時事批評

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株主総会に関するマスコミの提灯報道

大阪市長の場合

 どの企業であれ、現在の株主総会では、株主提案は100%却下される状況にある。例外は、オリンパスや王子製紙などで、会社側に改革の意志がある場合のみである。橋下大阪市長と猪瀬副知事が断られるのを承知の上で質問や提案を行い、パフォーマンス政治を実行に移した。この頃のマスメディアは、こうした事情をすべて分かった上で、政治的パフォーマンスに過ぎないと批判することすらやめてしまった。そのマスメディアから反原発の本気度など伝わってくるはずもない。

 また、橋下は、現在の大阪市に調査権限がないから、正確な統計が取り寄せられず、正確な需給ギャップが分からないから夏の大飯原発再稼働に反対できなかったと詭弁を述べている。盗人たけだけしいとはこの事である。例えば、3.11後の2011年夏、大阪では関西電力の計画停電に応じなかったが、その判断の際に正確な統計を取り寄せていたのか? その一年後になって正確な統計云々を持ち出すのは愚の骨頂であるし、権限不足であるなら、なおさら直接民主主義の力を借りて、国に対しても府民の直接の声を政治に反映させるのは首長の責務として、関西電力や国に情報開示の圧力をかければよかったことになる。こうした論理の不備を即座に指摘して、詰問できないのは、マスコミの能力が著しく低い証拠なのだろう。こうした茶番を茶番として報道しない現在のマスコミの態度は本当に醜悪だ。

猪瀬副都知事の場合

 茶番の度合いは大阪市と同じである。本来、国が解決し、国が購入すべき尖閣諸島を都で購入することは良しとする石原都知事が、なぜ、国が解決すべき東電の問題に口出しするのだろうか。反原子力の署名を無視し、都民投票制度を否決し、原子力政策は国の決めるべき問題で都が口を出す問題ではないと言う石原都知事が、なぜ、株主総会で、猪瀬副知事に口出しさせたのか、この矛盾を指摘しない今のマスコミの存在意義はなにか、不思議でしょうがない。

マスコミの場合

 NHKの役員人事に、東電関係者がいると批判の対象でも、新聞や放送会社が役員としてNHKにいても、何のお咎めなしというのもよく分からない新聞や民放の屁理屈に過ぎない。東電関連の財団法人に、新聞、民放、NHKの天下り役員が名を連ねる機関もあるが、これも自ら報道して襟を正した報道機関は存在しない。

 例えば、日本の電気料金で運営されている電力中央研究所は、2012年4月1日から、一般財団法人という事で、廃止を逃れようとしているが、この運営資金の大半が電力会社から出ているなら、廃止すべき機関であることは言うまでもない。大手町の一等地にあるんだから、資産をすべて売却して、東電の出資金相当分は、賠償金の積み上げに、他の電力会社の分は、原発停止の費用に充てるべきだろう。一般財団法人にして無罪放免という姑息な手段をのうのうと見過ごして報道しないのも、マスコミの犯罪と言って過言でない。放射能汚染の野菜や魚は、自治体単位で共同責任を取らせておきながら、東電の関連機関は、共同責任がないとでも言うのだろうか。少なくとも、電力中央研究所には原子力発電の安全性に関する提灯論文が多数あり、それだけでも廃止に相当する責任があると考えるのが、一般的国民の感覚に合うものではなかろうか。

<2012.6.28>

Kazari