7.18 NHK「あさイチ」の生活保護報道における有働由美子アナのデマ発言について
「不正受給者の取り締まりによって本当に生活保護が必要な人に資金が回る」
こういう趣旨のことを有働由美子アナが発言して、この番組は終わった。この間に室井佑月(作家)が随分とまともな内容を発言して、NHKの偏向の多くを是正していたが、どうして、いち女子アナ如きがこんなデマを言えるのか、不思議でならない。これは国会で不正受給者の追及を行った片山さつき議員と同じく、異常な発言である。番組も不正受給が疑われる者をモザイクで映すという徹底した情報操作ぶりで、寒気を覚える。この手のモザイク放送は、いくらでもやらせすら可能だ。仮に、不正受給の疑いを周辺住民が告発した後での捜査としても、被疑者の段階で報道するかね。NHKの報道倫理の品性を疑うべき内容だった。オリンピックでしばらく「あさイチ」が報道されないどさくさに行った発言でもあり、特に許しがたいものがある。
NHKのこの番組の内容自体から、この発言がデマであると確認すらできてしまう。まず、現在の不正受給者の割合は0.4%に過ぎない。そして、受給資格を満たしているが偏見が恐ろしくて受給しない人が、1割以上存在するといまだに言われている。自殺者もいまだに半期で1万5000人をわずかに下回るだけで、3万人のオーダーの範疇からほとんど動いていないことからも、全然必要な人に届いていない現状がある。
さらに、この番組の報道によれば、警察OBを含む職員3人が、営業車両を用いて、たったひとつの懸案について、2か月に及ぶ内偵が必要であると述べていた。慎重さをアピールしたかったのか知れないが、国家公務員の職員の平均給与が530万円程度だから、地方公務員を450万円とかなり過少に見積もっても、3人の不正受給者の捜査担当職員を作れば、それだけで年間1350万円、ガソリン代など調査費用も200万円程度と過少に見積もっても、年間1550万円もの経費が掛かる。
その上で、いくらの不正受給をあばけるかというと、月額30万円を受け取っているとされる不正受給者が真に不正受給で、あり得ないが仮に全額返納できる場合でも、年額360万円に過ぎない。内偵に2か月かかるから、どんなに楽観的に見積もっても、6世帯しか調査できない。全部が不正受給者で全額返済させることができたとしても、360x6だから、たったの2160万円。これが上限である。
したがって1550万円もの経費を使って、不正を取り締まって増やせる生活保護予算は、2160-1550で、たったの610万円にしかならない。これなら、生活保護予算を単純に1550万円増やした方が人を救える。610万円では月額30万円の二世帯分にも満たないが、1550万円なら、四世帯分以上である。仮に1550万円の中に不正受給されてしまう金額を計算してみよう。1550x0.004(0.4%)だから、6万2千円である。つまりこの計算例で行けば、610/1550=0.393(39.3%)というこの割合が均衡になる。不正受給者が6割近くに膨れ上がらない限り、この手の捜査は経済的な採算がないということになる。これが、生活保護に警察権を行使することが不毛な大きな要因のひとつである。少額な不正受給や少額な脱税全般に当てはまる。
だからイギリスでも告発があれば調査するというスタンスだ。当然である。もし、生活保護制度が的確に設計されていれば、仮に管理人職についたところで、月額7万円なら、差額相当分(7x12か月=)84万円しか生活保護予算を増やせない。つまり、現状の日本で、不正受給取締り官を独自に雇用することは予算の無駄遣いに過ぎない。もちろん取り締まるなと言うのではない。生活保護課が行う事ではないと言っているだけである。こんなことはきちんと調査権の及ぶ範囲を法規にした上で、暇な公安や検察、地元警察、必要なら国税庁などが調査すればいい事柄だ。地方自治体は救済と職業支援に力を傾注すべきである。
<2012.8.2>