原発などパブリック・コメントを求める前提は、原発費用の詳細公表と徹底周知が不可欠
現在のような黒塗りだらけの計算表から1kw当たりの原発費用だけ出されても信憑性がない
国民が原子力行政などについて正しい見解を示すためには、正確な情報が不可欠である。東京電力など電力会社は地域独占企業なのだから、経営に関わるものであっても算出の基礎となる詳細な経営データを国民に開示して問題が生じるはずがない。その程度の事を企業秘密とする意味が分からない。株主背任行為が明確化するから出せない以外の理由など思いつかない。正確な情報開示もしないで、期間だけ1年と長く置いてパブリックコメントを求めたところで、まともな議論など行いようがない。はじめから、結論ありきなのを隠ぺい工作するために、民主党政権が「国民にも聞きました」という官僚の実績作りに加担していると言われても仕方のないやり方である。
東電の原発運営費用だけでは不十分。国側の原子力関連予算も別途、国民に分かりやすい形で、原子力会計として単年度ベース、積年ベースで開示する必要がある
それから、これからの原子力行政を国民が判断する上で、国の予算についても、これまでの単年度予算について、原子力発電に関わる研究開発費、その補助金、省庁や所管独立行政法人が所有している原子力設備の維持費、運営費、これから建設予定の建築費など投資費用とともに、これまで費やしてきた積算費用も開示する必要がある。さらに今後必要な経費(技術開発費用、用地買収費用、設備建設費用)も公開しなければならない。独立行政法人に行わせている部分で、補助金等が入っている場合は連結決算のようにして開示する義務もある。こうした作業を一切ないがしろにして、東電のお手盛りのいい加減な数字を元に、国の大事な政策を問うという今の民主党政権には、与党としての責任感がまるで見られない。ここは自民党と同じことを繰り返していい事柄ではない。
自民党小泉政権のようなパフォーマンス政治を行う必要がないと考えているなら、野田首相は、早い時期に首相会見を開き、月一回でも実施すればいいだろう。経団連の言いなり、財務省の言いなりで、いったい野田は政治家として何をしたいのだ。自民党の谷垣と違う所を少しでも見せてほしいものだ。
自民党が内閣府を作ってから、政党と官僚の責任の所在の不明化に関する密約があるのではないかという疑念がぬぐえない。根本的な統計数字を作らずに、政策を決めようとする政治家や官僚の姿には、もはや国を運営する能力も責任も放棄してかかっているのではないかと思われても仕方がない。きちんと議論のたたき台になる数字を集計して公開すべきだ。
<2011.9.25>
※東京新聞がその後、原子力関連独立行政法人の天下り役員分の給与だけを無駄と報じている(2011.9.30)。非常に中途半端である。これらの機関への予算やこの独立行政法人から丸投げされた仕事を含めて、原発を止めるなら、いらない予算であるから、すべての原子力関連予算を積算を公表しておくべきだ。独立行政法人の原子力関連9機関だけで1697億円(2008年エネルギー特別会計分)も無駄に使われている。今年度の文科省の原子力関連予算は約2114億円(2011.8.24毎日web)だし、これも原子力反対なら、ゼロになるべき予算である。10年で考えるなら、このふたつだけで4000億円x10年だから4兆円賄える計算である。これらの機関を解散させて、資本も売り払えば、現在、考慮されている復興財源10兆円程度は全額、捻出できてしまう可能性もある。
それから復興財源でおかしいのは、国が裁判で負けて補償することになった医療費関連が、今回の復興財源に入っていることである。これは厚生労働省の予算削減で対応するべき事柄である。
※これまで、与党時代に自民党は黒塗りの東電報告書を一度も訂正してこなかった割に、野党になったら国会で吠えているのはどうしたわけか。こうした昔の政権当時、無作為の罪を重ねた国会議員の年金からも復興財源を捻出させて欲しいものである。現行のように、失策のつけをすべて国民に回せる制度にしておけば、政治家や公務員が真面目に働くことはないだろう。現在の自民党政治家の党利党略ぶりを見ると、与党時の責任をきちんと補償させる必要がある。
<2011.9.30>