NHKの朝ドラ(てっぱんvsおひさま)
これほど出来栄えが段違いになるとは驚きである。もちろん、「てっぱん」の方がすべてにおいて勝っている。予算を「てっぱん」で使い切りましたという位、「おひさま」には値打ちがない。「ゲゲゲの女房」が普通の出来栄えだっただけに、「おひさま」のひどさは殊更に際立っている。
一番大きな差は脚本である。「てっぱん」はドラマとしての現実味がうまく設定されていた。登場人物の性格も大方うまく描き分けできているし、安ぽっさもまるでなかった。俳優陣もうまく演じていたと思う。ここ数年の朝ドラでは断突によかったドラマであるが、あえて難点をあげるとすれば、主人公の恋人役の陸上選手の寡黙な感じや不器用さの演じ方はいまいちだったこと、源さんの性格設定がうまく伝わらなかったことくらいであろう。主人公のおばあさん役に恋する源さんが、その女性に語るセリフには意味が伝わらないものが数回あったと思う。たいてい土曜に録画したのを見ていたと思うのでその程度くらいしか欠点は見当たらない。
一方、「おひさま」は本当にひどい。まず、回想という手段が陳腐である。回想だから記憶違いでも出鱈目でもご批判お断りということなんだろう。「妹尾河童が書いた「少年H」が間違いだらけである」といった批判の類を封殺したいのだろうと思う。団塊世代に向けに作られた安っぽい美談と伝える意義のない醜聞を織り交ぜた三文小説なのだが、三文の価値もない。それとこの描き方は、安っぽい昼メロの更なる低価格リメイクにしか見えない。まともなセットを使うだけ予算の無駄である。数回見て吐き気がしてそれ以降見ていない。見ている人に聞くと「最初の頃から、変化はない」とのことである。
斉藤由貴は嫌いな女優ではないが、今回のドラマを見ると嫌いになるから見ていない。昔、民放の昼メロで、及川光博とドタバタコメディーを演じていたことがあったが、その再来という感じだ。あのドラマは及川という俳優の強烈な個性でかろうじてもっていたような感じだが、今回はそれもなし。ナレーションも下手糞だし、脚本が悪すぎるため、俳優陣全員が無様な大根役者にしか見えない。主役の井上真央をはじめ可哀そうすぎる。このNHKドラマを機に、俳優さんたちの仕事が減らないか心配だ。俳優という稼業は脚本に恵まれないと、どんなに技量があっても何にもならないのだという事を改めて知ることになった。
<2011.9.26記>