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試論:株式市場を議決権の有無がある二段階にしよう

 経営学者の高橋伸夫の議論に触発されて考えた事柄である。高橋伸夫の著書によれば、フランスでは2年間株式保有者に対して、定款で定めれば、1株につき2票の議決権を有する2倍議決権制度があるそうだ(「ダメになる会社」39-40頁)。高橋伸夫は議決権行使した株式は2年間売却できないという規制もしくはオプション制度を設けるべきではないかと提案している。

 この提案が実現すれば投機も止まるだろうが、他の金融資産と比べて、元本保証もない割にやや厳しすぎる面もあるかもしれない。また、ゆとり資産でしか議決権行使する予定の株式は売買できなくなるし、仮に、議決権を行使した株主が、予定外の事象(大病を患うなど)が発生して、株式を含め一度、全財産換金する必要が迫られたときにまったく売却できないのではやや問題が多い気もする。そこで、高橋説を採るなら、議決権行使した株式は2年間、株式市場で売買できない。どうしても2年以内に換金したい場合は、会社に市価の50%(市場が安定している場合)とかで直接買い取ってもらうという制度くらいの方が穏当だと思う。

 私は議決権なしの株式があってもいいと思っている。この場合、元本保証なしの積立定期貯金の直接金融版のような感覚になるのだと思う。例えば、金利は、その会社に所属するアーティストのコンサートへの招待などにしてもいいだろう。お年玉貯金や信金などで物販付の預金と同じようなものでいいと思う。

 議決権なしの株を考える背景として、株式による直接金融にせよ、銀行による間接金融にせよ、貸主が経営者以上にきちんと経営状態を見ることは不可能だという判断がある。そうであるならば、株の投機性よりも、不正会計などの監査は本来、誰の責任として行えば、市場競争が公平に行われるのだろうかということを真面目に考えるべきなんだろう。現段階では妙案がない。しかし、これは経営者が真面目にまともな経営に専念するべき環境を整える法制に改めるということでもある。つまり、それは製品・サービスをよくすること、自企業の雇用をまともにすること、余力があれば株主を喜ばせることになるのだろう。この順番すら、現在では出鱈目になっている。それは下らない「株主による所有」という歪んだアングロ=サクソン型会社論から出ている。

 経営者がまともな経営を行う環境には、株価の上昇は必要ないはずだ。そこで、環境部門でエネルギー消費を抑えた商品を大量に他社に抜きんでて販売した事で、国内のエネルギー消費の数%を抑えたとかの実績に対して、優遇税制を取るとかの制度が、製品サービス部門のより良い経営の政策として考えられる。次に、今のような労働者の首を切った経営者の賃金が高いというのは、明らかに狂っているので、「従業員給与を引き下げた企業には、税優遇措置を認めない。従業員給与を引きあげた企業には、税優遇措置を認める」という制度を作るなどが考えられる。また、正常な経営のために、一般論として、企業内の最低賃金と、最高賃金の比には法的な上限を設けるべきだろう。

 これらの措置を取れば、必然的に経営の正常化はおきるのではないかと考える。現在の資本主義はアメリカを中心として、所得分配が極端に不公正になっている。特定の少数者に、資金や資産が溢れている以上、どこかしらに投機市場が生まれる背景を持っている。これをできる限り一般企業と関係ない所で行ってもらうより仕方がない。私は、金やダイヤンモンド市場は投機市場でいいと思っている。だが、他の生活者に関連する産業の実需に影響しそうな投機はできる限り減らした方がいい。仮に、株式市場に投機性が減っても、現在の資本主義社会では、為替レートや先物市場を通じて、穀物から石油まで投機にさらされている。だから、現状から株式市場の投機性を取り除けても、実需中心の世界になるとは思えない。その元凶はアメリカの金融規制の緩さにある。

<2012.3.21>

Kazari