時事批評

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驕る東電の家庭用電気料金の値上げ

節電で減った電力需要の売上分だけ値上げ

 全国では、節電だが、東京や中部では、原子力発電所ゼロでも、今年の夏のピーク電力は供給不足にならないことが判明している。東京電力はこれまで、「節電しないと停電の恐れ」と「原子力を利用しないと値上げ」と言ってきたが、両方とも嘘だという事は今回の値上げの幅からも明らかである。

 これまで安全対策をないがしろにしてきた結果、起こした原子力発電所事故を受けて、関東では、家庭・企業とも大いに節電に励んだ。その結果、東京電力管区の電力需要は、2010年度293,386,665MKwから、268,229,749MKwと年間8.5%の節電に成功した。販売額が比例しているなら、東電は売上が8.5%減ったことになる。なんと、この節電によって減った売上げを補填する以上に、平均10%も値上げさせてくれと言っているわけだ。恐ろしいことである。暴力団でも「節電してくれないと停電するぞ」と脅し、「節電したから売上げ減少しただろ、値上げするから払え」などとは言わないものだ。東京電力という会社は、暴力団以上にたちが悪いと言ってもいい。

 現経営陣が節電をお願いし、その結果、東電管区で8.5%節電がなされ、売り上げが減少した。この売り上げ減少の経営責任は100%現経営陣にある。それを100%以上、電力消費者に価格転嫁しますというのだから驚いた。しかも政府が何の要求もせずに、飲むなどあり得ない。

高額給与のままの値上げ

 さて、今回の経営改革案は、何と矮小な事だろう。安全対策を怠った上に、世界史上最悪の原子力事故を起こした東京電力が、なぜ、JALよりも大幅に緩い経営改革で、公金で救済される必要があるのか、全く分からない。給与水準で言えば、安全対策を行う技術すらなかったのだから、三種公務員程度で十分である。現行の改革案では、一般社員年収570万、大卒社員で835万円で20%の削減という。事故前は、1043万円ももらっていたわけだ。世界一家庭用電気料金が高くなるわけだ。これまでの不正請求含めて値下げしてほしいくらいである。

 そもそも安全対策の欠如は、株主背任にもなるわけで、この件に関してはすでに裁判を起こされているが、普通は、現経営陣が、旧経営陣を訴訟して賠償に充てるものだ。しかし、東電はこれも拒否することを明言している。原子力事故を起こしたのは自然災害によるもので、旧経営陣の安全対策に法的な問題は全くないというのが、現経営陣の考えという事になる。もしそれが正しいとすれば、論理的にはリストラすら拒否するべきであることは言うまでもない。実際には責任があることは明白であるが、責任を取りたくないのだ。今回の事故からすれば、賞与ゼロは当然だし、大卒社員平均で570万程度でも十二分すぎる。嫌なら転職されたらいい。破産自治体なら、その程度の給与額になることはないことを我々は知っている。だから実質破産企業であるのに、従業員1000人規模の民間企業と比べること自体が間違っているし、東電の驕りであると断定できる。

 この数字からも最大で30%削減では十分とは言えないことは明らかである。東電側は悪くても落としどころは30%削減と思っている事だろう。1043万円から30%削減でも730万円にもなるからだ。三種公務員並みにするには、東電の削減率は、50%を上回る程度が適当という事になる(54%削減で570万円)。国有化すると、国家公務員扱いだから630万円程度払わねばならないから、その分電気代が高くつく。

JALよりも緩い

 JALの時ですら厚生年金の支払いにまで経営改革は及んだ。安全対策を怠ってきた旧東京電力社員が、一般企業より高い厚生年金をもらうことは法的にも、道義上も問題が多い。自主返納を含めて、賠償支払いの積立を増やすべきである。

賠償を渋る東電、続報しないマスメディア

 当初は、まず説明書を難解にして賠償を妨害したこと、仮払いした人には賠償を渋ること、一度賠償を支払うと二度と賠償を払わないことを誓約させようとすることなど、様々な賠償支払い拒否活動を行っていることが報じられた。現在も、東電は弁護士に多額の報酬を払う一方で、賠償支払いを渋る行動を取り続けているわけだが、続報は止んでしまっている。賠償請求資料を見ずにステレオタイプの反論書を送ってきたり、提出書類があっても不足として支払拒絶したり、電話口で恫喝したりといった話が、多く私の耳に入ってきている。いったい日本のマスメディアは何を取材しているのだろうか。

<2012.5.20>

家庭用電気料金と使用電力量

 2010年と2011年の自分の節電結果を見ると、使用電力量で11%、電気料金で8%の節電に成功していた。大雑把に比推計すれば、東電の主張通り、家庭用電気料金を10.28%値上げすると、使用電力の14.13%の削減分に相当する補填が可能になる。100%以上の価格転嫁であることは間違いない。

<2012.6.5>

Kazari