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久々に見ごたえのある相撲が続く9月場所

 9.6記の引退会見の9.21追記に書いた続きである。

 14日目が終わって、白鵬12勝2敗、その白鵬に土をつけた琴奨菊が12勝2敗、稀勢の里が11勝3敗となった。千秋楽まで優勝争いがもつれたのもすばらしい事であるし、大関昇進のかかった日本人力士が優勝争いしていることもすばらしい。大関昇進基準は3場所33勝(うち1場所は13勝以上)なので、14日の時点で琴奨菊の大関は確定している。稀勢の里は前々場所8勝7敗、前場所10勝5敗なので、来場所に稀勢の里の大関昇進も見られるかもしれない。特に稀勢の里の対白鵬戦は圧巻で、どっちが横綱か分からないほどだった。すでに白鵬に苦手意識があるように見える。琴奨菊の対横綱戦もよかったのだが、前日に土が付いていなかったら、すんなりいったかどうか、・・・。

 私の好きな力士である前頭筆頭の豊真将が9勝5敗となり、来場所の新三役昇進を確実になったことも嬉しい。この勢いを続けて、3場所連続日本人力士の大関昇進を見てみたいものである。

 一方、現大関陣は元気がなく、把瑠都の9勝5敗が最高で、琴欧洲は休場してしまった。把瑠都は横綱になれる実力をすでに持っている力士なだけに、少しもったいない気がする。例えば14日の横綱戦、最初は白鵬が頭をつけ、把瑠都には苦しい展開、一時はもろ差しにもなり、ここまでは白鵬の相撲だった。しかし、うまく把瑠都が左を巻き返し、四つになり、吊りを試みて下手を深く刺したところまでは把瑠都の相撲だった。ここで、把瑠都には勝つための選択が2つあったと思う。第一に腰を振って相手の回しを切るそぶりをしながら(実際に切れる必要はない、相手があせればよし)、白鵬の頭をあげるため、少し腰を落としてがぶりよる。たぶん、土俵際で白鵬が耐えることはできなかったと思う。第二は、釣った直後、白鵬が片足付いたくらいの瞬間に、上手だし投げを打つことでも勝てたと思う。

 把瑠都は張ってよし、組んでよしの力士になれる。しかし、最近の取り組みを見ていると、最初に張り、組みを力士によって決めてそれがはずれると、ドタバタになりすぎる気がする。間違ってたらごめんなさい。もう少し勝ちパターンを決めた方がいい。例えば、鶴竜や日馬富士などの軽量力士なら、相手が下手1枚なら、把瑠都なら上手だけでぶん回しても場外にだせる。だから、突き押しが成功しない場合、得意の方の上手を伸ばし、もう一方はのどわを決めるようにして、上手で投げる練習でもしたらよかろうと思う。体を開いての上手出し投げさえ、実戦で打つタイミングをちゃんと覚えれば、常時12勝できる力士のはずだ。頑張れ、把瑠都。

<2011.9.25記>

 千秋楽、把瑠都が琴奨菊に勝って、成績を10勝5敗とし、白鵬は日馬富士に勝って優勝を決めた。稀勢の里は豪栄道に勝って12勝3敗とし、来場所に大関取りがかかる。前頭筆頭の豊真将も栃乃若を寄り切って星を二桁(10勝5敗)にして終えた。立派な成績だ。

 把瑠都にとって今場所前までの対白鵬戦は、ドタバタな展開で何とか勝ちましたという勝ちはあったけれども、今回ほど手ごたえのある敗戦は初めてだと思う。重大な転機になるはずだ。大関昇進を決めた場所から白鵬に五分の成績を残せるだけの実力があるはずだが、相手にけがをさせない相撲を取ろうとする優しい一面を持つ把瑠都には、考え過ぎの部分(何か分からないけれど時々取り組み中ですら相撲に迷いがある)と考えが足りない部分(必ず勝てる形に持ち込むための努力)があるように見える。直してほしい技術はひとつだけ、ときどき、立会直後のもろ手突きやその他の寄りでも足が揃うことが多く、この点だけは他の上位力士に比べると見劣りがする。これが直れば常時14勝クラスだろう。はやく横綱になってくれ。

<2011.9.26追記>

Kazari