時事批評

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経済政策の比較

各党の選挙公約や政策、NHKの党首討論から

 こういう時、一番無難なのは、読売や朝日の報道番組を無視して、テレビなら、一番マシなNHKからのみ情報を収集し、あとは、Webなどで各党の政策をみることである。

 選挙期間は新聞や週刊誌もまったくあてにならない。後で間違えましたみたいな無責任な報道をたびたび繰り返しているからである。大変労力を要するのは確かだが、市民一人一人が政治家のこれまでの言動と行動をよく覚えておく必要がある。民主主義とはこうした労力を一般市民が払ってはじめて成り立つ政治制度なのだから。日本は義務教育を含めて、そうした政治に関心をもつような教育をしていないのが、非常に良くない。

 世論調査も日本では無視した方がいい。乱数で電話番号を発生させても、統計的に信憑性は得られない。昼間にかければ、老人バイアス、主婦バイアスがかかる。現実に一度私はメディアからの調査が留守録に記録されていたことがあったが、それは平日の午後3時であった。サラリーマンが答えられない時間帯だ。報道各社が真面目に調査していないことは明白だ。調査後に鉛筆舐めて書き換えた調査結果を報道していると判断してよい。そもそも同日に調査したはずの世論調査が、各社により5%の差が出るなど、正規のまともな統計調査を行っていたなら起こりえない。こうしたことが常態化していることの論理的帰結は、科学性を担保にした調査をマスメディアは意図的に行っていないということだ。

 今回はどの政党の政策が優れているか、結果を中心に書いておこうと思う。経済学を専門的に学び、御用(誤用?)経済学者とは縁のない立場から判断すると、新聞や雑誌とは異なった結論にしかならないと思われるためである。

 財政均衡主義者である土居丈朗などの意見は、こと景気に関しては全く参考にならない。景気を悪くしてでも財政均衡させるべく、財務省の立場にたって、あるいは土居自身が大好きと公言する自民党の立場にたって発言するからでもある。

各党の経済政策の有効性の比較

 新党日本(田中康夫)>>新党大地(鈴木宗男)>日本未来の党(嘉田由紀子)>共産党(志位和夫)>社民党(福島瑞穂)>民主党(野田佳彦)>公明党(山口那津男)、国民新党(自見庄三郎)、みんなの党(渡辺喜美)、新党改革(舛添要一)>>日本維新の会(石原慎太郎)、自民党(安倍晋三)といった感じになる。見にくいので縦にも表示ておく。

1.新党日本(田中康夫)
2.新党大地(鈴木宗男)
3.日本未来の党(嘉田由紀子)
4.共産党(志位和夫)
5.民主党(野田佳彦)
6.社会民主党(福島瑞穂)
7.公明党(山口那津男)
8.国民新党(自見庄三郎)
9.みんなの党(渡辺喜美)
10.新党改革(舛添要一)
11.日本維新の会(石原慎太郎)
12.自民党(安倍晋三)

 やたら11政党乱立と言っていた気がするが、12政党である。今回の選挙で反原発という事でいえば、日本未来の党が一番有望であるが、共産党も躍進すれば、そちらの政策は大丈夫だろう。個人的な好みで言えば、私は人間として、田中康夫も、鈴木宗男も好きな方ではない。しかし、NHKでの政策立案力や市民のために寸暇を惜しんで勉強する態度は両氏とも立派であると脱帽せざるを得ない。特に、NHK党首討論における田中康夫の提案は、具体性、即効性がある。他国での実績のある政策を、いろいろ吟味した上で提案しており、彼に比べると、経産省の事務官僚のトップの方が能力が低いと断言できるほどの内容だった。

 鈴木宗男氏もかなり勉強したらしく、普通のケインズ政策よりも具体的な提案をいくつも行っていた。日本未来の党は、嘉田由紀子が滋賀県で実施し、効果のあった政策には実効性、即効性があるし、控えに亀井静香がいるので経済政策における安心感が他の党と違うということで上位にあげた。党首討論ではもう少し、見劣りがしたのは事実だ。共産党は内部留保の活用の具体的手段が見えないが、労働者に分配を厚くする政策は必要である。

 これまでの日本の議論では談合というと、建設業がやり玉に常にあがり、建設業だけ叩かれてきた印象がある。最近は、防衛省の公共事業を受注している三菱や東芝などの不祥事が続いている。またこれまで国内で放置されてきた製造業の談合は、海外経由で明るみになり、自動車内のケーブルなどで不祥事が起きた。7年以上カルテル行為を行っていたと言われるから、現在の日本の製造業はカルテル天国になっている。

 建設業は公共事業の請負主だから見えやすい叩きやすいという構造がある。また、日本の建築業は労働者数がだぶついているという批判にもさらされた。日本の製造業は、経団連を運営し、組織力があるので、これらの労働者を低賃金で雇用したかったから意図的に叩いていたのではないかという疑いを私は持っている。もうひとつ経団連や製造業者が建設業を叩く理由がある。建設業界は景気の良い時に労働分配率が極めて高い。バブル時の一番給与が低い社員のボーナスを製造業と比較すれば3倍以上はあったのではないかと思う。これが他の業界に嫌われる建築業界の慣行だったことは疑いの余地はない。

 民主党は自民党が参院で議論をしないために、いろいろ政策が通らない状況にあるが、その事を民主党が言うと、マスメディアが袋叩きにするという偏向報道が続いている。民主党や共産党が野党として同じことをすると、野党が批判されるのに、自民党が野党だと、政権与党が批判されるのはおかしなことである。

 民主党もマニュフェストに掲げた項目を実施するなら意味があるが、富裕層への増税、相続税も自民党の反対で取り下げ中である。

 社会民主党は福島瑞穂の日本語がとにかく下手で、もっと論客を党首にしない限り、言っている方向性は正しくても具体性に乏しく、期待が持てない。

 公明党(山口那津男)は景気浮揚に効果のないバラマキをこれまでいくつも行ってきたが、意味のない政策ばかりだった。例えば、地域振興券である。また、建設業の設備関係大手と太いパイプがあるらしく、こういう政党が勝つと、利権政治から脱却できない。

 国民新党(自見庄三郎)は金融は少しは分かるのか知らないが、期待していたより景気対策に詳しくなかった。亀井が抜けた後は経済に詳しい人材が見当たらないので、景気対策については期待が持てない。

 みんなの党(渡辺喜美)は具体性のある経済政策は何一つ持っていない。あるとすれば、公務員の縮小だけ。公務員の上級職が能力が低いので、1種や上級の給与を4割程度カットすることには同意するが、人員を減らすのは意味がない。民営化して癒着が増えると透明性が欠如するだけだから、それなら最初から公務員のまま改革にあたらせた方がいい。公務員を働くようにするのは立法府、行政府の長である大臣の仕事だから、大臣としてまともに能力を発揮できない渡辺個人の方に問題があると思う。みんなの党の一番ブレーンは政務調査会長の浅尾慶一郎であるが、軍事は確かに詳しいのだが、経済は素人レベルで残念である。例えば、年金の改革は未納問題を解決すれば、数十兆円の財源を捻出できると言っているが、経済状況が悪くて未納している場合は、強制的に徴収すると、ワーキングプアとなり、病気になって働けなくなれば、生活保護を受けざるを得なくなる。だから、「取らぬ狸の何とやら」という財源にすぎない。実際、まじめに徴収にいっても払えるのに払っていない比率を勘案して議論しないと意味がない。投資先がなくて、内部留保をため込んでいる企業に投資減税を提案する時点で、経団連の犬と考えてよい。

 新党改革(舛添要一)も外交には詳しいが、経済はド素人で唖然とする。何事も条約を念頭に考えても意味がない。時には、国内政策を優先して、条約破棄してもやらなければならないことはある。

 日本維新の会(石原慎太郎)も対外強硬路線に目をそらさせ、利権政治をするしか能がないため、かみ合う議論はほとんどなかった。電気料金があがったから、日本のアルミ産業が滅んだと随分前に否定された謬説をまたまき散らしていたが、現在でも日本でアルミ業界が採算を保てる見込みはない。アジア中にアルミ産業が立ち上がって、国際競争力がなくなり、オイルショックがなくても、1985年以降の円高で撤退する以外なかった産業である。また、アルミ産業は雇用効果が低いため、当時の円高でつぶれていった林業よりも保護に値しない産業だが、石原がこのような発言をし、製造業が大事だというからには、日本の労働者の2割に過ぎない製造業を保護し、利権政治をしたいからだと判断できる。不規則発言が多く、無責任すぎる。はやく政界から引退してほしい。

 自民党(安倍晋三)は、党のCMで「取り戻す」と言っているし、小泉路線を継承するというくらいだから、経団連との利権政治を復活させる。経営者に報酬を増やせるほど国際競争力があるのに、国際競争力の名のもとに労働者の労働環境を劣悪にすることしか考えていないような勢力に減税を考えるようでは景気の回復余地はない。軍関係以外なにもいうことがないらしく、経済に関しては、咳払いしながら、意味不明なことしか話していなかった。全く期待が持てない。

アメリカの動向

 アメリカで再選を果たした民主党オバマ政権は、かなり強気の富裕層への増税を主張している。はっきりいえば、保守派が妥協して増税しないと、アメリカの帝国運営や世界経済が持たない段階にきているが、共和党の右派や保守派の人は馬鹿だから、現状認識が甘い。そのため、いまだに議会で執拗な抵抗を続けている。

 しかし、アメリカの場合、オバマ政権が、所得格差の増大に歯止めをかけなければ、世界の安定的成長は望めない。

<2012.12.9>

Kazari