを締め直せば、あと10年程度は壊れることはなかっただろうと思う。少し緩んでいるのを自覚しながら、放っておいたのが故障原因である。まっでもさすがに、同じメンテ品はないかもしれないし、自転車屋に1万円程度補修にかかると言われたので、今は、3万円程度でいい自転車があるので、そちらに買い替えてしまおうと思っている。

<2011.12.2>

Kazari