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パルセータ交換の経済学

耐久消費財への積立貯蓄

 交換の方法については、2013年4月18日の「一層式洗濯機NA-F70RP1のパルセータの交換」に書いたので、そちらを参照してください。パルセータという言葉さえ知っていれば、私よりきれいな写真で修理過程を公開しているサイトもあります。ここでは、「第3章.経済学で学ぶこと」2012年12月3日の「耐久消費財の購入について」で言及した、生活水準を落とさないために、耐久消費財に積立貯蓄する必要性があるということの実例を今回の事例をもとに、具体的な数値を用いて説明したいと思います。

 故障した一層式洗濯機は、2002年夏に購入したものです。当時、端数を無視すれば、約5万円で購入しました。2013年春に壊れたので、10年問題なく稼働しました。その点は立派で、パルセータという部品が完成品間の部品の共有化によって、11年後の今日でもこの部品が提供されている点もメーカーの対応は素晴らしいと言えます。

 メーカー側からすれば、部品を確保しなければならないと法律で定めのある期間を過ぎて、故障をすれば、耐用年数を過ぎているので、新品を買ってほしいとの立場です。ですから、製品の解説書には、パルセータの文字すらありません。消費者からすれば、特に、消費電力などに差がなく、新製品購入がランニングコストの軽減で元が取れないなら、限界まで使用するのが得になるのは自明です。

具体的計算例

 現在、7kgを扱える一層式洗濯機を5万円で買うのは難しいかもしれないので、6万円としておきます。2002年当時にこの値段を想定するのは簡単ではありませんが、事後的に計算することで、今後の対策にはなります。単純化して、積立預金などによる金利は無視して考えます。まぁ今の金利じゃ考慮する意味ない水準の低金利だし。

 この状況下で、2002年当時、耐用年数10年で、一層式洗濯機の購入直後に、故障時のための積立を開始すると、毎年6千円(次回購入資金6万円÷10年)の積立が必要という計算になります。

交換した場合の必要な積立の計算例

 さて今回、パルセータという部品を購入して、耐用年数が5年伸びたと仮定します。現実にはモーターの一般的耐用年数は20年程度はあるはずなので、この程度の伸びは期待しても問題ないと思います。

 現実にかかった費用は、自分で直す場合は、部品代3千円のみです。修理を依頼しても総額1万円程度です。どの道、次回の新製品に必要な積立資金は、毎年4千円(次回購入資金6万円÷15年)の積立で足りる計算に変わります。15年平均でならしてしまうと、修理の効果が数値として分かりにくいですので、その部分を計算してみましょう。

 まず、より費用のかかる修理依頼の場合について考えます。新製品を購入すれば、積立を全部使って、新たに積み立てをしなければなりません。しかし、ここで、10年で積み立てた資金6万のうち、1万円を使って修理して5年使用期間が延長できれば、得するはずです。

 5年後も新製品を6万円で購入できると考えれば、5万円積み立てが残っているので、残りの5年で、1万円積み立てれば、良い計算になります。残り5年は、毎年2千円(=追加積み立ての1万円/5年)の積立で良いことになります。5年間、4千円積み立てを節約する効果というわけです。

 自力修理の場合は、残り5年の積立は、毎年600円(=追加積み立ての3千円/5年)で良いことになります。5年間、5,400円積み立てを節約する効果というわけです。

購入した耐久消費財の価値の計算例

 購入当初5万円であっても、10年で廃棄した場合と、修理して使用した場合の価値は異なります。これを計算で確認して見ましょう。経済学では満足度を考えますが、10年間の洗濯機の使用した結果の満足度は、修理しようが廃棄しようが変わりません。その同じ満足度を得るのに、一年間換算で購入費用がいくらかかったのかを計算することで、どの程度お得なのか分かりやすくなるはずです。

 10年目の故障で廃棄した場合、その製品の一年間の購入費用は5千円(=購入費用5万円÷10年)です。これが、15年の使用を目指して故障修理した場合はどうなるでしょうか。

 修理依頼した場合、その製品の一年間の購入費用は4千円(=(購入費用5万円+修理代金1万円)÷15年)です。自力修理した場合は、その製品の一年間の購入費用は3,533.33円(=(購入費用5万円+修理代金3千円)÷15年)です。

 貯蓄しなければならないという意味では、耐久消費財は重要な製品ですが、購入代金が5〜10万円程度で、耐用年数が10年程度の場合、計算例からも分かる通り、その年間の費用はたかが知れています。日々のお買いもので節約するのが可能な金額と比較して、耐久消費財の積立額がたいしたものでないならば、ここに注力するよりも別の無駄を見つける方がいいという事になるかもしれません。

<2013.5.1>

Kazari