時事批評

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資産課税の馬鹿げた記事について

 馬鹿げた言辞や説が多すぎて、批評しきれない。ある意味、情報を過多にすれば、その処理に疲弊して、国民は冷静な判断ができなくなるから、大量に謬説まき散らすのかなぁ、最近のマスコミは。それにしても、典型的な二重課税の提言を取り上げるとは、新聞大手として恥ずかしくないのかと疑問も起こる。

 通常の財政学の理論では、金融資産への直接課税は、総合所得課税の観点からみても肯定できない。現行の税法で、すでに利子に課税しているので、金融資産に課税すれば、二重課税になるからである。たぶん、現行の税法に抵触する。だから馬鹿でも提唱しなかったが、どこかの馬鹿なシンクタンク研究員が言い出したらしい。相続税増税や所得税累進化を自説もろともつぶしたいから、無謀な説を唱えるのだと思う。

 相続税は、毎年かかる税ではない。世代交代の時にのみかかる税なので、総合所得課税の観点からみても否定されない。現行の税法で、すでに相続に課税しているので、法律上も問題がない。また、厳密な意味で市場万能主義者なら、労働者や経営者の参入障壁になる親の財産の違いを子子孫孫まで保つことは避けるべきでもある。相続税は新たな労働市場への人材に関する競争を促進する効果もある。一方、金融資産に対する毎年の課税は、外国との戦争期間とかならともかく、平時に行うべき税制とは到底思えない。資産隠しを促し、タンス預金を増やす結果になるなど、景気へのマイナス効果も考えられる。

 金融資産に関する現行の税制への提言としては、現在の株に対する優遇政策をやめることが一番まともな政策のひとつである。そもそも株式投資などは国民背番号制を背景に、この番号なしに取引できないようにして、源泉分離をやめても脱税できないようにすることが重要である。

<2012.3.7>

 国民背番号制の導入を言うと、馬鹿の一つ覚えみたいに、なりすまし被害が増大するなどとデマに近い内容を流す報道機関が出現する。その際に使われる統計数字に根拠を見いだせた試しは一度もない。東京新聞(2012.3.7特報部)の掲載した数字も意味がないものだ。どの機関が何のデータを下に、累計した数字なのかすら触れられていない。2007年前後に米国で年間1千万人、被害総額500億ドルとなりすまし被害と書かれているが、そのうち国民背番号制の導入が原因の「なりすまし」被害がいくらか全く触れていないのである。それに、国民背番号制がなくても、クレジット・カードをスキャンされて偽造されれば、クレジット・カードによる「なりすまし被害」が起きる。すでに日本でも、ゴルフ場のロッカーからクレジット・カード情報だけがスキャンされ、偽造クレジット・カードによる被害が出て社会問題になった。それをあたかも国民背番号制が原因のように誤読されるように書くのは読者を欺く行為で、報道倫理規定に違反する行為である。大学教授の説明として載せる姑息なやり方が特に汚らわしい。大富豪が節税や脱税を続ける目的で、金を出して国民背番号制などの制度に反対することはよくあることだが、そういう背景で出たかもしれない統計数字を調べもせずに掲載すること自体が、マスメディアによる犯罪だと私は考える。この石村大学教授と特報部は見出し通りの「情報の悪用」という罪を犯している。特報部がきちんと取材して掲載する記事に出す数字ではあってはならないものだ。

 銀行の名寄せは至って簡単である。国民背番号を記載しない通帳を発行できないようにするだけでいい。銀行通帳などは、約2年程度の移行期間を見れば、大半は国民背番号で個人を特定した口座に移行可能である。実際に振り込め詐欺対策として、大手銀行や、ゆうちょ銀行は、複数口座をもつ人物を犯罪者扱いするような感じで、ここ数年で名寄せが大幅に進められた。後は、住所不定者になっている人などの名義貸し対策が進めばいいだけで、これは背番号制の有無に関係なくおこる犯罪になる。それから、災害時は、背番号があってもなくても支援には影響しないはずで、被災者支援を理由に反対すること自体がおこがましい。しかし政府が震災時に役立つと嘘を言っているので、この件についてだけは政府が悪い。実際に大資産家にとって、利子所得の累進課税が痛いから、反対の大合唱がおこるのは分かるが、社民党党首が利子所得の累進課税を否定してどうするのだろう。日本は共産党や社民党が大企業増税に賛成するが、個人大資産家への課税強化に反対するという全く党の存在意義に逆らうような馬鹿げた現状がある。

 費用対効果を言うなら、政府に共通番号制実施後の利子所得(株のキャピタルゲインを含む)の累進税化による税収の増大(推計値)を公表させればいい。それを促すのが報道機関の務めだろう。おそらく数兆円になると思っているから、実施したいのだ。こんな大資産家向けの劣悪な提灯記事は久しぶりに読んで、極めて不快だった。

 ついでに書いておこう。最近まで、原発に関して東京新聞は、一面で政府批判を、被災地向け記事には被ばく被害が大したことはないという趣旨の記事を、特報部では原発批判の記事をと、分裂症な記事を掲載してきた。新聞社として確固とした方針がないらしい。こういうのは、新聞会社自体にメディア・リテラシーがないに等しい状態であり、嘆かわしい。

<2012.3.16>

Kazari