2011.3世界(月刊誌)の批評
谷口誠の場合
久々にアジ研の人の論文を読んだ。普通にあまり的確にではなく農業に関してTPPに反論しておられる。
服部茂幸の場合
中途半端。ポンジーであった住専を何もしなかったから、日本経済は手痛いダメージを受けたともいえる。アメリカのバーナンキはケインズ経済学派として、日本にはあまり発言していないが、アメリカ・ケインジアンが日本に提案した金融政策とは、別の政策を採用した。それは、日本とほぼ同じ範疇の金融政策で、日本の財務省と同様にアメリカもオバマがまともな財政出動をしなかった。金融のポンジーな部分を見捨てたところで、景気後退による失業は回復しない。金融以外の分野も回復しないのである。日本の政策不況は20年に及ぶもので、縮小傾向の中、一時回復程度は水準の維持にもならないから、失われた10年とするのは、あまり意義がない。アメリカも20年不況にまっしぐらな状況にあるが、それも株主を保護する割に、労働者を保護しないからでもある。この点は、次の大瀧の論文の方がはるかに正確に理解できている。
大瀧雅之の場合
一時期、リアル・ビジネス・サイクルなんぞ分析していたので、理論馬鹿かと思っていたが、この号では、かなりまともな分析を示している。ちょっと引用してみよう(140頁)。
「失われた10年」後の2000年代の一連の政治経済的蠢動が、何を目途としているかは一目瞭然である。すなわち資本所得を優遇し、一般市民の生活の糧となっている労働所得を圧縮しようとする動きである。・・・ 雇用者所得は不況の底の1998年と比べても10年間で趨勢的に約17兆円も低下しているのに比べ、同時期の企業所得は、リーマンショックの前の07年までは、約15兆円も上昇している。」
これが小泉改革の実態である。後半は、海外投資と国内失業を並べただけの意味のない分析だ。本来なら、この間失われた名目GDPの推移を見た方がいい。縮小するパイをほとんど資本家側に分配したら、経済がおかしくなるばかりだ。だから地方都市への減税よりも、企業や資産家に増税して、社会福祉で低所得者に給付する方がまともに効く経済政策であることは間違いない。万が一実施されると経済が消費主導で回復してしまうから、アメリカ属州志願の自民党や読売新聞がバラマキと称して、未然に不可能にするわけだ。自民党や読売新聞が主張する企業減税の方が、企業に対するバラマキに他ならないが、そのような報道をする愛国心は、橋本総理以降自民党などにはなくなっているらしい。労働者を叩くしか能のない勢力には、まともな経営能力などあるはずもない。
訓覇法子の場合
非常に良い小論である。教育と労働についてスウェーデンの実例を交えながら、日本の制度不備がよく分かるように書かれている。
木下武男の場合
非常に良い小論である。将来の成長率を下げる要因でもある日本の若年労働への低賃金を問題とし、発想の転換をし、生活給の思想を取り戻すべきと主張している。本来、労働は、高賃金だから真面目に働くわけではない。それは日常観察される事実からも確認できる。例えば、銀行などでおこる不正事件を見ればよい。頭取が不正を働く場合、3億円とか途方もない数字の汚職になるが、窓口担当がそんな大それた事をした事件は聞いたことがない。昔は窓口業務は銀行員に高い給与を払わないと不正が云々と言われていたが、現在の銀行の窓口担当はほとんど契約社員である。低賃金でも不正など起きていない。
郵便局員が金融業務しても不正がおきるわけではない。逆に言えば、そんな主張をする人物の方が危ない。「株は絶対にもうかる」などのあるまじき不法な発言をしたり、お役所から自分のシンクタンクに随意契約の委託研究なんぞをしているのだから。
<2012.7.13>