試論:規制の在り方について
現実には市場原理と真逆の政策ばかり
エコポイント制度
家電品のエコポイントがあった期間の値動きと現在の値下げ幅を見れば一目瞭然である。ほぼエコポイント分だけの値上げが家電業界に可能になっていたというのが、エコポイント制度の帰結である。よくあるミクロ経済学のミクロ市場分析のグラフで言えば、エコポイント制度によって国内の家電企業間の競争は行われなくなり、ほぼカルテルを行った時と同様に価格が高値安定した。消費者余剰はまったくなく、すべて企業の利益になったことになる。典型的な寡占カルテル状態を隠ぺいする経済政策であることは疑いの余地がない。大企業を中心にこの間国内での競争をさぼることは、国際競争力につながるはずもない。このような経営者を甘やかす制度は今後も二度と行うべきではない。
仮に消費者余剰があったとしても、高額商品にエコポイントを高くすることは、高額所得者への税の還付を多くする行為で、これも一律バラマキより更に悪い政策といえる。マクロの消費乗数効果も低いことは確実である。高額所得者に多くの税の還付をして景気浮揚するなどということは行うべきではない。
地デジ規制
これも市場原理とは真逆の政策である。市場原理を重んじる立場なら、所有者の権利の方が、著作権より尊重すべきだからである。著作権を過度に保護することは産業保護政策と同じで、非効率な経済政策だ。資本主義の大原則である私的所有権の制限であることから、そもそも著作権自体、資本主義に反した制度でもある。それを取ってつけたような屁理屈「投資促進効果」で正当化しようとしているだけである。そもそも、著作権がない方が競争は激化して、価格低下に伴う消費者利益は大きい。だから、国単位で物事を眺めた時に、途上国に比して、日本の方がまだ著作権をたくさんもっているから、不公正にでも著作権を保護して、産業を守ろうという、非常に保守的な制度でもある。貿易に例えるなら、特定の国で著作権を強化することは典型的な非関税障壁である。自由貿易の立場からも肯定できない。
著作権で考慮するべきなのは、営業妨害に相当する不公正競争の部分だけで、私的利用のための複製やその他に関する事を法で定めるべきではない。そもそもこの地デジの暗号化は民間団体が決めている点でも不正でしかない。法で定めるのは一般に不公正競争によって営業損害が出る著作権侵害行為について、罰則を設けるものであれば必要十分だからでもある。
だからアメリカでも直接、自国にこのような法制度を作ることは今後もない。あるとしても警察力の強化が目的であって、規制そのものに意味はない。日本で作らせて、TPPを通じて自国に作るとか言ってたぶらかされているのか知らんが、決してアメリカでは採用しない制度である。
地デジテレビの無料放送にわざわざ暗号をかけ、私的に再生するのに、すべて機械を入れ替えないといけないなどの措置も愚の骨頂である。馬鹿官僚が、市場を作ったと勘違いしているのだろうが、国民から税金以外のぼったくり詐欺に官僚が加担したようなものだ。それに、消費者運動が強い国ならば、このような措置に対して、いろいろな運動がおこる。例えば、パソコンのユーザーからは、フリーの再生ソフトを規制機関が提供しない場合、訴訟が起こされ、規制側が所有者の私的利用権を著しく侵害しているとして、欧州・米国では規制側がほぼ確実に敗訴する。だからこのような乱暴な措置は取らない。
日本は法制度から、企業が訴訟されにくい制度が諸外国に比べ異常に多く、その事が国内および国際競争力を低める要因ともなっている。それから、著作料金を上乗せしたJASRACの消費者への課金を、メーカーが一方的にJASRACへの支払いを拒んでメーカーの利益とした裁判では、メーカー側が勝利した。しかし、この課金は本来、消費者にすべて返還するべき性質のものだ。マスコミで、裁判については報じられたが、メーカーを非難する記事には遭遇しないのは非常におかしなことである。これも価格を歪める行為だから、JASRACの取った行為も、メーカの取った行動も、市場原理主義とは真逆の行為に相当する。
ネット規制に関しては、2012.10.1東京新聞によれば、「非親告罪化」が議論されているという、これは検閲などというレベルの甘い法ではない。警察によって、冤罪創出システムに悪用される。適当に犯人にしたてあげたい人物の友人になりすまして、著作権違反物を送信すれば、友人もろとも二人に冤罪をかけることができる。警察で証拠品を押収の上、なりすましの証拠を隠ぺいされれば、冤罪をかけられた人は手も足も出ない。現状では、取調室で証拠をねつ造するような警察がいる日本で、あってはならない法律である。別件逮捕で、何もない押収物のパソコンに無理やり違法著作物を日付などを改ざんの上保存することも可能だから、本当に冤罪国家による恐怖政治が行われることになりかねない。
経団連や米国に阿る輩が、政治家、官僚にいると碌な事にならない。本当に落選運動が必要な時期にきている。誰が政治家でも同じではない。落選すべき議員については、書き散らしているが、いずれ、政策立案の頁に健全な市民の取るべき方針を書く予定にしている。
本来あるべき規制のかけ方
日本の現在の規制のかけ方は、経済原則をかけ離れて、国民の大多数を不幸にして、0.5%程度の人のために行う政策が多い。
地デジ規制にともない、パソコン業界では不公正な競争によって、アメリカ資本のCorelのWinDVD、台湾資本のCyberLinkのPowerDVDが、利益を手にしている。
普通この再生ソフトの参入にも、大手企業に不利な条件を課して、次世代を担う技術をもつ中小企業の参入をうながすべく、仕様を中小企業だけに公開するなどの措置を取れば、当初のアメリカが実施した規制緩和と同じような効果をもたらしたかもしれない。アメリカで規制緩和が行われはじめた当初は、衛星通信を大手AT&Tには開放しない一方で、中小企業への参入を促したことで、大幅な通信費の価格引き下げ競争が行われ、消費者利益が大きく産業が躍進し経済成長につながっていった。日本では、消費者の利益を損なって、企業が儲かる仕組みを規制として入れるから、国民の大半が窮乏化するようなおかしなことになっている。
<2012.10.1>