関西の電力不足について解説する報道がないのはなぜか
情報を右(官庁)から偏向して左(大衆)に流すだけ
日本のマスゴミの能力が低い状態は今に始まったことではないが、まったく改善の兆しが見えない。特にテレビの報道はいらない水準で、ジャーナリズムの機能をまったく有していない。電力不足になったら真っ先にテレビ局への電力供給をやめたらいいだろう。
きちんと電力統計をもとに議論することもないのは末期的だ。例えば、東京電力はさんざん電力不足を煽った割に、今年の夏の電力需給は供給にゆとりさえあり、関西電力に売電すると言っている。それは東京電力管区での照明設備を中心とする節電で、すでに2010年度から11年度にかけて8.5%の節電に成功したからで、4-6月期に入っても、東京電力管区では、更に白色LED照明化による節電が進められている。おそらく、今年度も真面目に照明の節電が進めば、年間で5%程度は節電できてしまいそうな勢いである。
関西電力は2010年度から11年度にかけて3.3%(15107万Mkwhから14603万Mkwh)の節電しかしておらず、今年、白色LED照明化による節電を強力に推し進めれば、2011年度の東京電力管区の実績程度としても、年間790万Kwhの節電余地がある。
一部の新聞は、野田総理が関西電力の提出データを鵜呑みにした「15%の需給差」があると述べたことを皮肉した。3.11以降、東京電力管区で実施された節電の行政命令が行う余地があること、今までに、ガスタービンなどの発電供給量の上昇のための行政命令を行う余地があったのを全く検討しておらず、はじめから原子力再稼働がありきに映ることなどを論拠としている。
一方、関西電力は供給電力の原子力依存率が高い。供給側に関しては、2011年度の統計はまだで、2010年度までになる。設備に関する最大出力の統計だから、電力需要より遅くなるのは単なる情報隠しとしか思えないが、2010年度でみて、東京電力の最大出力 合計に占める原子力は26.6%、関西電力で48.4%となっている。
大口電力産業別月報(2009年1月〜2012年4月:単位Mwh)
大口電力産業は節電余地がほとんどないとマスゴミで比較的繰り返し報道してきた。事実関係を統計で見てみよう。
東京電力と関西電力を見てみよう。2010年から2011年にかけてみてみると、東京電力管区の産業では、暦年で8267万Mwhから7653万Mwhへ減少しており、マイナス7.42%となっている。7月まで対策を怠った関西電力は1.24%上昇した。東京電力管区を年度でみても、8196万Mwhから7698万Mwhへ減少しており、マイナス6.08%となっている。関西電力は年度でみてもマイナス1.34%に過ぎない。
問題はピーク問題が発生する夏の猛暑日周辺、冬の極寒日周辺以外の電力需要である。2010年からの月次データを見て、2010年同年同月差を取ってみると、東京電力管区の産業で、2011年以降プラスになったのは、3.11以前の2011年1月、2011年2月、2012年2月の3回に過ぎない。つまり経済界も節電はできないと嘘をついていたのである。この間の東京電力管区の節電は計画停電などの実施もあり、3,4,8月は極端に大幅な節電となっているから、もう少し温厚な節電でも良い。グラフを2枚作成してみると、東京電力管区の2011年の経験を見れば、2009年の実績くらいは節電目標にしても可能である事が分かる。2009年と2010年の中間程度なら、企業は簡単に対応できるはずだ。例えば2012年7月の節電目標は、東京電力管区なら698と765の中間726万Mwh、関西なら382と425の中間404万Mwhである。こうした数字の積み上げでも足りないという証拠を基に話し合いすべきだろう。15%の需給差は絵空事に思える。
2009年のデータはこの統計が2009年から2010年にかけて減少していないことを確認するために用いた。東京電力で、暦年8.13%、年度4.62%の増加、関西電力で暦年12.86%、年度10.52%の増加となっている。
<2012.6.11>
記録の意味で追記しておく。2012.9.7東京新聞、原発「再稼働不要裏付け」という記事が出た。一部、転載しておくと、『
仮に大飯原発の稼働がなくても最大消費電力を記録した8月3日の供給余力は2.7%あった計算。政府が「最低限必要」と主張する3%は下回ってはいたが「他社から余った電力を購入して供給力を高めることもできた」との指摘もある
』と書かれている。
そりゃそうでしょうという内容。再稼働後、こんな記事を書かれてもなぁ。再稼働前に、東京新聞が独自試算して、この程度余るはずだと批判しておく。そして、後日「やっぱり余った関電の電力」という記事を書いたのなら、あっぱれである。そういう事を行う能力がない今の新聞って読む価値がない。
<2012.9.20>