野党が内閣不信任決議案を否決するという異常事態
議会制民主主義の崩壊
日本のマスコミの情報操作がここまで露骨だと、開いた口がふさがらない。この異常事態を異常として報道しない姿勢がおかしい。かつて自民党以外が野党なら、「野党が内閣不信任案を否決するなど議会制民主主義の崩壊である」とマスコミが大宣伝・猛批判していた事柄である。いったいどれだけの機密費をもらうと、こんな露骨な操作をするのかなぁ。
そもそも小沢が民主党を離党したのは、マニュフェスト違反の増税法案の採決の前に、内閣不信任決議案を出すためである。これも官僚が実力者の小沢を嫌うことから、壊し屋として情報操作されて報道された。マニュフェスト違反に関しても、マスコミの手にかかると、小沢が最初にマニュフェスト撤回したとされるが、小沢は民主党内としても、議会制民主主義の観点からしても、民主的手続きを踏んでいる。党内に寄せられた意見を吸い上げるという作業から修正したという手続きを踏んでいるが、現執行部はほとんどこうしたまともな手続きは踏んでいない。執行部に一任しろ、時間切れで、マニュフェスト違反に相当する事を実施しているのである。これは民主的手続きを踏まない選挙結果の無効化に等しい行為で、小沢より野田の方がよほど、議会制民主主義に反した事を行っている。自民党政権に続いて、官僚に盲従して国益を損なう事を繰り返しているのは本当にけしからん。
本当に財政上、現時点で恒久増税が必要なら、現在実施している減税のうち、高額所得者や大資産家に利益が大きく、低所得者に影響のない「エコカー減税や株への減税の廃止」などを実行すればいい。国債の大量販売など投機圧力で脅迫するTBSの悪質な報道などもあるが、こうした国益を無視した報道が大手をふるう現状は誠に嘆かわしい。
議会制民主主義にまつわる保守派のデマ
最近は、Wedgeなどの保守系の愚かな雑誌が、議会制民主主義に関してデマを書くことが増えた(例.Wedge July 2011 Vol.23 No.7)。例えば、国家の強権が発動可能ではじめて、民主主義を守れるとか。ならば永世中立国家は、民主主義ではないのかなぁ。軍隊を持たない国も民主主義ではないんだろう。世界の中ではマイノリティかもしれないが、こうした粗雑な事を言う言論人は馬鹿だと思う。日本の保守系の議論には粗雑な論理が横行する。例えば、愚民思想を肯定したいが故に、国民が間違う事があるから、議会制民主主義があるのだという場合などに典型的に起こる。マスコミが間違った情報ばかり流す国で、国民の判断が間違うのは当たり前である。これは、官僚が間違った情報を政治家に流せば、政治家も間違った判断をするから、議会制民主主義であるから、防げるような性質のものではない。
人間である以上、間違う場合もある。だから、間違いを正すことができることが重要だ。間違った戦争であれば、撤退の決断が一番重要になる。しかし、民事でも、今の議会制民主主義の日本で、撤退の決断を政治家が行った事例は皆無に近い。ほとんどが司法の判決が出た後に、判決に沿って変えるだけである。ここが(民主主義の形態や制度が何であれ)、政治上の最大の問題なのである。
議会制民主主義に関連して、ひどい場合、直接民主主義をファシズムだと言い出す阿呆(中西輝政)までいる。実際に歴史の中でファシズムが台頭して問題になったのは第二次世界大戦がある。第二次世界大戦になる直前の政治体制は、ドイツ、イタリア、日本ともに議会制民主主義と言っていい。直接民主主義で、ファシズムになった歴史があるなら、中西はあげるべきだ。
普通、愚民思想を開陳する場合は、渡邊恒雄読売会長のように反ポピュリズムというものだ。ポピュリズムになりすぎると財政破たんするというのが、反ポピュリズムの中で、唯一のまともな理由だが、それ以外はデマがほとんどである。そのまともな理由に入るものでも、実際に破たんした国は、発展途上国がほとんどである。発展途上国の場合、軍事独裁か議会制民主主義の国の場合がほとんどだ。議会制民主主義と言われる先進国の中には、北欧の福祉国家からアメリカの小さい政府まであり、その幅は驚くほど大きい。こうした差を無視して、ひたすらアメリカに盲従する姿は、保守系の雑誌や新聞に共通している。こういう無責任なアメリカ追従の無反省勢力の筆頭が、現在の自民党、官僚、マスコミであり、これが国益を失わせているのである。また、一部特定勢力(大企業や大資産家)に優遇する政策は、議会制民主主義で実現しやすく、それが財政破たんの一因になっている。真面目に歴史を見れば、先進国では、一部特定勢力(大企業や大資産家)の優遇によって、独裁化(=ファシズム化)がおこり、財政破たんしやすくなる。単にポピュリズムのような国民全体へのバラマキによって、財政破たんが起こる事例の方が珍しいのである。
<2012.8.9>