耐久消費財の購入について
経済学のところには、貯蓄がゼロの生活だと、耐久消費財の購入資金が不足するため、生活の質を落とさなくてはならない羽目になる程度のことは書きました。しかし、耐久消費財において、現在、様々な製品で耐久性の低下が進行している中、生活防衛のために、経済学的な視点が役に立たないかと考えていました。で、経済学を使ってよく考えてみても、大したことは言えません。ただ考え方を記しておくだけでも参考になるかもしれないと思って、書くことにしました。
貯蓄の必要性
現在の一般家庭には、さまざまな耐久消費財があります。昔の三種の神器と呼ばれた白物の家電製品、洗濯機、冷蔵庫、テレビは、世帯普及率がほぼ100%の耐久消費財になります。
昔の二層式の洗濯機や昔の冷蔵庫は、メーカーの保証期間も当時3〜5年程度はあり、丁寧に使用すれば20年程度は持ちました。しかし、最近のものは、そこまで長く持ちません。価格も低下しましたが、耐久性も大幅に落ちました。一層式の洗濯機だと7年程度の印象です。現在は、メーカーの保証期間も1年程度、PL法などにより補修品をメーカーが保持する期間も生産終了後7年と、耐久性の低下が進んでいます。鉛フリーの電子基盤を持つという時点で、修理を一度もせずに7年以上持つのは稀と思えます。
したがって生活の質を落とさないためには、耐用年数を正確に予想した上で、それらの購入資金を貯蓄しなければいけません。大雑把にインフレの部分を貯金利子で相殺可能とすれば、購入資金を耐用年数で割った金額だけ毎年貯蓄する必要があります。例えば、使用している家電製品3つを現在、42万円で購入でき、耐用年数7年とすれば、最低でも年間6万円、貯蓄しなければなりません。
リスク回避的に行動するなら、期待耐用年数を下げて、貯蓄額を増額することになります。
ランニング・コスト(耐久消費財を使うのにかかる費用)の重要性
冷蔵庫では、2ドアで壁面に遮熱材が十分でないものは、400リットル水準の冷蔵庫と、年間の電気使用料金は大差がありません。こうした製品は、耐用年数の間に支払うランニング・コストと初期費用(製品購入代金)の合計額を耐用年数で割った年間額で比較しないと、製品購入の際の参考になりません。この年間額を年間負担額と名付けておきましょう。
耐久消費財の中には、耐用年数、ランニング・コストによっては、購入代金の高い製品の方が、年間負担額が割安になる場合も多々あります。私の経験で言えば、冷蔵庫、自転車などです。20年前に8万円の自転車を買いましたが、1年あたりの単価は4000円に過ぎません。パンクの頻度はたぶん、あまり影響しません。タイヤやチューブの交換は考慮しなければいけません。新車購入までに定期的にブレーキ用とギア用のワイヤーは交換しましたが、あまりコストはかかっていません。ライトは故障後、一度だけ付け替えました。現在は、3万円程度のクロスバイクに変えましたが、はやくもネジなどの部品が錆び始め、とても20年は持ちそうにない。7年程度と見ています。計算してみても、耐用年数1年あたりの購入単価が上がったと考えざるを得ません。年間負担額をざっくり計算して見ても、値上がりです。
自転車はさほど技術進歩がはやいとは思われない製品でありながら、この有様です。こうした場合、次期購入はやや悲観的に予想せざるを得ません。同等製品は初期費用が値上がりしているか、耐用年数が下がることを考慮して積み立てをしないといけないということになります。
技術進歩がはやいと期待される商品(陳腐化の早い商品)への対応
パソコンやデジカメなどが該当すると思いますが、私の場合、見せびらかしには興味がないので、最低価格帯のものから選択するような感じになっています。この辺は嗜好によって満足度が違うから、一概に言えませんが、資金に余裕があれば、最高品質のものを高価格で買って長めに使うのもいいかもしれません。しかし、資金に乏しい場合は、最低価格帯のものを短い期間で買い替える戦略の方が優れているように感じています。
例えばデスクトップ・パソコン、昔は40万円(5inchフロッピーのみ)もしたから、無理して買っていた部分もありますが、その後は、(仕事に使うソフトの関係やセキュリティソフトなどの事情で)必要な時期に、最低価格の物に切り替えていきましたが、仕事柄、もっとも資金を要しているもののひとつです。2台目35万円(3.5inchフロッピー+HDD)までメーカー製、3台目から自作に切り替え7万円、4台目は3万円、5台目は3万円、・・・といった感じです。
デジカメはパソコンにお金がかかるので、相当我慢して1台目に500万画素のものを1万5千円、2台目800万画素を1万円、3台目1000万画素を8千円で購入していきました。3台目でようやく、暗い室内の展示物を撮る場合を除いては、特に不満のない水準になりました。さて、1台目購入の時期に最高品質のものはせいぜい800万画素で、3万円はしました。もし同じ購入予算という制約をかけると、1台目に800万画素の高い製品を買った場合には、ほぼ3台目までこれを使い続けなくてはなりません。要するに実際の1台目の期間はより満足度が高いけれども、3台目には満足度が下がる状態になります。
最低価格帯を短い期間使用する購買戦略は、初期満足度の低下と引き換えに、将来の満足度を見込む戦略となってます。製品の進歩がはやい場合に特に有効と思われる由縁です。
<2012.12.3>