NHKのクローズアップ現代の超低質性
ダンスの危機での情報操作
番組ではいくつか意図的な印象操作を行っていて、性質が悪いです。
論理構成は以下のようなものでした。「1.ダンスが風営法で規制対象になっている → 2.規制の発端は、ダンスホールでの売春行為にあった(学者の証言) → 3.最近、一般の人が突然警察に踊っていたとして捕まった → ダンスの危機」となっていましたが、いろいろ歴史事実を捻じ曲げています。
2まではいいのですが、その後の論理飛躍には辟易します。まず、3の印象操作自体が正しくないです。逮捕されたのは、映像から判断して、新宿にある「Rolling Stones」のような店にいた客ならびにその店長のような輩と思われます。そうした店ならば、飲酒と、リクエストベースの音楽を流すことしか認められていない店で、深夜にダンスで大騒ぎしていたことは疑いの余地がありません。
こうした店で、近隣住民や同ビルの関係者から、騒音に対する苦情、振動に関する苦情、酔って身体が触れるためケンカなどのいざこざが絶えず、警察への通報が多いから、取り締まっているにすぎません。まず、このような実態で逮捕されることが問題と言えるか?と言えば、まったく問題ない事柄のはずです。例え、NHK番組作成会社の関係者が逮捕されたからといって、腹いせに作っていい番組ではあり得ません。
それから、2 → 3に至る間の歴史事実の無視も問題があります。法の設立根拠が売春でも、その後の法律根拠は麻薬密売に変化しています。例えば、バブル期(80〜90年代)には、ディスコは、麻薬売買の地で、取り締まるに相応しい店です。バブル崩壊後も、クラブと名称が変わっても、野外でのDJなどによるダンスパーティにおいても、麻薬売買の温床になってきた歴史事実があります。酒井法子もそのようなところで麻薬に関わっています。そして踊りと飲酒がある所、現在でも麻薬などの関わりは薄れていません。
したがって現時点でも、ダンスを風営法で規制すべき状況は変化していないと考えられます。
こうした麻薬などにまつわる犯罪と飲酒や踊り行為の関連性の深さを無視して、法の設立根拠に規制緩和の根拠を求めていい理由は番組では触れられていません。しかし原因が条文にあるならば、風営法の条文に、麻薬販売を追加すればいいだけの話のはずです。
こうした犯罪を増やす規制緩和推進は馬鹿げています。日本で銃規制をなくそうというのと同じくらい馬鹿げた提案と言えます。NHKのごときマスメディアが犯罪の増加につながる改悪を主張していいはずなどありません。
企業に関するリスクについて
これもひどかったのですが、一部しか見ていませんので、なにが欠けているかを書いておきます。不勉強なアナウンサーが、専門家と称する人ひとりを頼って番組を編成する態度がまず間違っています。消費者主権や消費者教育の歴史すら調べないなら、アナウンサーやインタビューアーの資格すら疑われます。
消費者の権利として認められるべき範囲についてのリスクは、企業が100%責任を負うべき事柄です。クレーマー対策に関わる部分は、消費者教育などの視点が必要になり、社会全体で解決していくべき性質の問題です。これを企業側からのみ見て、同じリスクと捉えること自体が論理的に正しくありません。
消費者主権の考え方くらいは既知だし、webにも情報があふれているので、そちらに任せるとして、消費者教育についてだけ、本を紹介しておきます。この程度の本は読んで理解した上で番組を制作するべきです。
西村隆男(1999)「日本の消費者教育」有斐閣対応策
クローズアップ現代は見ない。おかしい点を指摘した上で、番組を終了すべきだと抗議する。
<2012.12.22>